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【簡単あらすじ】星詠師の記憶(微ネタバレ)【阿津川辰海/光文社文庫】


ある人物の悪意が、数十年後の人物を害する。

人の執念の恐ろしさを感じさせる作品です。


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『はじめに』
もう9月というのに毎日最高気温は30度を超えるような猛暑日が続き、体力が削られ、外出どころか何もしたくないと考えてしまうような日々が続きます。
しかし、外出を控えるようになったということは、逆に考えると家の中でエアコンを起動させ、傍に飲み物を持ってくると外の雰囲気に全く影響されない、絶好の読書シチュエーションになります。
ですので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。このレビューを読んだことで、作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

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通常のミステリー作品であれば、「容疑者の殺害シーンが映像として残っている」という状況は、(その映像をいじっていない限り)ほぼ100%有罪が確定します。
しかし、それが「予知により紫水晶に記憶されている映像」という設定であれば、100%とは言い切れない状況になってしまいます。

さらに、この映像は電子機器により記憶されたものでは無いため、写っている映像は「見たい部分がはっきりしていなかったり・尺が短かったり・いつのことか分からなかったり」などします。

その部分を、主人公・獅童や容疑者を師匠と仰ぐ少年・香島たちが、様々な可能性を考え・可能性を潰しながら真相に辿り着く流れは、多くの方が一気読みしてしまうほど魅力的だと思います。

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阿津川辰海さんの多くの作品は、舞台設定の珍しさ・楽しさと、主人公やその周辺の登場人物の心理的葛藤が、上手く絡み合っているところがとても魅力的です。

簡単にまとめると、論理的な部分(殺人トリック等)と非論理的な部分(登場人物の心情等)が絶妙に混じりあい、一つの作品を作り上げています。

つまり、「ロジックを積み重ねた緻密なミステリーが好きな方」も、「昔ながらの人間味のあるミステリーが好きな方」も、どちらの性質を持っている方も楽しめるのが、阿津川辰海さんの作品だと思います。

大小の伏線を散りばめ、それを綺麗に回収していく作家さんの代表は伊坂幸太郎さんだと思っていますが、そちらとはまた別な読了感を味わわせてくれる作家さんです。

Xを見ると、とても忙しい日常を過ごされているようですが、体調に気をつけ出来るだけ長く執筆活動をして頂きたいです。




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