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【読書記録】精神科保護室の閉塞感と安心感
5月23日
「救急精神病棟」(野村進 講談社文庫 2010年)
救急の精神病患者を対象とする病院を描いたノンフィクション。
精神科医療に携わる医師や看護師、患者を第三者(筆者)の視点からのぞき見ることができる本だった。
私も精神科病棟に入院したことがあり、その時の経験と重ね合わせながら読んだ。
隔離室に関して書かれた部分では、この本の舞台となっている千葉県精神科医療センターのセンター長が隔離室の事情を語っている。
千葉県精神科医療センターの隔離室は鉄格子を採用しているのだという。
その理由について、隔離室内の換気とスタッフとの肉声でのやり取り、閉塞感の軽減を挙げている。
私が1ヶ月半ほど入っていた隔離室(保護室と呼んでいた)は鉄格子ではなく重い扉とすりガラスの部屋だった。
窓はもちろん開かないし、エアコンの換気機能も何故か使えなかったので、空気がこもってしまって、室内にはカビがたくさん生えていた。
そういうことを考えれば確かに鉄格子はいいかもしれない。
でも私にとって、重い扉の部屋の閉塞感は、少しだけ安心感を与えてくれるものだった。
他の人も、危ないものも絶対に入ってくることができない(看護師、医師以外)鍵のついた重い扉。
自分だけしかいない空間。
自分だけが吸う酸素と自分だけが吐いた二酸化炭素で構成されている空気。
当時私は早く家に帰りたくて仕方がなかったが、保護室にいる期間が長くなるにつれて、どこか安心感を覚えるようにもなっていた。
(結局は隣の部屋からの騒音に耐えきれなくなり、部屋を変えてもらった。廊下との間の扉は分厚いのに、隣接する部屋との間の壁はすごく薄いのだ。)
部屋にカビが生えるのは嫌だったが、それでも鉄格子の保護室など私にはとても耐えられないだろう。
ただでさえ、周りの患者さんと蝉の叫び声だけが聞こえてくる、退屈な保護室だ。
それに加えて鉄格子で、外気や外の何かが簡単に部屋の中に入ってこられる状態なんて考えられない。
しかし中には、その閉塞感に安心することはできず、むしろ外と繋がっていた方が安心だという人もいるのだと思う。
そういう人がいることを考えれば、確かに通気性も良い鉄格子の方が適しているような気もする。
今回の読書で、保護室のこと以外にも自分が知らない精神医療の事情を知ることができた。
また、自分の入院経験と照らし合わせながら、病院ごとの特徴や考え方に見られる違いについて考えられたのもよかった。
今でも不安になると時々、あの厚い壁に守られたいと感じる時がある。
二度と保護室に戻りたくはないと思っているはずなのに、何故か急に恋しくなってしまう。
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