りべます

リベラル・マスキュリズム。

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最近の記事

現代日本のジェンダー格差(解説)

「現代日本のジェンダー格差」という画像を作りました。 以下は解説です。 この画像の目的男性差別の現状を明らかにするために作成しました。 類似の画像は既にいくつもあります(「半年後の自分への置き土産」参照)が、以下の3つの観点から新たに作り直すことが必要であると考えました。特に3つ目は重要で、最新のデータを取り上げるためには今後も更新しつづける必要があると思います。 特に重要な問題を精選して取り上げることで、男性差別の現実が明らかになるようにすること。 グラフとして妥

    • 私のマスキュリズム小史

      15年の昔現存しているもので、私が初めてマスキュリズムに関する文章を書いたのがいつか、過去のファイルを漁って調べてみたら、2009年だった。もっと前にも書いたものがあるに違いないが、残っていない。いや、残っているかもしれないが、出てこない。 その2009年の文章は「トイレットルームのマスキュリズム」という題名の文章で(1)性別によらず誰でも使えるトイレを設置すべきであること、(2)男子小便器は男性の羞恥心を軽んじるものだから不要であること、(3)「音姫」や個室内のゴミ箱など

      • 男性解放は「バックラッシュ」であってはならない

        若い男性は不平等に気づきつつある23日、『毎日新聞』の「Z世代男性の3割、平等推進は「やり過ぎ」 他の世代の1.5倍」という記事が話題になった。 フランスの民間世論調査会社が〝すべてのグループの人々の平等を促進する試み〟について※、「やり過ぎ」から「さらにもっと前進させる必要がある」の5段階と「分からない」の6つの選択肢で問うたところ、日本のZ世代(1996~2012年生まれ)の若い世代の男性の3割が「やり過ぎ」と回答したという記事だ。「最も不平等、不公正な扱いを受けている

        • 『刑法入門』の読書メモ

          『刑法入門』を読みました「旦那デスノート」という悪質なウェブサイトが存在する。そこでは「夫を殺す方法」が公然と紹介され、多くの実践報告が投稿されている。私のX(Twitter)を見てくださっている方はご存じのように、私は最近、この問題に取り組みつつある。 この問題に対応するために、色々と調べて泥縄式に知識を詰め込んでいる。前回の記事でも書いたように、「知は力なり」だ。戦うためには、知らなければならない。 犯罪について専門的な書物を読むためには、その前提となる初歩的な知識を

        現代日本のジェンダー格差(解説)

          真理が男性を解放する

          理論を持つということフェミニズムという思想が現代社会においてどれほどの影響力を持っているか、今さら多言を要しないであろう。望むと望まないとに関わらず、まず、その現実を直視することが必要である。 「フェミニズムという思想」と言っても、それは一つの思想と言えるほど一枚岩とは言えないし、そのうちの少なからぬ割合が驚くほどめちゃくちゃであることは少なからぬ人が認識しているであろう。しかし、なんだかんだ言ってフェミニズムも「学問」をやって理論を唱えて今の状況になっているのだ。 男性

          真理が男性を解放する

          ひまそら大躍進と蓮舫惨敗は、マッキノン・ドウォーキン主義の終焉を告げる

          この記事の要約ひまそらあかねが大躍進したのも、蓮舫が惨敗したのも、人々が表現の自由を求めているからだ。表現の自由を脅かすマッキノン・ドウォーキン主義を排除しないならば、リベラル派に未来はない。 小池百合子の三選昨日7月7日、東京都知事選挙の投開票が行われた*1。56人という過去最多の候補が立候補する異例の選挙であった。 裸の女性のポスターを貼る候補がいたり、政見放送で脱ぎ出す若い女性候補がいたり、NHKから国民を守る党が24人を擁立してポスターのスペースを転売し出したり、

          ひまそら大躍進と蓮舫惨敗は、マッキノン・ドウォーキン主義の終焉を告げる

          「戦後最大の人権侵害」の精神は、この社会に巣食い続けている

          一昨日7月3日、最高裁は旧優生保護法が違憲であったとし、強制不妊を施された被害者に対する国の賠償責任を認めた*1。 旧優生保護法による強制不妊は「戦後最大の人権侵害」と言われる*2。この人権侵害の被害者に対する賠償責任が認められたことを、まずは喜ぼう。 しかし、この法律が当時のフェミニズムの隆盛によって誕生した、フェミニズムの申し子であったことを無視したままでいいのだろうか? 1946年、戦後初の衆議院選挙で、初めて女性の国会議員が誕生した*3。そのときに当選した議員の

          「戦後最大の人権侵害」の精神は、この社会に巣食い続けている

          紙一重の問題

          Enpediaの記事数が10万本を突破したという。(一回10万本を超えてから著作権侵害の疑いのある記事を削除してもう一回10万本を超える、というようなドタバタな10万本達成だったらしいけれど。) 先日、Enpediaを始めた記事を書いた。それ以降、特に「男性差別」の項目にちょこちょこ手を入れて成長させている。 当初は6,981バイトだったが、現在は104,056バイトで、Enpediaの記事の中で92位と、トップ100入りの長さになっている。 最近は「弱者男性」を題名に

