蚊帳

日記とてがみ。

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爆心地から一番近いラブホテル

田舎の高校生の頃。塾の先生の息子が帰郷して、教室に顔を出しにきたことがある。膝までのズボンの下からふくらはぎ、左脚のタトゥーが欲情を誘う。初めて見た!憧れていたのは都会にだったろう。あの頃からも、子供の時からも、ずっと男にサカっていたなあ。 タトゥーの男と寝たのはあれから何年も経った頃、駅の栄えていない側で待ち合わせた。 細い身体中にどこかの先住民族の絵、車がやたらと大きかった。公園の横をすぐ曲がった所にあるホテル、もう行くことはないだろうな。複雑な気持ちになったか、時をと

    • 周回と絶花

      畳の目は、そろっていることだけ、誇らしく仕事に勤めている。木目の顔をしてすました机のなか、たくさんの鉄でぐちゃぐちゃになったほんもののかけらたちが、元の形よりも詰められて、整った顔として選ばれたのか。 肉体の中、たくさんの糸、たばねられていること、ふだんはわかりもしないのに、しっている。 スプリングは何周している?きっと誰かが決めているはずなのに、ふたりで音を立てるくらいしかできないな。 花の断面は教科書でみたものの自分でやると自分がいたくなりなにか一寸引き受けさせられる、

      • 海の子ら

        あのひとさ、ずるいなあ わたしもそうしたかった わかる、車両の床の4本線 踏むと砂糖のべたべただろ。わかる?爪の先がさらに蹄のように、割れていることも?わたしのゆびが水疱をまとうとき、だれのことをかんがえていたのかも? 地球が身震いして、肩を寄せ合えるひとが限られているとわからされて、しまっても、星の見えるやまみち、街灯のひかりに目の中を刺されないように、足をずりずりとまわしてまわして、とおくとおくを凝らしてみてみて、まだ真空に遮られているよりは、ちかいちかい、近しいひとた

        • 汽水域

          海の音が遠く遠く届かない場所の排水の耳障りな響きはほんとうの海とどこでぶつかるのだろうか まじってどちらでもないものになるはず 皮膚があることはよろこばしいように思えた ぶつかって わかるかたちが、ひとつずつ、どうしようもなくに? いたいかも、つめたい、切り傷、ぎこちない、よね、あ、わたし、鏡みるの、鏡の中のわたしから、みられるのも、いや、いやだった、あ、なつかしいね。

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        爆心地から一番近いラブホテル

          チ、ヨ、コ、レ、イ、ト

          私の口に入らずとも、せかいのなかのひとつのしたが、唾液をまぜ、身体のなかのへやのすみずみに行き渡り、一方はとじたまま、一方はとびらを開け放ち、またその一方は、綿のひろばにすみかをかえ、またそうでないものは、人の作ったひかりを飲み込んで吐き出し、そのまま空へ帰るのだとしたら。それでいい。ふた差しゆびを出せなくてまけてもそれは幸せなことなのだ、箱の中のビニールの中で寝かしつけられているより、よほどだ。

          チ、ヨ、コ、レ、イ、ト

          散文まる

          何も浮かばない。煙草の火を消そうとしてまだ吸えると引き返す。下半身は下着から羽が生えている。あの人のことを思い出す。あの人も、あの人も、早く私に触れてほしい。ふたりでひとつの百均のサンダルみたいなやつが寄り添ってたてかかっている。3本の指でトイレットペーパーの芯を三つつまむ。使い物にならない乾いた柔らかい紙がはためいている。埃まみれの蓋を開けて磨いてない歯に不快になる。味わった後に冷静になり捨てる。無くした指輪をみつける。見つけてからの方が不安になる。腕の傷をみてみぬふりした

          散文まる

          ないけど、(羅列)

          夜は物騒な繁華街のなかに蔦と植木に埋め込まれたような花屋があったのを思い出してメッセージください 彼をくん付けで呼ぶ人がまだいるか怖くてきけないこともある意味ではない 誰かと話したいと思って思ったが今流れてたようなの忘れてて無理矢理剥がした ま赤な服の上下を着てた頃の身体には戻れないもの音である意味は無い

          ないけど、(羅列)

