爆心地から一番近いラブホテル

田舎の高校生の頃。塾の先生の息子が帰郷して、教室に顔を出しにきたことがある。膝までのズボンの下からふくらはぎ、左脚のタトゥーが欲情を誘う。初めて見た!憧れていたのは都会にだったろう。あの頃からも、子供の時からも、ずっと男にサカっていたなあ。

タトゥーの男と寝たのはあれから何年も経った頃、駅の栄えていない側で待ち合わせた。
細い身体中にどこかの先住民族の絵、車がやたらと大きかった。公園の横をすぐ曲がった所にあるホテル、もう行くことはないだろうな。複雑な気持ちになったか、時をとどめた美しい瓦礫と、生き残った者たちが、そのこどもたちが、快楽を求めるための真新しかった箱が、残ってあるだけのこと。ほら、あの木の影で男達がまぐわっていたのだよ。

あの地にいると生きることをつまされる。ひとりひとりの目と耳に、あやまちは二度と繰り返しませんと、たくさんの人が死にましたと、ここにそのひとたちが居たのだと、死の上に立っているのだ、と。
真夏の、凪の、オーブンの中に入れられたような熱さを耐えられるんだよ。だってこの地には凪のほかにいらない、人の起こした風はいらない。死の上に立っている。あの男の人もまだきっとそうだろう。

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