ラミ・マレックにメナ・マスード、国際的エジプト系俳優の共通点は?
5/21には実写版『アラジン』、そして明日、6/4には『ボヘミアン・ラプソディ』と金曜ロードショーにてエジプト系俳優出演作の放送が続きますね!
ということで、今回はこの2作品の主演俳優、ラミ・マレックとメナ・マスードの共通点を取り上げたいと思います。
これから放送される『ボヘミアン・ラプソディ』をご覧になる際にも、きっと、さらに深い見方ができると思いますので、ご一読いただけたらうれしいです。
ラミ・マレックとメナ・マスードの共通点とは?
『ボヘミアン・ラプソディ』のフレディ・マーキュリー役でアカデミー主演男優賞に輝いたラミ・マレックはエジプト系アメリカ人、アラジンのメナ・マスードはエジプト系カナダ人です。
2人の共通点は、ともにコプト正教会の家系であること。
コプト正教会とはエジプトで発展したキリスト教のひとつです。
エジプトといえばムスリムの国のイメージがあると思うので、キリスト教徒の方も暮らしているというのは、少し意外ではないでしょうか。エジプトの場合は、他のムスリムが多数を占める国とは異なり、日本でも世界的にもファラオ時代のイメージが強いので、そもそもイスラム教のイメージが薄いかもしれませんね。
コプト教徒がエジプトの人口に占める割合は約1割。憲法では信教の自由を保障しており、基本的にはムスリムとコプトの間で差別はないことになっていますが、やはり少数派であるということで、微妙な立場に置かれることもあるようです。
ちなみに、エジプトのコプト教徒について描いた映画で『エクスキューズ・マイ・フレンチ(La Moakhza)』という作品があります。
小学校を舞台とすることで、イスラム教徒とコプト教徒の関係というデリケートなテーマに切り込んだ見事な作品です。日本でもイスラーム映画祭で上映されたことがあります。現在はなかなか日本で見る機会がないのですが、予告編だけでもぜひご覧ください。
【物語】
父親を急に亡くしたコプト教徒のハーニーは、経済的理由から無償の公立校に転入するものの、 周りが全員ムスリムのため素性を隠すことに。 ハーニーは持ち前のバイタリティで少しずつ学校になじみ、親友もできるが…。
出典:http://islamicff.com/ex_movies.html
この作品の中でも主人公家族が移民を考えるシーンがありますね。
移民として
そこまで明確ではないのですが、メナが語ったところによると、彼の両親がカナダへの移住を決めた背景にはコプト教徒であることも関連しているようです。
When asked why his family left Egypt, Massoud stated, "we're Coptic Christian and my parents just felt like things were getting a little too dangerous when I was growing up in Egypt. They wanted to create a better life for their family so they decided to emigrate to Canada."
拙訳:なぜ彼の家族がエジプトを出たのか聞かれたとき、メナ・マスードは「私たちはコプト教徒で、両親は私がエジプトで育っていたときに少し危険過ぎると感じたようです。両親は家族のためによりよい人生を手にするために、カナダに移民することを決めました」
出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Mena_Massoud#:~:text=Massoud%20was%20born%20in%20Cairo,he%20was%20three%20years%20old.&text=They%20wanted%20to%20create%20a,decided%20to%20emigrate%20to%20Canada.%22
ラミ・マレックの場合は、旅行代理店で働く父が西洋に憧れを持っていたことを移住の理由として語っています。
Malek explains that his dad, Said Malek, was fascinated the opportunities in the west: “My dad was working as a travel agent there, and he would pick up visitors from the west. Through them he saw this other world that existed and he was fascinated by it.”
拙訳:マレックは、彼の父、サイード・マレックが西洋での機会に魅せられていたことを語りました「私の父はエジプトの旅行代理店で働いており、西洋からの旅行者と接していました。彼らを通じて、父は他の世界が存在していることを知り、それに魅了されていったのです」
出典:https://nilefm.com/celebrity/article/2291/rami-malek-s-mom-didn-t-want-to-come-to-america
彼らは、エジプトでも、移民先でもマイノリティという立場に当てはまります。それが演技にも大きく影響しているようです。
ラミ・マレックが『ボヘミアン・ラプソディ』のフレディ・マーキュリー役でアカデミー賞主演男優賞を受賞した際のスピーチにもその想いが強く表れていました。
ラミは、自分がエジプト移民の息子であることにふれ「アイデンティティに悩み、自分の声を見つけようとしている全ての人へ。聞いてください。僕たちは、悪びれることなく彼自身として人生を生きた、移民で、ゲイの男性についての映画を作りました。僕が今夜皆さんと一緒に、彼とその物語を祝福しているという事実は、こうした物語を僕たちが切望しているということの証しです」
出典:https://www.cinematoday.jp/news/N0109780
フレディもザンジバルの革命暴動から逃れるため、家族とともに難民としてイギリスにやってきたという背景がありますもんね。
作品選び
近年は多様性を重要視するようになってきたハリウッドでも、まだまだステレオタイプに基づいたキャスティングが行われており、ラミやメナの作品選びにも苦労があるようです。
アラジン役を演じることについてマスードは「テロリストでもなく悪いイメージもないキャラクターをついに演じることができることに興奮している。アラジンにはとても良いイメージがある。感動的な映画の、感動的な役だ。そんな役をついに演じられることにとても興奮している。」と語った。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%8A%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%89
ラミ・マレックの場合も、やはり出演作選びには最新の注意を払っているようで、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の悪役を演じるにあたって、こんなエピソードがあります。
『007』シリーズだからといってすぐさまオファーに飛びついたわけではなく、フクナガ監督に確認したことがあったという。
「キャリーに言ったんだ、“この役を、特定の宗教やイデオロギーを反映したテロ行為をする人間にはしたくない。そういったことを僕は楽しめない。もし、そうした理由で僕が候補になったのなら、数に入れないでくれ”って。でも監督には、明確に違うビジョンがあった。この役は、これまでとは違うタイプのテロリストになっているよ」
出典:https://www.cinematoday.jp/news/N0109780
やはり宗教的な背景を持つテロリストの役がオファーされやすい、ということはアラブ系の顔立ちを持つ俳優全般に対して起こっていることだと思います。メナやラミのような、すでに人気も評価も手にした俳優がそれを受け入れてしまうと、ステレオタイプなキャスティングに歯止めが効かなくなってしまう…という想いがあるのではないでしょうか。
アラブ系のみならず、アジア系、アフリカ系など様々な背景を持つ俳優たちにも関わる問題ですし、あとに続く俳優たちのためにも責任を持って役選びをされているのだと感じます。
ということで、今回はエジプト系俳優たちのマメ知識をお伝えしました。『ボヘミアン・ラプソディ』の鑑賞がさらに胸アツなものになればと思います。
私自身エジプト出身でもなく、夫はエジプト出身ですが、そんなに宗教に対して熱心でもないので、私の立場で書いてよい話題なのか、エジプトが差別的な国と捉えられてしまわないか懸念もあったですが、どこの国にもそういった問題はあるので、自分の周りを振り返るきっかけになればと思います。
また、『エクスキューズ・マイ・フレンチ(La Moakhza)』のような意欲的な作品が作られていることも、ひとつの希望だと感じます。
それでは、ぜひ明日6/4金曜21:00から、金曜ロードショーにて『ボヘミアン・ラプソディ』をお楽しみください!
今回もはぴびのおしゃべりにお付き合いいただき、ありがとうございました!
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