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【エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスの感想】

割引あり

 エブエブみた。

 ただのマトリックスのB級パロディかと思いきや いやいや元ネタのマトリックスを上回る丁寧さで描かれており、世界観としてはドタバタで突飛もない発想なのだが、その完成度たるや目を見張るものがあった。こりゃ賞総なめするわ。

 とてもカルト的人気の高そうな作品だから ツーな方には失笑されるかもだけど、せっかくみたのでいつものごとく予習復習なしに「100分de名著」司会の伊集院静さんになったつもりで、外野から独断で感想を述べさせていただく。

 まず役者がいい。(以下そう思わせる 花形スターのスゴさとして
お読みください)どれも花がなく 地味〜なスターっぽさを感じさせない
いかにもアジアンな顔立ちをしており、親しみが持てる。のくせ、しっかり役を立ち回っており、アクションなどできんだろうみたいな勘ぐりを見事裏切ってくれる。プロだなあと安心して観ていられる。
 カメラワークも凝ってる。音響や音楽も手を抜いていない。ストーリー展開や演出が効いているので、2時間弱の長丁場を退屈せず最後まで楽しめた。

 と、ここまでベタ褒めれば、いったいどんな高級感漂う映画かと誤解されそうだが、エブエブの魅力は こうした映画世界のスキルを贅沢に盛り込みながら  とてもB級な世界を丹念に描いてる点にあるだろう。

 バカ満載なのである。それを誰一人笑って誤魔化さず、真剣な表情で
(内心笑ってるところもあるだろうが)演じきってる面白さである。そうなのだ。この世界の住人たちは死ぬか生きるか、世界消滅の危機と戦ってる。
必死なのだ。側からみればバカだけど。

 ハリウッド映画的なゴージャスさと、アジア映画的なドタバタB級劇が
美味い具合にミキシングされていて すごく新鮮にみえた。

 「マトリックス」は言うまでもなく、その他 私的にオマージュを思い当たったのは「ジャッキーチェン映画」のようなコンテンポラリーダンス風リズミカルな戦い方、「うる星やつら」の敵キャラごった煮風アクション喜劇、アニメ映画「千年女優」「パプリカ」のヒロインが色んな役どころに変身するシーン。ラストのエブリンの戦い方は「北斗の拳」のトキを思い出す。役者では 夫役のキー・ホイ・クァン氏が「Mr.Boo!アヒルの警備保障」で有名なマイケル・ホイ氏を彷彿とさせた。似てないと言われそうだが、独断なので。高い声がいいですね。頼んなさそうで。
(税理士のおばはんが、ガリガリガリクソン似てるってのはどうです?これは同感しません?)

 よくある感想では「母と反抗期の娘の確執」「親子愛」みたいなことに
触れてる人 多そうですが、敢えてそこはスルー。

 わたしの感想らしく バカであればあるほどパワーが得られるという設定の奥深さに踏み込んでみたい。

 たしかにバカにはパワーがある。人を寄せ付けない、一瞬相手を怯ませるほどのパワー。得体の知れぬものとの括りでみると、バカもその範疇なのだが、バカはさらに人を笑かすこともできる。笑っちゃいけないタイプ、笑っちゃいけないシチュエーションなどが理由で 決して笑えないケースも社会に多いが、それを圧倒してしまうほどパワーのあるバカもあったりする。
(正月特番「笑ってはいけない24時間」なくなっちゃいましたね。優しい時代になると、優しくするのも当たり前になっちゃうから優しい人にも損だと思う)
 制作側がそこまで深く考えて作ったかどうかは知らんけど、私としてはそういうメタファー感じました。

 映画内での思いつきのバカの程度は、それほどブッ飛んでもいないし
笑いのレベルで言うと、お笑い好きの学生がやってるイロモノ宴会芸レベルだけど、シリアスになりがちな話のなかに、しっかり笑い(失笑でも)を落とし込めてると思う。幼稚な私なんかだと「オレの方がもっと気にきいたバカ思いつく」と、どれだけパワーがつくのか妄想したりしながら鑑賞できるオマケもついてきた。

 では最後に、マルチバース(多元宇宙)の設定について。

 最近マルチバースを扱った映画が増えてきた。いわゆる「パラレルワールド」や「平行宇宙」のことだが、日本だと転生、生まれ変わり、タイムリープ系もやたらと多い。

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