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オムライス夜想曲。

 日本養鶏協会が平成22年に11月5日を「いいたまごの日」と定めて鶏卵の消費拡大キャンペーンを続けていることをご存じだろうか。私はこの間知った。知っただけで特に説明するほどの知識は有してない。ごめんね。
 そして日本養鶏協会は「いいたまごの日」を「オムライスの日」としても設定したらしい。経緯はわからないけども記念日増えるのって楽しい感じがしてとても良い。

 11月5日にオムライスを待ちながらこの話を書き始めてみた。家の近くの中華料理屋にて。中華料理屋で中華食べへんのかい!という大方のツッコミをなんとなく頭に浮かべながら、23年前に出会ったオムライスを今でも好んで食べている。大盛りで。
 特にオチも浮かんでいない書き出しなので当たり前のように一旦下書きへ。私にとってよくあることだ。伝えたい何かがないと言葉が浮かんでこない。
 香ばしい玉ねぎの甘味とか、火の入ったケチャップライスと上にかかったケチャップのマリアージュとか、絶妙な柔らかさと内側がトロっと仕上がった卵の美味しさとか、そういう言葉は浮かんでくるのだけれど。

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 所変わって高知県は日高村のお話。どうやらオムライスで町おこし(?)しているらしい。日高村オムライス街道っていうワードを偶然見つけた。

カレンダーを見ると12日の上には必ず5日がきます。05=たまご=卵。必ず卵が上にのってる12日を日高村ではオムライスの日としています。

 今日は11月12日。なるほど、オムライスの日だ。偶然が必然に繋がったような気分で、一旦下書きに入ったこの話をせっせと書き足し始める。今月のオムライスファン達は他の月に比べて忙しいのかもしれない。知らんけど。
 ぼんやり調べているうちに日高村に行ってみたくなっちゃったな。オムライスと鰹食べに高知行ってこようか、一泊二日で。


 そうだそうだ、オチとかじゃないけど同じ店で同じオムライスを頼むのにも理由はちゃんとあって。

 うちの婆ちゃんは料理をしないタイプの人で、泊まりに行った時の晩ご飯と言えば店屋物だったり出来合いの物をスーパーで買ったり。その内のひとつがこのオムライス。
 ある日、ものすごくお腹が減っていたのと無性にオムライスが食べたい日が重なったことが。たしか小学4年生の時だったかな、出前だからサイズ感もわからないままにオムライス頼んでもらったんですね。大盛りで。

 これが嬉しいことに町の中華料理屋さんによくある感じの重量感たっぷりなやつ。しかし当時はまだ10歳のガキんちょ。周りの子と比べて少々食い意地は張っていても、大人用の(マジの)大盛に敵うはずもなく。半分でギブアップ。
 その夜、私は自分の小ささを呪った。それはそれは本気で。おにぎりが2個から3個食べられるようになった程度で喜んでいた自分を恥じた。
 世界は広く、沢山の強き者共がいる。きっとそいつらはこのオムライスなんてペロリと平らげ、なんなら2杯目を要求することでしょう。そうです、当時の私は、男って大体世界最強を目指して生きていくのだと思っていました。発想がグラップラー刃牙です。
 そこから当面の間私のライバルはオムライスになりました。一食で残さずに喰らうッ!ただそれだけのために研鑽を積んだのです。(沢山食べただけ)
 食べる量が増えては自信を付け、挑戦し、微妙に残しては自信を無くし、また食べて自信を取り戻し、挑戦し、破れ去り、気付けば約2年の歳月が経ち、私は小学6年生に。

 そして、ついにその日が。この大盛りのオムライスを一食で食べ切ることができました。
 最後の一口を飲み込むときには恐らくとんでもない顔だったでしょう、そして腹は今にも破裂しそうな程だったはず。だがしかし!勝ったのです。オムライスと自分自身に。2年で胃のキャパシティを倍に。


 私の密かな挑戦が終わった時に婆ちゃんは言いました。


 「アンタぁ、大きくなったんじゃねぇ」


 あぁ、婆ちゃんはずっと見てくれていたんだ。私のプライドを、戦いを、一番近いところで。
 そして、たくさん食べて強くなった私を認めてくれたんだ。こんなに嬉しいことはない。
 満足そうな私を見て笑っていたあの日の婆ちゃんを今でも思い出す。会いてぇなぁ、婆ちゃん。





 なぁ、婆ちゃん、今ならわかるよ。

 あの時何を考えていたのか、そして何が言いたかったのか。

 太ったな。って意味だったんだろうね……。

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