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学びの記録_タイポグラフィ01

今回、タイポグラフィの授業を通して学んだことや気付いたことを記録としてまとめていきます。自分用でもありつつ、私と同じように、デザインを学んでいる誰かのお役に立てれば幸いです。

授業の流れはタイポグラフィの歴史(座学)→指定書体の中から1つ好きな書体を選び、活字書体見本帳の表紙をデザインする(制作)といった感じでした。タイポグラフィの歴史に関しては事前に自分で調べ、流れをまとめていたこともあって、授業内での内容はよい復習になりました。

そして、今回のnoteでは、主に表紙デザインの制作を進める中で学んだこと・気付いた点を記録しておきます。


1, 書体選び

私は「Centaur」という書体を選びました。

みなさん、ニコラ・ジェンソンはご存知でしょうか?
ニコラ・ジェンソンはローマン体の元祖となる活字書体をつくった人物です。ジェンソンが生み出した書体はローマン体の中でも最高傑作の1つと言われており、洗練されて読みやすく、明るい印象の活字書体です。そして、ジェンソンのローマン体を元に、アメリカの有名なブックデザイナーであるブルース・ロジャーズによって1929年に制作された書体が「Centaur」です。ジェンソンの書体に一番近いのではないかと言われているとかなんとか……。

「もし、14世紀にジェンソンがローマン体の祖となる書体を作らなければ、現在の欧文書体の形やデザイン、辿る歴史などは今とは全然違ったものになっていたのかもしれない」と思うと、ヴェネチアン・ローマン体やジェンソンのつくった書体は“始まりの書体”と言えるのではないかと考えたことが、この書体を選んだきっかけです。

2, スペーシング・トレーニング

まず、印刷した書体を切って、A4の原寸大でスペーシングのトレーニングを行いました。一文字ずつ切り離し、文字間を調整する作業は普段PCを使って行っているものとは全く異なり、本当に難しかったです。文字間を少しずつ右にずらしたり左にずらしたりと、細かく調整しては、印刷してもう一度確認する。そんな作業を永遠に繰り返していました。

正直、この作業を経験することで何かが劇的に変わるのか?と最初は半信半疑でした。しかし、2日間の授業が終わって帰りの電車で周りにある広告や駅名標などを見て、びっくりしました。丁寧にスペーシングされているものと、きちんと調整されていなくて不自然なものが今まで以上にはっきりと区別できるではありませんか…!
ここまでトレーニングの効果があるとは思っていなかったので、本当に感動して、危うく電車を乗り過ごすところでした。

3, デザイン作業

次に、デザインの作業です。スペーシングを施した素材となる文字列たちを使って、レイアウトやどんな風に表紙としてデザインしていくか考えていきます。これがまた難しい…。

今振り返れば、デザイン作業の前に考えるべきことをしっかりと整理しておけばよかったなと後悔しています。

【 例えば 】
誰に手にとってもらいたい/購入してもらいたいか?
価格帯はどのくらいか?
どこで売っているのか
どうすれば書体を買いたいと思ってもらえるか
本を買ってもらうことがゴールなのか/書体を買ってもらいたいのか
見本帳の中身はどんな内容なのか
現在どんな風に使用されていることが多いのか(タイトル、ロゴ…)
ヴェネチアン・ローマン体の良さは?
Centaurの特徴は?
現代に合ったデザインにするか/書体の制作された年代に合わせるか
電子書籍にはなるのか?
書体をつくった人物の性格・好きそうなこと/嫌がりそうなこと
どんなデザインなら書体の良さを最大限に表現できるのか
書体の新たな価値を見出し、提供することは可能か
etc…

ラフは、スペーシングのトレーニングを行う前に手書きでいくつか案を出さなければいけなかったのですが、私は手書きでラフを書くと、もう…ぐっちゃぐちゃで… それでも8つほど書いたラフをなんとかIllustratorで授業後に作り直して、確認しました。(ここでデッサン・クロッキーなどの“絵を書く技術“の必要性を嫌というほど感じた。勉強します;;)

ラフ_8案


そして、この中から3案に絞りました。

最終選考_3案

1は「Roman」のR、「Rogers」のRと、Rの書体は手書きペンの風合いを感じれるという3つの理由からRの文字を大きく配置することで、伝統的・古典的なイメージをさせるようにデザインしてみました。

2はCentaurの中でも特徴的なeとo、そして、アルファベットの最初の文字であるAを組み合わせることで、ロゴっぽい形を作り、それを大きく配置しました。古典的な印象の強いヴェネチアン・ローマン体でもロゴを作ったり、今の時代に合わせた使い方もできるといった新たな価値の提供みたいなものを表現しました。

3は”Centaurらしさ“を考え、制作しました。Centaurの中でも一番特徴的な文字と言っても過言ではないeを大きく配置、他の情報は極力小さくすることで、Centaurという書体の特徴を前面に表現しました。また、囲みラインを装飾として入れることで表紙らしさを出し、さらにeのバーの傾きを強調するためのラインも装飾として入れています。



最初、1と3の案を制作して、先生に見てもらったら、思った以上に厳しいお言葉が…。

まず1のほうを見て、「CentaurでRって特徴的な文字じゃなくないか?」といった内容のことをガツン。確かにRよりも特徴のある文字は色々あるけど…と思いながらも、沈黙。ここで自分なりの理由をズバーンと説明できればよかったんですが、思った以上にダメージを喰らって、凹んでしまいました。相手の意見によっては思考が止まり、言い返したり、自分の主張を大胆にアピールできないわたしなんですが、今回、自分のある種の弱さみたいなものを改めて痛感しました。

