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ドラッグストアで大量に見かける「楽天売上No.1!」商品の謎

ドラッグストアやバラエティーショップなどで、「楽天で売上No.1!」とか「@cosmeでナンバーワン!」といったシールが貼られた商品を見たことはないでしょうか。1位はひとつしかないはずなのに、たくさんの商品に貼られています。そのカラクリと各企業がここまで「1位」にこだわる理由について、ブランドコンサルタントの乙幡満男さんに教えてもらいました。

なぜそこまで「1位」にこだわるのか?

「2位じゃだめなんでしょうか」

民主党政権時代、事業仕分けにあたってある女性議員が、スーパーコンピューター「京」の計算処理の速度についてこんな発言をし、物議を醸したことがありました。

そのときどうすべきだったかはここでは論じませんが、もしこのスーパーコンピューターの戦略的位置づけが「リーダー」ならば、意地でも1位であり続ける戦略を取らなければなりません。もし「フォロワー」という位置づけならば、2位で良かったでしょう。

しかし、ブランドの世界では、2位じゃダメなのです。

ドラッグストアやバラエティーショップなどで、「楽天で売上No.1!」とか「@cosmeでナンバーワン!」といったシールが貼られた商品を見たことはないでしょうか。

そういったシール(アテンションシールといいます)を見て、「なんとなく」購入したという経験が一度はあるのではないかと思います。

少ない金額の支払いだとしても、人は買い物に失敗したくないもの。失敗しないためにどうしているかというと、世の中で売れていて、多くの人が買っている商品を選ぶのです。みんなが使っているから「間違いないだろう」「失敗しないだろう」と判断する方が多いようです。

それゆえに、多くの企業やブランドは、何かしらの1位になろうと必死になっているのです。「何かしらの」というのがポイントです。

ぜひあなたも店頭で、あるいは@cosmeや楽天などで、「売上No.1!」といったアテンションシールが貼られた商品をよく見てみてください。

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「1位だからすごいし、いろんなお客さんに評価されている」と思うかもしれません。しかし、必ず※印などで小さく、なぜ1位なのかが書かれています。

日本全国で年間1位を獲得した商品のブランドももちろんありますが、中には「あるカテゴリーの中のある分野で、10月の第1週目の1位」など、とても限られたところで1位というものもあるのです。小さいカテゴリーで、短い期間の中の1位であることがわかります。

「そんなのズルいじゃないか」という人もいるかもしれませんが、事実であることに変わりはありません。それくらい、1位には魅力があるということです。

自動車といえば? コンビニといえば?

「自動車といえばトヨタ」「コンビニといえばセブン–イレブン」のように、強いブランドには「○○といえば」の後に必ず自社ブランドがきます。ほかにも、「ファストフードといえばマクドナルド」「おむつといえばパンパース」などが挙げられます。

小売りの現場では、カテゴリーの1番手のブランドは、スーパーやドラッグストアなどで棚、つまり、売るための場所が優先的に用意されますが、2番手3番手のブランドは、販売促進の支援や仕入れ値などで良い条件を出さなければ、なかなか売り場スペースを確保できないのが現状です。

棚が優先的に確保されやすいPB(プライベートブランド)もこの争いに参戦しているため、より競争は厳しくなっています。棚スペースを確保するため、メーカーは本当に必死になっています。

メーカーとしては、小売り側から「あなたのブランドを当店でどうしても販売したい」と言われるような商品づくり・ブランドづくりが必要でしょう。なんとしても様々な小売りから「取り扱いたい」と言わせるためにも、1番手を目指し、「○○といえば」のあとに自社のブランドがくるようになることを心がけたいところ。

しかし、いくら1位を目指してほしいと言われても、「それは大手だからできること」と思うかもしれません。

そこでなんとしても1番手を目指す企業は、差別化されたある特定の分野や領域で1位を目指しているのです。

「ナンバーワン!」になるには市場を細分化する

「自動車といえばトヨタ」という話をしましたが、もっと細分化することで、各社の特徴が浮かび上がってきます。

例えば、「エンジンが優れた自動車といえばホンダ」「デザインが優れた自動車といえばマツダ」「軽自動車といえばスズキ」というように、自動車の特徴を細分化することで、各社ナンバーワンの分野が出てきます。

自動車メーカーそれぞれが、自分たちの特徴を出そうと非常に努力しているのです。

自動車メーカーで、さらに細分化して差別化に成功しているブランドもあります。独特なデザインと完全受注生産で成功している、光岡自動車です。中には、既に発売は終了しているものの1000万円を超える「オロチ」というスーパーカーもあったほどです。

大手がいるところは無理と思われがちですが、市場を細分化することで1位を獲得することが可能になるのです。

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