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怒りが教えてくれること

NVC(*注1)の創始者Marshall Rosenberg(マーシャル・ローゼンバーグ)博士が書いた「怒りが教えてくれること」を読みました(本の日本語タイトルはわたしの意訳です。原題は『The Surprising Purpose of Anger』。直訳は『怒りの意外な目的』かな)

2023年3月追記
2023年3月21日にKindleで日本語訳が出ることになりました。紙の本もオンデマンド(POD)で追って出版される予定です。

注1:NVCはNonViolent Communicationの訳で、日本語では非暴力コミュニケーションと呼ばれています。共感コミュニケーションとも呼ばれます。
詳しくはこちらをご参照ください。

この本に書かれている内容をNVCを知らない人にも利用しやすい形でかいつまんで紹介することを試みつつ、全く触れないのも私には難しいのでNVCに触れながら書きます。とはいえ、本の内容全部は網羅していないので、ここに書いてあることは一部であることをご理解ください。

この本は現在、日本語訳がでていないので、もしこの内容を読んで役に立ったと思ったら、アマゾンのこのページからキンドル版(¥519)をご購入ください。
紙版を手に入れたい!と思ったら、こちらからご購入(¥809)ください。CNVC(NVCを取りまとめている中央機関)の運営資金になります。
(金額はアマゾンジャパンの2020年11月10日現在の価格です)

日本語訳が出たら、またここにリンクを貼ります❤️

まず、怒りについて4つのステップがある、と書いてあります。
(あ、その前に「これは1人だけがやっても効果がある」とも書いてあります。つまり、当事者が二人とも、または全員これを実践する必要はありません)

ステップ1  怒りの原因と刺激(出来事)を分ける

同じ状況でも、人や自分の状態、状況によって同じ出来事に対する反応が異なります。これは、出来事に対する解釈や、それが自分の快・不快のどちらをもたらすか、が人それぞれ、そして状況によって異なるからです。

例えば、いきなり殴られたら、状況がわからなければまずはポッカーンとしますよね。それで、状況を把握して、相手が自分より弱そうだったら怒る、とか、強そうだったらなんとか丁寧に話して理由を聞こうとする(もしかして怖い、と思うかも)、とか、全員が全員、怒るとは限りません。

しかも、ある講座では「もし相手が、自分が大好きでいつも遠くから見ていた人だとしたら、『相手の視界に入って存在を認識してもらえた』と嬉しくなる人もいるかも知れません」と言っていて、それも可能性としてはあり得る、と思いました。

このように同じ出来事で必ず誰しもが怒るとは限らない、ことから、「感情の原因は出来事ではない」と考え、原因と出来事を分けます。

あなたの感情をコントロールするのは誰?

ステップ2に行く前に、ステップ1の「原因と刺激を分ける」に関連して、相手の言動を自分の感情の原因だとするということは、相手が自分の感情をコントロール出来ると言っているようなもの、と書かれています。

「あなたがバタンとドアを閉めると、わたしはイライラする」という場合、相手が「わたし」を怒らせたければ何度もドアをバタンと閉めればいいことになります。同じように喜ばせたり悲しませたりすることも出来ることになり、相手が自分の感情をコントロールしているように聴こえます。

でも、自分の感情は自分のもので、しかもそれは「バタンとドアを閉める」動作、態度を翻訳、解釈していて、そこから怒りやイライラが生じています。人によってはビクッとする人もいるし、頭痛があって静かにしていてほしいのを知っている時であれば自分の体を気遣っていないのか、と悲しくなることもあるかも知れません。

このように、その出来事をどう「捉える」か、解釈しているか、が刺激と原因の間に入り込んでいます。


ステップ2 怒りは自分の頭の中にある物語から来ている


刺激に対して人がやっていることは大きく分けて4つある、とありました。

① 個人的に受け取る
  相手が自分に対して思っていることがあってやっている、と考える

② 望んでいることがある(ニーズ)
自分がそこに期待していること、恐れていることがあるから、出来事が起こったまたは起こらなかったことによってネガティブな感情が生じた。そしてそれに対してそのネガティブな感情は相手の言動によるものだ、と考える