          気象と自転

          濡れた空気は雨水のなかにまだいるといっていた 太陽の光があると月がしらせてくれるに雲がなん度も自分の方がお前の近くにいるぞとうるさかった

          気象と自転

          浴槽

          一年前のわたし、かわったかたちをしているのか、ゆれる輪郭が上野で行き来することすらままならない。 死なないでおやすみ。そうしてほしい。 濡れた耳の中が待ち遠しく、凍えながら風呂が沸くのを待ち、煙の中で生き延びていた延びた前髪がじじっと焼けた。

          車掌が見つけるその頃

          都心に向かう車両のなか、十代の、赤くうすく四角い宝石は 座席の下に闇を吸って反射光を吸ってひかりを吸っておさまって、本当のことを隠すための仕事を終えた顔をしている。 冊子のあいだに挟まっては、傷がつく事もないだろう。

          車掌が見つけるその頃

          はらわたの宝石

          かがやいている ひとみは濁っても、胆嚢はとうめいのみどりで指輪にしたいくらいだ。破けば苦いエメラルド。うろこたち かつては整えられたマジョーラの根源のかがやきは、刃でそがれ泥のようだった。 一番小さいのから絞めるとはなした。不慣れな捌きでいちばん苦しませてころした。絞めるじゃなくて、ころすだろう、ごまかすことば。きみはしめころされたいんだっけ。 さかなにはされたくないことをしてきみにはされたいことができないきょうの両手の先はどうも冷え切っているこおったみずと変わらないほとつめ

          はらわたの宝石

          はだしのまよいご

          幽霊として駆け回るこどもは母親を探し出しているころだろうか 部屋の外の話だから別にいい わたしはひとりでましになりたくてただこの柔らかい肌に記憶を残したことを悔いていた 空のスプレーのもたげたくびはうなだれて中身のなさを訴えている 籠のプラスチックは規則正しく並んでいるのに二重にした途端に規律が乱れる きみはたくさんのたくさんの線の記憶をひと舐めして 束にしてのみこんだ 革の詰まる音は壁にぶつかり弾けた 道化として割れたつまさきを知らぬふりして何度もまわる 角まで、空気がぐち

          はだしのまよいご

          白を背に

          日を背に車両にのれば 積み木のようなのの、外壁の白が目に刺さる 白はいちばんきれいでいちばんいたみを受け取る色 右上がりの字はでんちゅうがすきなのか?噛んじゃった。 一つの窓から沢山の頁のかけらを題した文字が右へ右へうなぎのぼりか。 N先生の板書は右下がりで美しかった そして一番後ろの席だと読めなかった 当てられて わかりません いたみをうけとる それも白の粉の字。

          白を背に

          話の話

          私の話をしよう。きみは私よりも細いゆびできめの細かい肌だった。間を持たせようと言葉を並べ立てた。硬い皮膚をさらに硬くするかのようだった。沈黙は回遊魚の死のようにこわいかのようだった。皮膚は白く薄くてほおのほくろが大きいのとちいさいのと中くらいので反転した夜の空の写真のように見立てることとした。冬の寒さを身体が思い出していた。 私の話をしよう。布団の中にある親指と人を指さない人差し指のあいだは綿の室内履きに食い込まれた違和感で居心地悪くしていた。はだかのあしではもう歩けないよう

          欲しがるます 忘れがるます

          私はあなたの名前をしらないし、きっとあなたも私にはずっとおしえてくれないんだろう 何者でもないからこそほんとうのこころが剥き出しにできる、そういう相手であることを信じていくしかないみたいで、形なき信仰はタブを閉じれば消えうせる オ母サン。 草野心平の詩 ヘビノ眼ヒカッタ。 草野心平の、詩 わたしも忘れることできるのかね 青い花を燃やしたならきっと炎は血のように真っ赤だろう 忘れたのならばきっと 青も花も、炎も血も 赤も全て名前のないものになるかね 言葉を持たぬ方がいいか

          欲しがるます 忘れがるます

          カーネーションの嫌いは母譲り

          ああ私誰が好きだったんだっけって工場に挟まれた道で脳が曲がって、正しく家に着き、しなければならない電話を。する気にならない。 義務として苦しい話をして、閉じる。 もう、私は…泣きそうだ。 鴎を今年は見ないね。 小さな花束  好きではない花といろ  ばかりなのに寄せ集まるとうつくしいものだ。 わたしを現実に繋ぎ止めてくれた新しいかぞくと、わたしを送り出すかぞくと…わたしはかぞくになれない人を心の真中に携え、紙のようなありがとうを述べる

          カーネーションの嫌いは母譲り