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【簡単あらすじ】私が大好きな小説家を殺すまで(微ネタバレ)【斜線堂有紀/メディアワークス文庫】




『どうか、遥川悠真を殺さないでください』

家庭の事情で自殺を決意した小学生・幕井梓は、
自宅近くの踏切まで来たが体が動かず、自分の足元だけを見ていた。

「迷惑なんだよね」

その時、偶然持っていた小説の作家・遥川悠真から声をかけられた梓は、自殺を思いとどまり、そして、二人の半同棲生活が始まる。

少しずつ才能が枯れていく天才小説家と、
成長し、ある才能に気づく少女。
不自然な半同棲生活を送る二人の行く末は…

「――見てるからね」
列車が来る。

『はじめに』
ついに梅雨入りが発表され、気温がだんだんと上昇することで日常生活が不快に感じることが多くなっています。
私の地域でも最高気温が30度を超えることが増え、不要不急の外出は減らしている時期ですが、エアコンを起動し、自室で飲み物を飲みながら読書をするという、絶好のシチュエーションを得られる時期が到来したとも言えます。ですので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。
この感想で、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

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憧れの相手が見る影もなく落ちぶれてしまったのを見て、「頼むから死んでくれ」と思うのが敬愛で「それでも生きてくれ」と願うのが執着だと思っていた。
だから私は、遥川悠真に死んで欲しかった。

P14

最序盤に書かれた上記文章で、一気に引き込まれた作品です。

実際に才能を持っており、さらに見かけも伴う天才小説家・遥川悠真。

家庭の事情で、世間一般的な・普通の子供時代を送ることすら出来ていない小学生・幕井梓。

どちらも、見た目・他人から見た外見はともかく、内面に関しては、大きな足りないもの・大きく欠けているものがあります。

その二人が、悪意からではなく、そうすることが当然であり・当たり前のように、支え合って・補いあっていこうとする半同棲生活をスタートさせます。

しかし、ある出来事がきっかけとなって、不思議な半同棲生活が少しずつ変容していき、それが修復不可能なところまで進んでしまいます。

その際に取った・取っていた二人の行動の結末は、寂しさというか、やりきれなさを感じた読了感でした。

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天才小説家(若者)と小学生女子の半同棲。

このシチュエーションは、少し人を選ぶかもしれません。

しかし、読了後に「物語の結末とそこに至るまでの経過」を振りかえると、この登場人物のこのシチュエーションが最適解だったことが分かると思います。

また、作品中の同じ言葉・同じ記述でも、その時のシチュエーションによって内容は全く違い、場合によっては、正反対の性質を持っている場合もあります。

そういった表現がとても上手で綺麗な作品でした。

「先入観」や「イメージ」で食わず嫌いしている方は、損してますよ!

と言える本作品を、是非読了ください。

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