③ 相手が望んでいることがある(ニーズ)
相手が望んでいることがあり、それを満たすためにその言動をしている、と考える。この場合、相手が感じていることを感じようとしているために、怒りは感じない、と書いてあります。

④ 相手が悪い、と考える
どんな怒りの根底にもあるのがこの考え方だと書いてあり、物事には善悪があって、どちらかが正しくてどちらかが間違っている、という考え方から来ています。
本では、「怒りは『相手が悪い』という思考から生まれます」と書いています。

つまり、自分の頭の中で組み立てたストーリーでは「相手が悪い」となっているということ。そして相手が悪いと思うと、「罰を受けて/与えて当然」と思える。
ほんとうに「相手が悪い」んだろうか? そもそもその「悪い」を指摘して謝ってもらって気がすむんだろうか?
もし気がすまないとしたら、それは本当に怒りの原因なんだろうか?→相手の言動は刺激であって原因ではない。その二つを区別して分けること。

例えば、「わたしが怒っているのは、彼が〇〇をしたから」ではなく、「わたしが怒っているのは、彼が〇〇をしたことを□□と解釈したから」ということ。

「わたしが怒っているのは、わたしが自分に『(この状況が意味することが)□□である』と言っているから」と言ってみると、そこにその状況を解釈している、評価/ジャッジがあることに気づく、と書いてあって、わたしの経験からも確かに、と思いました。


ステップ3 相手が悪いのでなければなぜ?を考える

ステップ1&2を踏まえると、自分の怒りの原因は相手の言動ではないし、相手のせいでもありません。そしてそこにストーリーが入り込んでいるのも理解しています。

だとしたら、なぜ「わたし」はまだ怒っているのでしょうか?

それは、まだ「原因」に気づいていないからです。

怒りは他の感情もそうであるように、「そこに自分にとって大切なことがあるよ~」と教えてくれています(本ではアラームと呼んでいます)。

英語の感情という単語はいくつかありますが、その一つにemotionがあり、emotionの語源は「外側へ」+「行動する・させる」だと言われています。

感情は、外側へ表現したり行動することによって得たい何かがあることを教えてくれている、ということ。

これを、NVCでは、感情はそこに大事なこと(ニーズ)があることを教えてくれる、と言っています。(注2)

例えば、殴られた時に怒りが湧いてきたとしたら、そこには「失礼な!」とか「危ないだろ!」とか、「殴るのは悪いことだ!」という考えがあるとしたら、相手を責めても怒りが鎮まらないかも知れません。

その時に「失礼な!」だったら「大切にして欲しい」「存在を尊重してしい」だったり、「危ないだろ!」だったら「安全、安心が大事」だったり、「殴るのは悪いことだ!」だったら善悪を取り除いてそこにある望みに気づいてから「対話をして絡まった糸をほぐしたい=コミュニケーション、交流、理解し合いたい」などの「大事な質感(ニーズ)」があることにきづくと、どうでしょう?

ちょっとここで自分が怒ったときのことを思い出して、どんな質感を欲していたのか、そしてそれがなかったことによって怒ったのかも?と自分の心の中をみてみた時に、腑に落ちる感じがあるか、それとも相手が悪い!という考えが拭いきれずにいるか、探求してみてください。(怒ったときの刺激レベル、怒りレベルは1~10あるとしたらレベル2~3のもので試してください。そうでないと、その事に気を取られてこの先を読み進められないかも)

「相手が悪い!」がなかなか消えないときには、そこに「知ってもらう」や「嘆ききる」というニーズがある可能性もあります。

ちなみに、どのニーズもその出来事の当事者間以外でも満たすことができます。例えば、「知ってもらう」は、相手に知ってもらう以外にも安心して話せる相手に話して「それが本当に嫌だったんだね。そこに大切なニーズがあったんだね」と受け止めてもらうことで「知ってもらう」質感を育めることもあります。自分が怒ったときの例で他の人に話してみたりして試してみてください。

