劇場版『心の傷を癒すということ』ー阪神淡路大震災から四半世紀の時を超え、わたしたちの上に届く声に耳を傾けてー


「お母さんは韓国人なの?」

映画は、子どもの問いかけから始まる。在日韓国人として日本に育ち「韓国人とわかると色眼鏡で見られるから安田という通名を使ってるの。本当の名前は、安」と母から知らされる少年。

「嘘の名前や」…「安田」と「安」の間に。少年の心は揺れ動きながら育っていく。人の心に強い関心を持ち続け、大人になる。

安克昌ー大震災で被災した人々の「心のケア」を提唱した先駆者の名前を、恥ずかしながらわたしは知りませんでしたが。大災害の後の世界でー弱く傷ついた人に寄り添う道を選ぶのか、切り捨てていく道を選ぶのかーと問いかける安先生の言葉は重たい。

1995年の阪神淡路大震災からはや26年がたってしまった。2020年から続く新型コロナの脅威の下に。この世界は、弱者を切り捨て傷ついた人を虐げるーそちらの世界へ大きく傾いている。

『心の傷を癒すということ』ーNHKでドラマ化されたときには、見逃してしまったが劇場用に再編集され、たった今、全国で上映されることには、きっと大きな意味がある。原作を脚色したドラマだとしても。若くしてこの世を去ってもまた。時の向こう側から安克昌さんの声が、かけられている。

「どうですか」「どうしてますか」

どうしたらいいんだろうーわたしの心もまた揺れ動き続けてる…。


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