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ビジネスでは演繹法よりも帰納法の方が説得力・納得感を出しやすい?

最近社内研修で聞いた「演繹法よりも帰納法の方が説得力・納得感を出しやすい」という話が個人的に面白かったので、シェアします。

ビジネスにおいて演繹法で考えるのは難しい

演繹法は筋道を立てて物事を考える・説明する際の最も基本的な思考法であり、(演繹法という名前をおぼえているかは別として)学校教育や企業のロジカルシンキングの研修でも必ず習っていると思います。

しかし、ビジネスにおいて演繹法で考えるのは、中々難しいのです。

演繹法で提案をしてみる

例えば、「X社にAシステムを導入すべきだ」という提案をするとしましょう。演繹法を用いる場合、次のようになります。

X社は〇〇という課題を抱えています。(前提①)
〇〇という課題はAシステムで解決することができます。(前提②)
X社はAシステムを導入すべきです。(結論)

演繹のみによる提案

…あまり説得力・納得感がないのではないでしょうか?ビジネスで演繹法を使う場合、難しいポイントが2つあります。

1つ目は、前提を「絶対に正しい」を言い切るのが難しいという点です。演繹法は前提が正しいことが必須ですが、例えば上記の前提①は、提案する側の認識ではそうかもしれませんが、X社が否定すれば、①を前提とのするのが難しくなります。そのため、①を結論として導くための、さらに別の前提(根拠)を準備しておく必要があります。

2つ目は、結論に至るのに必要な前提を網羅するのが難しいという点です。上記の場合、仮に前提①、②が正しくても、これだけで本当に結論にたどり着くでしょうか?少なくとも次のような前提が追加で必要になるでしょう。
前提③: X社が抱える課題のうち、〇〇は他の課題よりも優先度が高い
前提④: 〇〇という課題を解決する方法は様々あるが、Aシステムが最も費用対効果が高い

帰納法は説得力・納得感が出しやすい

一方で、ビジネスでは、帰納法を使うことで、説得力・納得感を出しやすくなります。

帰納法で提案をしてみる

帰納法で「X社にAシステムを導入すべきだ」という提案をしてみます。

Aシステムは同業他社のY社で導入されており、高い費用対効果があったそうです(事象①)
Aシステムは同業他社のZ社でも導入されており、同様に高い費用対効果があったそうです(事象②)
また、Aシステムはガートナー社の調査でも高い評価を得ています。(事象③)
そのため、Aシステムを導入すべきです(結論)

帰納法のみによる提案

先ほどと比べると、より説得力・納得感があるのではないでしょうか。前例や実績に頼る帰納法は、特にリスクを取りたがる人が少ない日本では効果的と言えるでしょう。

帰納で前提を導き、前提を組み合わせて演繹で説得する

この記事を書きながら気づいたのですが、帰納法のみによる提案も、不十分ですね。実際に提案を行う際は、帰納法により導いた(正しい可能性が高い)前提を演繹法でまとめることが多いように感じました。

次のようなイメージです。

X社と同業他社のY社もZ社も、〇〇という課題を抱えているそうです。そのため、〇〇という課題は業界共通の課題で、X社にとっても同様に課題だと考えます。(帰納法による結論① = 演繹法の前提①)
また、Aシステムは、〇〇という課題の解決のためのシステムとして、ガートナー社の調査でも高い評価を得ており、デファクトスタンダードになっています。さらに、Y社・Z社でも導入実績があり高い費用対効果を得られていることがわかっているため、X社においても導入効果は高いと思われます。(帰納法による結論② = 演繹法の前提②)
そのため、X社はAシステムを導入すべきです。(演繹法の結論)

帰納と演繹を組み合わせた提案

帰納法で導いた結論が素晴らしいとは限らない

帰納法は既に観測された事象から結論を導くため、前例や実績を大事にする、安全第一の領域では効果的で、説得力・納得感が高い考え方と言えます。

一方で、イノベーションが求められるような場合には、前例や実績に基づく結論は、退屈に感じられるかもしれません。このような場合には、他の思考法が効果的です。

アブダクション

観測した事象から、それを最もうまく説明できるような仮説を立てる考え方です。先ほどの例だと次のようになります。

X社と同規模の同業他社のY社もZ社も、〇〇という課題を抱えているそうです。(事象①)
一方、X社より小規模の同業他社のW社では、〇〇という課題は発生していないそうです。(事象②)
そのため、X社とW社の違いを分析することで、〇〇という課題の根本原因を取り除く施策を見つけ、同規模の同業他社であるY社やZ社と差別化できると考えられます。(仮説)

アナロジー

ある領域の知識・結論を他の領域に転用します。先ほどの例だと次のようになります。

<帰納と演繹を組み合わせた場合の例を前提として>
一方、多業種のW社でも同様の〇〇という課題を抱えていたようですが、システムAの導入よりもよりコストの低い施策Bで解決したそうです。
X社においても施策Bが適用可能かを調べましょう。

以上です。

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