ここでおすすめワークとして、人は怒る時に頭に思い描いているストーリーや反応にクセがあるので「自分が怒るときのジャッジとその奥にある大事なこと(ニーズ)のリストを作成をする」というのが載っていました。

注2:リストになったNVCで言われているニーズはこちらからみられます。
人種、住んでいる場所、経済状況、性別、文化などに関わらず、人が普遍的に必要としている質感(英語ではこの「質感」をqualityやvalueと言います)を概念として捉え、言語化したものです。

ステップ4 ニーズにつながって相手と話す

ステップ3で自分が大事にしていること(ニーズ)に気づき、それが「そうだ、それが大事だったんだ」と腑に落ちたら(頭で考えるのではなく、本当に肚で感じてみてください)、相手に自分が大事にしていることを伝えます。

もし、行きすがりの人の言動で怒りが湧いたことを上で思い出していたら、その人とは二度と会わないかもしれません。もし同じ状況になったら今度はどう言いたいか、どんな行動を取りたいか、を考えてみてください。

ここで、「相手を責める」エネルギーではなく、「自分にとって、これが大事だということを知ってほしくて伝えている」というエネルギーで伝えることがポイントです。

「相手を責める」エネルギーが乗っていると、どんなに丁寧に優しく伝えたとしても、相手はそれを非言語の部分で感じ取ります。そして、罪悪感や怒られることへの恐れ、次回から気をつけないと関係性が壊れるんじゃないかという不安などから行動を変える可能性があります。

「行動を変えてくれるならいいじゃない」と思いますか?

「人を痛めつけたい、苦しめたい、と思う人は、
      自分がそうされてきている」のではないか         
                   - マーシャル・ローゼンバーグ

相手が変わる理由はどうであってほしいですか?

自分が逆の立場だったら、行動を変えるのであればどういう気持ち、立ち位置、在り方から変えたいですか?

ここでお誘いしているのは「相手の大事なことを尊重し、相手が快適でいられるサポートをしたい」「相手の人生が豊かになることに貢献したい」という気持ちからの行動をうながすようなやりとりです。

だから、相手に「わたしにはこういう自分にとって大事なことがあってね」と伝えるときにも、「わたしは相手の人生が豊かになることに貢献したい。だから私も相手も私たちの関係性を豊かにするためにこの話をしているんだ」という気持ちで相手と話すことをおすすめしています。

怒りで人を殺すのは表面的すぎる

上記の4つのステップの後、「怒りで人を殺すのは表面的すぎる」ということがマーシャルとワークショップ参加者とのやり取りの形で説明されています。

このやり取りを読んだほうがわかりやすいのですが、怒りで人を殺しても怒りがなくならとしたら、人を殺すのは解決策としてはあまりにも表面的だからではないか、というような切り口で上のステップを丁寧に説明しています。

また、ステップ2で書いた「怒りは『相手が悪い』という思考から生まれます」に加えて、「相手が悪い、相手が『自分の大事なニーズを私自身が大切に扱うことを妨げている』」と相手が自分の言動をコントロールしているかのように解釈していると、「相手が憎き敵」になり、「敵だからたおしていい、罰に値する」と考えやすい、と書かれています。

わたしが、なにげなくしたことが相手の大事なことを妨げた時に、わたしは罰せられるのがいいか、それとも話し合ってわかり合い、今後相手のことを尊重できるようになりたいか、と言ったら後者です。

そして、罰した人とより、話し合って気持ちよく相手の大事なことも自分の大事なことも同じくらいお互いに大切にできる人とのほうが関係性が築きやすく、豊かになることは容易に想像できます。

夫婦間ですら、長年のストーリー(解釈)や自分が大事に思っていることを伝え合わないことでイライラしたり、溝ができることが多々あります。
例えば、「いっつもそうだよね!?💢」っていうことはいつも伝え合えていない、話せていない、解消していないわだかまりがあるということ。

関係を良くしたい、継続したい人との間にこそ「表面的」でなく、心の奥から欲していることを伝えあって「自分が大事に思っていることを分かち合いたい」なぁ、と怒りの本から「自分が大事にしていること」に気持ちが向きました。

(この記事は全文無料で読めます)

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