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運動音痴な息子が黒帯になった話(完結編) #12「セカンドバックを持つ中学生」

子どもの頃ランドセルを置いては外を走り回っていた私とは正反対に、運動嫌いインドアな息子は保育園の時に私の意向でちょっと強引に極真空手を始めました。

前回は、お世話になった大好きな先生が旅行中に突然亡くなり、私達親子は悲しみの中から抜け出せなくなってしまったというところまで話しました。

空手が無くなったんだから部活に入ったら?という話になったのですが、、、 
息子が入ろうとした部活は
熱心にやりたくないけど帰宅部はちょっと、、という子に人気で今年は空きがないとのこと。

担任の先生がバレー部顧問だったので、熱心に息子を誘ってくださいましたが、全くなびかず、、


「せっかく先生が教えてくれた空手は続けよう。その方が先生も喜んでくれる」と少し遠くの別の道場へ通うことにしました。
別の道場の先生方も今回の事情を知っているので、温かく迎えて下さいました。

でも続きませんでした。

息子は極真空手が好きな訳でも、鍛えたい訳でも無く、先生が好きで道場に通い続けていただけだったので仕方ないと思いました。

「先生が亡くなった後も空手は続けています」だったら綺麗な話になったと思いますが、私が息子なら同じように続けられなかっただろうなと思いました。
結局息子は空手をやめました。

唯一先生の誘いにだけ応じていたので、先生が亡くなってから外にでる事も減ってしまいました。私は、先生の代わりにはなれないけど近づきたくてもがいていました。
でも当然ですが、やっぱり私は先生の代わりにはなれませんでした。そう痛感する度に先生を思い出してまた涙。


ある日先生の奥様から連絡が来ました。道場を空け渡すので、その前に渡したい物があるから一度来てほしいという事でした。
私と息子は約束の日に道場に行きました。
記念品としてマグカップをいただきました。それは、生前先生が
「道場を閉じる時は道場生に記念品を送りたい」と話していたのを奥様が実現して下さったものでした。
先生の気持ちが込められた水色のマグカップは息子の宝物になり、今毎朝使っています。

その他にも、処分されるという若かりし頃の先生の写真も息子が欲しがり家に持ち帰りました。
額縁に入れて息子の部屋に飾られています。

また別の日に奥様から息子に連絡があり、家にある先生の衣類等遺品を処分するので、欲しい物があれば持って行ってほしいとのことでした。息子はサンタクロースのように大きな袋を担いで一つ残らず持って帰ってきました。今うちのクローゼットにパンパンに入っています。
息子は先生が使っていた革製のお財布やセカンドバックを使いだしました。

中学生がそんな物持っていたら事情を知らない人が見たら正直言って変ですよね。でも、息子の気持ちがわかるので、私は何も言わずに見守っています。

結局次に打ち込むものが見つからなかったのですが、勉強が悲惨な事になっていたので塾に通い勉強を頑張る事にしました。
あまりにできなすぎて
近所の塾では相手にされず、、、
結局私が昔通っていた3駅離れたスパルタの塾に通い始めました。
今年は下の学年のクラスにも混ざりつつ、周りに追いつくように頑張っています!



今年の夏休みの始め
先生の一回忌でした。奥様にお墓の場所を聞いて、息子とお墓参りに行ってきました。
昼頃着くと既にお墓にはたくさんのお花が生けてありました。ちょうどお墓参りに来ていたお弟子さんに会い、挨拶をしました。
一年経ってもやっぱり涙は出てきます。それでも、やっと受け止められてきたような気がします。
息子は無表情で無言でしたが、色々な思いがあったと思います。

先生との出会いで続けられた極真空手を通して、私達親子はたくさんのことを経験し、学びました。
息子が多感な時期に私一人ではどうにもできなかった息子をまるごと受け止めて、とにかく褒め続けてくださった先生がいてくれてどんなに救われたことか。

先生と息子を見ていて、人を良い方向に変えられるのはプラスの感情なんだと教えられました。何もやる気の無い息子を黒帯にしたのは間違いなく先生の息子に対する愛情でした。
私は未熟なので、わかっていても完全に実行できていませんが先生を見習って心がけていきます。


今となると先生との時間は夢の中の出来事だったように感じてしまいます。息子の部屋に飾ってある黒帯の賞状と若かりし頃の先生の写真を見ると、「現実だったんだ」と思いつつ、、
人生は出会いと別れの繰り返しですが、一生会わない人の方が圧倒的に多いと考えると出会えた事は奇跡です。

先生と過ごせた時間は私と息子の一生の宝物です。

先生の人生の最後の10年と息子の人生の中の10年が交わった奇跡に感謝して


最後まで長文を読んでいただきありがとうございます。


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