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伯剌西爾から海を渡る。
鋭利な言葉はネットの海を漂うだけで人を傷つけることがある。「陰キャは10年遅れで陽キャの真似を始める」などという耳障りの悪い地獄みたいなワードが頭によぎった。30代のど真ん中を目前にし、未だ実体のない何かを取り戻すかのように遊んでいるのだから無理もない。
その日は朝8時に私を含む6人が集合した。日帰りの旅行を予定していたのだ。
しかし、集合時点でまだ行き先を決めていない。
そう表現するといかにも旅人らしい雰囲気が出るものだが、実際のところは集合してから行き先を決めるという単純明快なルールに基づくものである。以下ルール詳細。
1.出発の朝、旅行先を一人一案以上持ち寄る
2.約半日で行って帰って来るのに無理のない場所を選ぶ
3.じゃんけんで行き先を決める(※二段階決定ルールを採用)
4.じゃんけんで勝った者が決定権を独占する
5.決まった案に不平不満を言わず、全力で乗っかり楽しむ
※じゃんけん二段階決定ルール
まずじゃんけんを行い、単純に一番の勝者を決める。次に勝者は人数に合わせた数字から一つ選ぶ。(今回は6人なので1~6のどれか)そしてじゃんけん本戦を行う。選ばれた番号の勝ち順に該当する者の案が正式に選ばれる。
ここでのポイントは一番勝ちor負けの番号以外(今回は2~5)を選んだ場合は必ず2回以上じゃんけんすることが必要になり、心理的駆け引きだったり予想や思考の隙間が生まれること。一撃で試合が決まるパターン以外のバリエーションでもエンタメ性が強く、最後まで盛り上がることができる。ような気がする。
じゃんけんで行き先を決める日帰り旅行、実を言うとこれが2回目、前回は随分前に福山動物園にカピバラを見に行くことになった。自分で提案しない場所へ思いがけないタイミングで向かうのは、新鮮さもあり意外と悪くない。
と、いうわけで今回も私がいとも簡単に負けた話は一旦置いておき、行き先が決まったので広島の中心から東へ向かう運びとなった。勝てば官軍、余裕の勝者1人と敗北者5人の思いを乗せて車は走る。
天気予報の雨は曇りの空に変わっていた。自他共に認める晴れ男の面目躍如と言ったところだろうか。
さぁ、福山SAで朝ご飯を食べよう。負けた思いをしっかり咀嚼して飲み込める程にヘビーな朝ご飯を。言うほどの悔しさみたいなものは特にないのだが、朝からガッツリ食べる理由にしたいのだ。
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ご飯を食べて約40分ほど、だんだん南東へ走る。曇りの空はいつのまにか快晴に変わっていた。晴れ男的には友人の期待に最大限応える形にはなったが、正直都合の良さに身震いがする。ここまでくるとあのじゃんけんすら、晴れる方角へ向かうように運命が収束したのではないかと勘繰るほどだ。
道理に合わない事象に歓び、勘違いをやズレを無視したまま飲み込み、そこにある何かを神たらしめるのはいつだって信仰なのだ。そうだ友よ、信じるがいい、私が太陽神だ。
目先のじゃんけんに負ける程度の神を乗せた車は倉敷の南端へ、やって来たのは鷲羽山ハイランド。
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暑い。
9月も半ばだというのに、駐車場に止めた車から出た瞬間の熱気は完全に夏だった。
この鷲羽山ハイランド、現在は名前にブラジリアンパークを冠するのだが、昨今はブラジルよりも日本の夏の方が体感的に暑いらしい。本場並みの雰囲気を味わえる絶好のコンディションかもしれない。
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山と同化しかけているようにも見える遊園地に入場した我々。まぁ当たり前なのだがこのようなテーマパークというものは往々にして園内が徒歩移動である。で、で、で、ここは山だ。あまりにも山なのだ。刺激的なアトラクションに辿り着くまで、まず長い長い階段を上らねばならない。
我々が入場して最初に行ったこと、それは非常に簡易的ではあるが明らかに登山だった。急激な下半身の負荷に耐えられなかったのか、全員が変なテンションになっていた。大腿筋の震えが止まらない。
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いくつかのアトラクションを楽しみ、スカイサイクルとういう名の(色んな意味で)怖い経験も終え、ブラジル人とビンゴしたり踊ったりした我々だったが、在園3時間ほどで限界が来た。楽しむとか乗っかるとかテンション感とかそういうの全部投げ出すほどに猛暑と体力不足が敗因だった。もちろん勝者の意見が第一ではあったのだが、結果的に満場一致で退園する運びとなった。が、問題が発生した。昼食を摂っていないのだ。
飯を食わねば体力不足も補えぬ。ここまで来たわけだしついでに瀬戸大橋を渡ることにした。次に目指すは香川、小麦の力を借りたい。
高松駅付近まで足を延ばした我々は兎にも角にも腹ごしらえが急務、駅前のめりけんやさんでうどんを頂くことに。
私は冷おろしぶっかけ肉うどんにお揚げをチョイス。期間限定で冷しうどんはレモンがすだちになっているらしい。
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コシのある麺を肉おろしと少しずつ混ぜながら啜る。喉越しが良く、さっぱりして非常に美味い。夏にぴったりの味だ。
途中でお揚げを食べてから、半量ほどになったうどんの全体にすだちを絞る。爽やかな酸味が加わることで、飽きることなくあっという間に食べきれた。
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うどん一つのために瀬戸大橋を渡るというような、コストパフォーマンスの悪い選択も難なくできる。これが団体旅行の強みだ。割り勘と言う平和的なシステムを駆使することで移動費だって怖くない。
食べ終わり。昼食が目的だったので正直もう他にすることがない、無駄がない計画性もない動き。これもまた良いものである。
帰りの時間を考えて高松駅付近を少々見てから帰路につくことにした。
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駅付近を見回すと、ひときわ高い建物が近くにあった。高松シンボルタワーと言うらしい。調べたら無料の展望スペースがあるとのこと。我々と煙は高みを目指すことで存在しているみたいなところがあるから上がってから考えることにした。向上心の塊。高さ29階へ。
高松港から徳島方面を見渡せる落ち着いたスペースは空調も効いていて、休憩するのに丁度良かった。
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時刻は16時、満足感と残り時間に折り合いがつくベストなテンションの中、帰路につくことにした。
お土産にうどんと名物かまどを抱え、移動中に見つけたさぬきマルシェなるスーパーに寄りポン酢とうどんつゆを調達、車を走らせ瀬戸大橋を通るなら必ず経由する与島PAへ。
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ここでなんとなく集合写真を撮ったり、アイス食べてみたり。帰路もギリギリまで満喫しようと試みたら疲労感にやられて睡魔と戦うハメになった。
ぼんやりとしながらとにかく眠るまいと社内に流れるBGMを口ずさんでみたものの、体感10秒くらい気絶した。
晩御飯を食べて解散し、家に帰って即シャワーを浴びたら眠気が飛んだので結局深夜に寝ることとなり、翌日の方が疲労感が強かった。寝不足の民あるある。
こんな感じで13時間程度の日帰り旅行を楽しんだのである。
広島からだと半日あれば中国地方と四国九州の一部、頑張れば兵庫も一部行けるかな……??と言ったところで、次回のじゃんけんが楽しみである。
伯剌西爾(ブラジル)あなたは読めたかな??
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