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「月の立つ林で」を読んで


「あたりまえのように与えられ続けている優しさや愛情は、よっぽど気をつけていないと無味無臭だと思うようになってしまうものなのよ。透明になってしまうものなのよ。それは本当の孤独よりもずっと寂しいものかもしれない」

青山美智子 「月の立つ林で」より


青山美智子さんの新刊、「月の立つ林で」を読んだ。


秋に「月」の展示をする予定なので、月にまつわる小説やエッセイ、月に関する本を、それまでにたくさん読もうと思っていたところ、展示のテーマにぴったりの物語だった。
(そして、たぶん今のわたしにも。)


登場人物たちはみな、プライドや、卑屈な思いに縛られ、他の人と自分を比べて自信を失い、苦しい思いを抱えながら毎日をすごしている。
そんな日々の中で、みんなの心の拠り所となっているのが、タケトリ・オキナという人物が毎日Podcastで発信している『ツキない話』。
彼が語る月にまつわるアレコレを聴いたり、周りの人たちや出来ごとを通して、少しずつ自分を取り戻し新たなスタートに立つ勇気を出せるようになっていく。


あたりまえだと思って、見過ごしていた毎日の小さな幸せに気づくことの大切さを教えてもくれる。
読みながら、何度か涙ぐんでいて、ここのところの、凝り固まって頑なになっていた自分が、少し解きほぐされたようにも思えた、そんな癒しの物語でした。


「月が立つ」という言葉は新月を表しているそう。
タケトリ・オキナによると、新月には新しく何かを始めたり、新しく何かを使い始めたりするのに、よい日でもあるみたい。
5月だと、20日が新月の日にあたる。


新しくスニーカーを買ったけれど、まだ一度も履いていないから、5月20日におろそうかな、と思っている。


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