「理由はダンスがしたいだけ」ダンサー、Emikoさんへインタビュー。
「1年で帰ってくるって言って、そのままニューヨークに10年くらい住んでいる友人がいるんだよね。」と友人から紹介されたのがEmikoさん。
今回、インタビューをさせてほしいという依頼を快く引き受けてくださいました。
ニューヨーク(以下、NY)から帰ってこなかった友人という紹介を受けていたので、お会いする前からインパクトが大きかったです。
行ったまま帰ってこないとは時々聞く話ではありますが、実際に経験者から話を聴くのは初めてでした。
会った瞬間から気さくで、初対面とは思えないほど親近感が湧いてしまうような方。
ダンスと共に歩んできたNYでの出来事を聴かせていただきました。
▼Emikoさんプロフィール
ーNYに残ろうと思ったきっかけ。
日本を出たのが25歳だったんだけど、ダンスや英語学習も自分の中で納得したら日本へ帰るつもりだった。
ところが、全然足りなくて。
あっという間に1年経とうとしていて、納得できるほど習得できていないって気付いてしまった。
ー滞在延長のプランニングは?
もともと日本では銀行員とダンスを両立していたから、NYで働きながらダンスを続けたいと思った。NYで働くために英語でビジネスを学べるスクールに通ったんだよね。
2年間の短大を卒業すれば1年間のOPTカード(就労許可証)を取得できるし、トータルで3年間は居られるイメージができたからNYで頑張ってみようと思った。
仕事が見つかれば住む拠点が東京でもNYでも変わらないじゃんって。(笑)
ーずばり、渡米前の不安は。
19歳の頃に一度来ていたので不安はなかった。
通う学校も家も決まっているし、電車も土地勘もある街なら大丈夫かなって。
英語は話せなかったけれど、渡米前はお金に余裕がなくて英会話教室にも行けなかった。
だからNYに来てから語学学校に通った。
これは個人的な意見だけど、現地の学校に通った方が英会話の練習が多国籍の人とできるし友達も作れる。
日本で英会話教室に行かずに直接NYの語学学校に通い始めてよかったと思う。
英語が完璧に話せなくてもNYは生きていけるから、現地へ来るほうが習得は早いのかも。
あんまり不安がなかっただけで、どちらかといえば用意周到な方だと思う。
私より楽観的な人は沢山いるよ。
ー就職するまでは大変でしたか?
日本で実務経験がある仕事に就いたら激務で。
ビザのこともあって働き続けたけど、結局は会社と折り合いがつかず、辞めることになってしまった。
このまま日本へ帰ってしまうと何も成し遂げずにに帰ることになるから、何でもいいからビジネススクールで学んだ会計の仕事をしようとすぐに探し始めた。
そこで拾ってもらえた会社が、今も働いている会社。
タイミングよく経理の仕事が空いていたから、そのまま採用されて8年経つのかな。
ーNYが自分に合うと思う理由。
現在の会社へ入社して、グリーンカードの相談をすると社長から「性格的に日本へ帰った方がいいんじゃないか」と言われたほど、実は悩んでいて。
実力を日本に持ち帰っても働けるんじゃないかと。
だから何が合っていてNYにいるのか、今でも分かっていないのが本音。
ただ、会社の社長やダンスのコミュニティだったり・・・そういう人達がいてこそ、NYにいられるんじゃないかな。
ーダンスの仕事はどのように広がりましたか?
もともと本業として考えていなかったけれど、クラスを教える仕事も経験して、仕事を重ねるごとにパフォーマーにシフトしていった感じです。
ダンサーの友達に「シンガーのバッグダンサーを探しているから来てみない?」と誘われたのがきっかけかな。
コミュニティがすごく狭いから、そのような仕事が広がっていきやすい街なんだと思う。
私がダンスと両立できているのも、社長の理解があるからこそ。
NYは会社に所属しながら副業は当たり前だから、個々が成長していける環境だよ。
ーパフォーマーへシフトして思うことは?
教える仕事ってすごく責任重大で、自分から創り出して教えられないといけない。
パフォーマーとして、与えられたものを出していくという感覚が自分には合っているかな。
どちらかというと先頭に立つよりは人に付いて行く方が性格に合っている。
これまでもずっとそう生きてきて、引っ張ってくれることが本当にありがたいし、努力しようと思えます。
ーダンスの観点で、日本とアメリカの違い。
一番大きく感じるのは日本は統合性・統一性を大事にしていること。
お互いを尊重しつつ、チームプレイでもあるから全員がはみ出さないようにしている。
アメリカは基本はソロなんですよ。
ディテールも拘らなくて、個人が上手ければ全体も上手く見えるじゃんって考え方。
個性が尊重されるので例えば先生と踊り方のニュアンスが違っても、その踊り方が人を魅了するものであれば、全然いいんです。
日本で活動している頃は“先生=答え”だと思っていたけれど、先生が持っているものをどれだけ自分の持ち味にできるかが大切なんだって。
ーアメリカで活動していて感じること。
自分なりの正解を追っている過程で認めてくれる人たちが必ずいる。
見てくれているんだ、これでいいんだって思える。
紹介されたり、「一緒にやろう」と言ってもらえること自体が成長になるし、実力につながる。
ー日本に帰国したときに感じること。
沢山あります!
どちらが正とかではないけど、日本での当たり前が当たり前じゃないってNYでの暮らしが長くなるほど感じますね。
日本ではレーンを外れる人がすごく少数派で、個性は出しづらいのかなって思う瞬間がある。
帰国していたときに、電車で話しかけてくれたおばあさんと世間話をしていたことを友人に話したんですよ。
すると「電車で他人と会話するのって恥ずかしいね」とリアクションをされたときに、その感覚はなかったなと。
日本の文化を大切にしているからこそ、変化していけるんじゃないかと思います。
ー日本人として、NYの印象を伝えるとしたら。
NYはおしゃべり好きで陽気な人が多いかな。
なんとなく怖くてハードルが高いって印象の人も多いと感じるんだけど、にぎやかで優しくて社交性がある街だよ。
それにNYには本当に多くの国籍の人々がいる。
英語が話せない人なんて沢山いる。
それでも生命力がすごくて、私なんてまだまだだなって思う。
言葉も仕事もハードルが高く感じているかもしれないけれど、そこまで心配することないよって言ってあげたいかな。
ーNYの好きなところは?
当然全員ではないけれど、楽観的なところ、気にしないところ。
日本で常識だと思っていたことも、世界でみれば常識だと言えない。
そういう目線で見られるようにしてくれた街。
それこそ、外国に慣れてしまって日本でだらしないと思われるような行動をしてしまわないように気をつけているかな。
ー日本人でよかったと思うこと。
いろいろな場面で感じるよ。
チームワークや行動力があるように育ててくれた親にも、規律を守る文化にも。
NYの友人に日本人の印象を聞いてきたけれど、ほとんどプラスの意見しか聞かない。
時代にも恵まれたし、培ってきた日本人のイメージや活躍に日々感謝しています。
ーEmikoさん、ありがとうございました!
ちょうど私がNYへ訪れた期間に新しいお家へ引っ越されたとのことで、多忙な時期にインタビューを引き受けてくださいました。
残る選択をしたからには多くの難を乗り越えてきたEmikoさんですが、それらもまるっといい経験として話されている姿がとても素敵でした。
淡々と話しながらも「私なんて普通だよ!」と何人もの登場人物をリスペクトされているところも、彼女の魅力なのだと感じました。
またNYでお会いできることを楽しみにしています!
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