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シンプルなのになぜ印象に残る? 「無印良品」のブランド力の秘密

「青春オンラインより」

アルファベットのMを使った「マクドナルド」、ギリシャ神話のセイレーンをモデルにした「スターバックス」、数字の7が特徴的な「セブンイレブン」……。強いブランドには印象的なロゴがあるものですが、ロゴに頼らず成功しているブランドもあります。それが「無印良品」。その秘訣は”ブランディング力”にありました。

ありがちな「ブランド」の誤解

同じ商品でも、売っているお店によって価格が違うことはよくあります。同じものなら当然、価格が安い方が良いはずなのに、値段が少し高い方のお店で買ったという経験はありませんか?

モノやサービスがほぼ同じでありながら、多くお金を払う「価値」がある、これこそが〝ブランドが効いている証拠〟であり、強いブランドには必ずこの「価値」があります。

しかし、「商品のパッケージにロゴを付けることがブランディング」という誤解をされることがよくあります。ロゴによってブランドとして成立はしても、それだけでは、お客さんにブランドの価値は伝わりません。

私のセミナーで、商品のパッケージのロゴの部分だけを隠し、どこのブランドのものかを当ててもらうという簡単なクイズを行うことがあります。先日も、コンビニやスーパー各社のPBの「冷凍カルボナーラ」で、そのクイズを行いました。

結果、答えはバラバラでした。それぞれブランドとしての世界観はあるものの、いざロゴを隠すとわからないのです。

つまり、それぞれの冷凍カルボナーラは、そのカルボナーラなりの美味しさ感や世界観があるものの、ブランドとしての訴求があまりできていないということになります。

「そんなの、ロゴを隠したらどこのブランドの商品かわからなくなるのは当たり前じゃないか」と思うでしょうか。実は、先ほどのロゴ隠しテストを行ったとき、全員が正解したブランドの商品もありました。

一体それはどこのブランドだと思いますか? 

答えは、「無印良品」です。

無印良品のカレーやお菓子のロゴを隠し、どこのブランドかを聞いたところ、ほとんどの人が正解したのです。これって、実はすごいことです。というのも、無印良品は「そのデザインや世界観、ブランドに込めた思いを、お客さんに上手に伝えることができている」と解釈できるからです。

つまり無印良品は、商品のコンセプトや世界観はもちろん、パッケージデザインにおいても統一した世界観をつくっているということです。いかに無印良品がブランド力を持っているかがわかります。

「商品にロゴを付けるだけ」といった安易なブランドづくりでは、人々の認知度を得ることはできないのです。

「無印良品」と聞いて100%出てくるキーワード

私はセミナーでよく「『無印良品』というブランド名を聞いて、思い出すキーワードは何ですか」と聞きます。「無駄のない」「質素」「洗練された」「日本を代表するブランド」などが出てくるのですが、ほぼ100%と言っていいほど必ず出てくるキーワードがあります。

それは「シンプル」という回答です。

企業側もおそらく、ブランドとして「シンプル」を重要視していることでしょう。その証拠に、店舗や商品、広告など各タッチポイントでの統一したデザイン、世界観は「シンプル」に集約されています。

「無印良品」と聞いて「シンプル」という言葉が出てくる理由は、無印良品が長期間にわたり、ブランドのエッセンス(ブランドとしての大切な要素)でもある「シンプルさ」を構築してきたからこそだと言えます。

強いブランドにはそういったブランドのエッセンスがあり、それがしっかりお客さんに伝わり、頭の中に焼き付いているのです。

画像2企業はお客さんとの接点で「一貫性」を持ってブランドの価値を伝える。これが、ブランド価値を高めることにつながる

”いいもの”でも売れない時代。カギは「ブランディング力」!

ブランドとは何かというと、企業とお客さんとの接点を通して、お客さんに評価され、お客さんの頭の中に蓄積されていく価値のことです。

企業側の視点で見ると、ブランドとは価値観を含んだ概念であり、無形資産でもあります(ブランド=無形資産)。

無形資産とはその名のとおり、形のない資産のことです。工場や設備といった、目に見える資産とは違い、特許や著作権など目に見えない資産のことを言います。資産であるからには、ブランドとは将来的に会社に利益をもたらすものだと言えます。

もし仮に、明日から「無印良品」が「無印良品」ブランドを一切使えなくなるとしたらどうなってしまうでしょうか? ブランドを掲げることができないという状態をイメージしてください。

売上がどれだけ落ちるかを想像してみると、「ブランドという資産が利益を生み出している」ことがイメージできると思います。それだけ長期間にわたってブランドを築き上げてきたということです。

アパレルメーカーの三陽商会が「バーバリー」ブランドを使えなくなり、売上が落ちたというニュースは記憶に新しいと思います。

商品のデザインや品質はそんなに変わらないにもかかわらず、ブランドを扱うことができなくなり、売上が落ちてしまったのです。それくらい「ブランド」というものには影響力があるということです。


◆本コラムの著者・乙幡満男氏の新刊が発売中!

「ブランディングが9割」

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 現代ではさまざまな商品のグレードが高く、「いいモノ」であることはもはや当たり前。品質を上げたり、価格を抑えるだけでは売れなくなりました。そこで必要なのが、「ブランド」力を高めることです。ブランド戦略がうまくいけば売上を伸ばすことも難しくありません。ブランディングというと、「費用がかかる」「すぐに結果が出ない」「難しそう」……こんなイメージを持つ人が多く、規模の小さい会社ほど「ブランディングは大企業が行うもので、儲けにつながらない」と考えがちです。
 しかしポイントをおさえれば、小予算でも、ブランド戦略を構築・実践して売上を増やすことはできるのです。本書では、実例を挙げながら「ブランドづくりのポイント」を開示し、ブランディングの基本から応用まで、わかりやすく解説します。

『ブランディングが9割』 
 著者:乙幡満男
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 発売日:2020年6月20日
 ISBN-10: 4413231619
 ISBN-13: 978-4413231619



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