          紙一重の問題

          女性支援など必要ないと、叡実ならば言うだろう

          『方丈記』で有名な鴨長明(かものちょうめい)が編纂した『発心集』(ほっしんしゅう)という本の中に、こんなエピソードがある。あらゆる古典のエピソードの中で、私が最も好きな話だ。 天皇なんか私が助けなくていいと、叡実は言った。ここでいう「天皇」は、現代ならば「女性」だろう。 叡実の時代と同じく、飢えたホームレスは現代にもいる。そして、そのほとんどは男性だ。令和5年の調査では、ホームレスの約91%が男性である。(「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について」による

          女性支援など必要ないと、叡実ならば言うだろう

          制度史を少しばかり覗く

          とりとめもない断想。 1現代の法や社会制度の仕組みもなかなか難しくて、色々見ながらジェンダー平等を目指していかなきゃいけないと、思う。 一方で、日本では明治時代になるまで奈良時代に作られた養老律令がいちおう形式的には有効だったりしたし、現代の習慣や法律も各国にそれぞれの事情があり、そういうものも参観しないといけない。明律は明治時代にも法整備のために参照されたそうだ。 ウル・ナンム法典に始まり、ハンムラビ法典、ローマ法、律令、イスラム法(シャリーア)、色々な法や社会制度が

          制度史を少しばかり覗く

          日本人女性の声はなぜ高いのか

          俗説とデータこんな俗説をしばしば聞く。 「日本人女性の声が高いのは、日本の男尊女卑やロリコン文化のせいだ!」 この俗説は頻繁に繰り返され、再生産されている。 これについて2年ほど前の須藤玲司氏の連投に面白く有益な情報が含まれていた。Erik Bernhardsson氏はブログで、様々な言語話者の声の高さを比較している。 比較のため、Bernhardsson氏のグラフから日本語話者と英語話者の部分だけを抜粋してみよう。確かに日本語を話す女性の声は高い。しかし、日本語を話

          日本人女性の声はなぜ高いのか

          科学とジェンダー

          女性優遇のアファーマティブ・アクション現在日本で行われている女性優遇のアファーマティブ・アクションに対して、「年輩の男性研究者が自分たちが不当に得てきた利益のツケを若い男性研究者に払わせている」という見方を、ネット上でよく見るようになったが、この見方は間違いだと思う。 現在日本で行われている女性優遇のアファーマティブ・アクションは、「男性プラス1、女性マイナス1」を「男性マイナス1、女性プラス1」にする、というような性質のものではない。「男性プラスマイナスゼロ、女性プラスマ

          科学とジェンダー

          年金格差は存在するか

          昨日3月8日の国際女性デーに際して、『東京新聞』がこんな記事をネットに載せた。 女性の年金受給額は男性の3分の2であるという煽情的なタイトルで、あたかも高齢の女性が(男性に比べて)不利な状況に置かれているかのように書き立てている。 1詳しく裏取りをして検討をする余裕はないので、この記事の内容をざっと眺めてみよう。 この記事では「65歳~69歳」から「85歳以上」まで5歳ずつに年齢層を区切り、「単身高齢世帯の公的年金・恩給給付の年間受給額」の男女差を示している。男女差が最

          年金格差は存在するか

          半年後の自分への置き土産

          というなんともエモーショナルなタイトルをつけてみたが、本当に自分のための置き土産なので、別に私以外の誰かが読んで面白いものではないだろう。ただのメモである。 長い前置き先日、男性差別の現状を記述するためにエンペディアを始めた。エンペディアに加筆するために男性差別の現状をちまちまと調べ始めたところ、これはちょっとやそっとの仕事ではないぞ、ということに気づいたのだった。マスキュリズムは「男性差別の可視化と撤廃のための学問」にならなければならないと常々思ってきたが、まさにこの種の

          半年後の自分への置き土産

          エンペディアはじめました――あるいは茂澄遙人さんの追憶――

          エンペディアはじめました「謎の百科事典もどき」エンペディアでの執筆を始めました。 今のところ「男性差別」「性犯罪の冤罪」「マスキュリズム」の3つの記事を作りました。我ながら、まあそれなりにいい仕事をしたんじゃないかと思います。 特に「性犯罪の冤罪」の項目には、色々ご存じの事例を追加していただけたりなんかすると幸いです。 茂澄遙人さんの追憶少し前までインターネットで活動していた人に、茂澄遙人さんという人がいました。いつのまにか見ないなと思ったら去年の4月にTwitterの

          エンペディアはじめました――あるいは茂澄遙人さんの追憶――

          生きよう

          本居宣長は「この世に死ぬるほど悲しきことは候はぬなり」(この世に死ぬことほど悲しいことはないのです)と言った。ここを出発点にしよう。死ぬことほど悲しいことはない。誰も、好き好んで死にはしない。この当たり前のことが、こと男性の命に関しては忘れられている。だから何度でも言わなければならない。死ぬことは悲しいことだ。 この世には様々な死がある。たとえば、戦争に駆り出される死がある。 与謝野晶子は「すめらみことは、戦ひに おほみづからは出でまさね」(天皇陛下は戦争にご自身でお出ま