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2021年2月の記事一覧

「俺の理想の死に方」は、誰かの介助の下にある。在宅医療、終末医療ー死に方を考えるのか、死なせ方を考えるのかー『痛くない死に方』高橋伴明監督作品ー

「俺の理想の死に方」は、誰かの介助の下にある。在宅医療、終末医療ー死に方を考えるのか、死なせ方を考えるのかー『痛くない死に方』高橋伴明監督作品ー

『心の傷を癒すということ』の精神科医に続き、在宅医療、終末医療に関わる医師を、柄本佑が演じる。

『心の傷…』の安先生は、自らがガン死してしまうが、『痛くない…』は「人の死に方と看取り」についての映画であり、実在の在宅医療に携わる長尾和弘医師の原作監修を受け、高橋伴明監督が脚本も書いている。

前半は「痛い死に方」に見舞われる主人公、若い医師河田。
既存の延命治療の残酷さ、データだけの医療の浅はか

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『すばらしき世界』西川美和監督作品ー向こう側とこちら側の上にー空だけが広く輝いているー

『すばらしき世界』西川美和監督作品ー向こう側とこちら側の上にー空だけが広く輝いているー

Facebookに残る記録によれば、2020年10月のこと。『身分帳』(佐木隆三)帯に「西川美和監督 映画化決定」と書かれてあった文庫本を見かけ、特に深く思うこともなく買って読んでみた。

旭川の刑務所から出所してきた男の履歴、刑務所での暮らし、細かな記録が綴られながら、ヤクザの世界から足を洗って「普通の世の中」になじもうと努力する男と周囲の人々とのやりとりが淡々と描かれていく。そうして男が、よう

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劇場版『心の傷を癒すということ』ー阪神淡路大震災から四半世紀の時を超え、わたしたちの上に届く声に耳を傾けてー

「お母さんは韓国人なの?」

映画は、子どもの問いかけから始まる。在日韓国人として日本に育ち「韓国人とわかると色眼鏡で見られるから安田という通名を使ってるの。本当の名前は、安」と母から知らされる少年。

「嘘の名前や」…「安田」と「安」の間に。少年の心は揺れ動きながら育っていく。人の心に強い関心を持ち続け、大人になる。

安克昌ー大震災で被災した人々の「心のケア」を提唱した先駆者の名前を、恥ずかし

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