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民法#52 占有権③

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占有訴権


なお、本権のない者や他主占有者も占有権はあるので、占有訴権をもつ。

①占有回収の訴え




→占有が奪われた場合にその回収や損害賠償ができる。提訴期間は奪われてから一年である。

②占有保持の訴え


→占有を妨害された場合、その妨害の停止及び損害賠償ができる。
→提訴期間は妨害されている間、および妨害終了から一年が原則である。
→上記において工事による妨害である場合は工事開始から一年経過するか、または工事終了で提訴できなくなる。社会的損失を防ぐための趣旨である。
→自然的な妨害による、それを停止する費用は妨害者にかかる。しかし、損害賠償は故意や過失にらなければ妨害者に請求できない。

③占有保全の訴え


→占有が妨害されそうな場合に、その予防または損害賠償の担保を請求できる。
→あくまでも妨害されそうな状況のみに提訴できる。
→損害賠償の担保の請求は相手方に故意や過失がなくても請求できる。占有保全の訴え自体には相手方に故意や過失を要求しない。

【コラム 果実と占有回収】
本権のない者でも占有訴権を有する。悪意占有者は占有物の果実を所有者に返さなければならない立場にあるといえども略奪者には占有回収の訴えによって、その返還や損害賠償を求めることはできる。

占有の転換


→自主占有や他主占有はそれぞれ返還されうるが、あくまでも主観によるものではなく、権原に基づく客観的な事由を要する(売買など)。その要件は民法185条により下記である。
①占有者が自己に占有させた者に所有の意思を表示する。
②新たな権原によりさらに所有の意思をもって占有を始める。

【復習 占有の種類】
自主占有と他主占有
前者は自分が所有する意思をもって占有
後者は他人の所有がわかっていてする占有

自己占有と代理占有


前者は占有者が直接占有し、賃借人や受寄者も含まれる。直接占有ともいう。
後者は直接占有者を介して間接的に占有することである。間接占有ともいう。

善意占有と悪意占有


本権のない占有のうち
前者は本権がないことがわからないで、もしくは本権があるかどうか疑いがある状態でする占有
後者は本権があることをわかってする占有

【復習 善意占有と悪意占有のポイント】
→悪意占有は本権がないことに疑いをもちながらする占有も含まれる。
→果実の収得について差異がある。
→善意占有と悪意占有ともに必要費や有益費はもとの本権のある者に請求できる。
→果実を得ていた場合は通常の必要費は請求できない。
→悪意占有者も有益費は請求できるが、本権者側の訴えにより、費用償還の期間を許与することができる。それにより、悪意占有者は留置権を主張することができずに、すぐに占有物を返さなくてはならない。

相続と新権原


→基本的には他主占有を相続してもそれが自主占有に転換することはない。しかし、特殊な事情が認められる場合にはその限りではない。
→共同相続の場合で、一人の相続人が単独相続した場合で、管理や使用、納税など、それにもとづいて言動した場合、相続開始の時より自主占有したとされる判例がある。

演習問題

次の設問に◯か✕かで回答せよ。

①農地の賃借人が農地を買い受け、代金の支払いも完了している場合でも、農地法の許可が得られないときには自主占有を取得することができない。

→✕ 自主占有における所有の意思の有無は占有取得の原因から客観的に判断される。買主の占有には所有の意志があるといえるため、たとえ農地の買主が農地法の許可を得ていない場合でも買主に自主占有が認められる。

②土地所有者が死亡し、共同相続が開始した場合において、他の相続人の承諾を得てその中の一人が占有を始めたときは、その者は単独所有者として自主占有を取得する。

→✕ 相続が開始されると相続財産は共同相続人の共有状態となる。したがって、他の共同相続人の持分についてまで所有の意思は認められない。なお、たとえ共同相続人の一人が他の相続人の承諾を得て占有を始めたとしても、特別な事情がない限り、単独所有者として自主占有を取得することはない。

【コラム 特別な事情】
 上記「特別な事情」につき、下記の判例がある。最高裁判決 昭和47.9.8
  共同相続人の一人が単独に相続をしたものと信じて疑わず、相続開始とともに相続財産を現実に占有し、完了・使用を専行し公租公課も自己のでその負担により納付した事情のもとでは、その相続人は相続開始の時から自主占有を取得したものと解される。

③AがBに対して甲動産を貸し渡している場合に、AがBに対して甲動産の一時返還を求めたところ、Bは、甲動産は自己の所有物であるとしてこれを拒否した。その後、DがBから甲動産を窃取した。この場合、AはBに対して占有回収の訴えを提起できる。

→✕ AはBの直接占有を通じて甲動産を代理占有していたところ、占有代理人であるBが、甲動産は自己の所有物であるとしてAからの返還請求を拒否した場合、Aの代理占有は消滅する。したがって、Aには占有がなく、Dに対して占有回収の訴えを提起することができない。

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