そして3のほうを見て、「Centaurで囲みラインはおかしい。Centaurという書体の時代背景と合っていない。囲みラインはいらない。」といった内容の指摘をもらいました。確かに直線の囲みラインはニコラ・ジェンソンが書体を制作してた時代と合わないし、いらないかもしれない…と思ったものの、自分的には表紙らしさというものを表現したかったし、ぱっと見た一瞬で”表紙“と認識してもらうようにデザインしたかったため、囲みラインは残そうとそっと心のなかで思っていました。
すると、他の先生から、「人物名 と 会社名 は一列に配置しないほうがいいんじゃない?」と言われ、ハッとしました。確かに「人物名」+「年代」ならまだしも、「人物名」+「会社名」は視認性も悪く、情報設計的にNGだなと気づき、分けることにしました。
そうなってくると囲みラインは使えなくなるので、結局無くすことに…。

アドバイスを貰いながら、どれにするのかさんざん迷いましたが、今回は時間的な問題とCentaurという書体の特徴を一番表現できていると感じた3を選び、制作に入りました。

制作に入った時点でもうほとんど制作時間が残っておらず、駆け足で作業を進めたものの、心のなかではずっと引っかかっている部分があって、夢中で楽しんで作業はできなかったです。

\ そして、完成形がこちら /

Centaur_書体見本帳の表紙


はい。個人的には…心残りしかないです。笑
何度見返しても、正直いい出来とは言えないですし、もっと試行錯誤して、納得のいく“良いデザイン”に仕上げたかったと思うばかりです。
このデザインだと、誰にも見向きもされないし、手にとってもらえない。
本当に本当に悔しさしか残っていません。

4, 学び

今回タイポグラフィと表紙デザインの制作の授業を通して、悔しい思いで胸がいっぱいですが、学びや気付きは本当に多かったです。

まず、自分の考えた制作意図やデザインの理由、こだわりのあるポイントはちゃんと大事にしようと思いました。「今回の授業の先生はすごい人らしい」という情報が脳にインプットされすぎて、アドバイスをもらったときに、先生がそう指摘するなら、これは良くないんだなぁと悪い意味で素直に受け入れすぎてしまったと思いました。
今振り返れば、私なりにしっかり意図や理由は考えれていたし、デザインに上手く反映できていたかは分からないけど、「先生がなしと言ったらなし」というような姿勢はやめなければと気付きました。
自分のアイデアやデザインに固執しすぎないように気をつけるべきではありますが、今後は「良いデザインに昇華させるためには、どうすればいいのか?」といった視点を意識して、自分の意見や他者の意見をデザインに反映されていければと思います。

次に、今まで受けた授業の中でも毎回感じていることですが、時間配分に気をつけること。そもそも仕事でも制作時間は限られていて、納期に必ず間に合わせる必要があります。時間配分を上手くコントロールできるようにならなければ、良いデザイナー/プロのデザイナーにはなれません。ここは本当に意識していかなければいけない点……。
そして、上手く時間配分を行うためには、思考力を鍛えなければいけない。そもそも私は思考のスピードが遅すぎて、最適解にたどり着くまでにすごく時間がかかるアホなのです。小さいときから、ゆっくりじっくり物事を考えることが好きで、人と話していても、自分の意見や考えをまとめ終わる前にはすでに別の話題に進んでいることがしばしばあります。(発言が遅くて変な空気になったりとか、ね…)
だけど、デザインを行っていく上では、いつまでもマイペースな思考スピードではいけません。ただ、結局、思考スピードを上げるためには、たくさん思考や考察を繰り返して、慣れていくしかありません。思考や考察を通して、自分のことやデザインのことを少しずつ理解していき、様々な知識を脳に蓄えていって、語彙力も増やして、そうやって時間をかけて鍛えていくしかないんですよね…。
「急がば回れ」でたくさん脳を動かしていこうと思います。

最後に、自分の意見や考えを上手に発表できるようになること。
このスキルは本当に必須だなと至るところで感じます。プレゼンテーションスキル、アピールを上手に行うスキルがあるかないかでは、結果が大きく変わってくると今回の授業を通して、痛感しました。自分の意見や考えを発表するトレーニングを今までの人生でやったことがない&シャイで人前に立つのが苦手な私は、本当にプレゼンテーションが下手で、今回の表紙デザインの発表も20人弱の前で行う必要がありましたが、ボロッボロでした。ほんと自分が嫌になります。
「良いものをつくっても、伝わらなければ意味がない」
相手に魅力が伝わらなければ意味も価値も無いに等しいと思いました。相手に誤解なく、最大限の魅力を伝えられる能力は今後デザイナーとして生きていきたい私にとって必須スキルです。
これも訓練するしかないと思いますが、逆に言えば、訓練さえすれば絶対にできるようになります。きっと…。アメリカ人になりきって、自信たっぷりのプレゼンテーションを行えるように精進して参ります…!

5, 最後に

今回の授業ではプチ挫折といえるくらい、自分自身に嫌気が差したし、勉強不足を痛感したし、私はアホだからもうデザイナーになれないんじゃないかとも思いました。だけど、多くのことを学び、気付き、デザインという分野の奥深さや可能性を改めて感じたのも事実です。デザインって本当に難しくて、面白い。

まだまだ学び始めたばかりだし、のびしろだらけな自分だ!と言い聞かせて、これからも頑張っていきたいと思います。


長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。




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