サステナブルフードバリューチェーン2025-2035 概論 第2章 キーテクノロジー&ビジネスモデル

世界市場で進展するキーテクノロジー&ビジネスモデルのイノベーション

サステナブル・フードサプライチェーン2025-2035 市場環境変化は、キーテクノロジーとビジネスモデル変革の双方が車の両輪となりイノベーションをもたらす。 欧米先進国のみならず、食品市場拡大が著しいアジア太平洋地域、さらには、アフリカ諸国等の途上国でその動向が顕著に現れる。 注目すべきイノベーションには以下が挙げられる。

バイオ/アグリテック: サプライチェーン川上・川中領域

〈キーテクノロジー開発〉

◆ 遺伝子組換え種子、種子バンク(生物多様性のための種子遺伝子ライブラリー)、気候変動下で生産性維持・向上に資する農業インプット技術への開発投資は継続的に進むと予想される。

◆ 具体的には、精密デジタル農業技術、微生物土壌改良技術、バイオスティムラント技術、等)の領域で、多国籍アグリテック企業による巨額R&D投資が積極的に行われている。

〈ビジネスモデル変革〉

◆ 有機農業モデル、高生産性/食料安定供給を最優先する農業モデル(遺伝子組換え種子による穀物生産)、化学肥料・農薬削減による地球環境保全(水質、土壌、等)に資する農業モデルの創出・増加が予測される。

◆ Carbon Farming 、Regenerative Agriculture(再生可能農業)と呼ばれる、GHG排出抑制、自然・農地・畜産牧草地由来の炭素固定に資する農業モデルの開発が注目すべき課題となっている。

フードテック: サプライチェーン川中・川下領域 

〈キーテクノロジー開発〉

◆ Block-chain技術に基づく食品トレーサビリティシステム開発: 食の安心/安全(リコール対策含む)を担保するための食品製造・加工・輸送のトレーサビリティ技術。 フードサプライチェーンの当事者プレイヤー(食品原料調達、加工サービス、製造、物流、輸送、小売、外食・ファーストフードチェーン等)の業界横断的な開発・運用体制が必要となるイノベーションが進展することが予測される。

◆ 代替プロテイン食品開発: サステナブルフードテックの中でベンチャー投資が最も活発なキーテクノロジーのテーマ。2025-2035の時間軸で、世界のプロテイン食品の10-20%が、PLANT-BASEDプロテイン等の代替プロテインにより置き換わるとの予測もある。食品産業の最大の成長戦略テーマの1つとなる。

◆ 消費者ダイレクトAIデータ分析: 食品メーカーのDX戦略の中で盛んにR&D投資が進められている。 消費者動向の把握のための消費者ダイレクト仕組み構築とAIデータ分析が、食品メーカーの商品開発に占める役割がさらに大きくなると予測される。

〈ビジネスモデルの変革〉

◆ 栄養プロファイリング・:商品開発・原料調達・販売等のビジネスプラックティスの中で、栄養価重視+食品業界企業のESG対応の評価基準の構築
が進むであろう。

IoT/AIテック: 川上~川下の全領域 

〈キーテクノロジー開発〉

◆ アグリテック企業が農業生産者に提供するDigital Agriculture技術: フィールドモニタリング(栽培生育状況の把握)、最小限の潅水量、肥料投入量削減のための精密農業、リモートセンシング/ドローンの画像データ分析、IoTデータ分析等のデジタルアグリカルチャー。 同技術を提供者には、穀物種子企業、農機メーカー、アグリテックソルーション企業が含まれる。

◆ ICTベンダーが提供するIoT/AIクラウド技術: インターネットアクセスの悪い世界の農園地帯でのインターネットコネクティビティ環境の提供、上記の農業インプット企業&生産者向けのPublic Cloudサービス、Block-chain, AI/Machine LearningアルゴリズムのAPIが含まれる。

サステナブルフードバリューチェーンの論点の事例

◆ キーテクノロジーのディファクト標準支配がフードバリューチェーンで進展するか?
ICT領域では、GAFAに代表される巨大多国籍企業によりキーテクノロジーのディファクト標準支配が進んでいるが、フードバリューチェン領域でのディファクト標準出現は進んでいくのか?

◆ キーテクノロジー開発競争、地政学的な覇権争いは顕在化するのか?
ICT領域(5G/AI等)では、米中のキーテクノロジー開発競争が、地政学的な覇権争いにエスカレートしているが、サステナブルフードバリューチェーン領域では、それらの地政学的な覇権争いは想定されているのか?

国内課題 フードバリューチェーンのありかたを「幸せ」の観点から考察
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