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【投書】「持続可能なラーメン目標」(2022-05-06 山形新聞)

【原文】
 先日、ラーメンの年間消費額のランキングでトップを保ってきた山形市が新潟市に抜かれたというニュースが県内を駆け巡った。首位奪還に燃える業界人や愛好家も多いことだろう。

 だが、山形県は全国屈指のラーメン県であるとともに、塩分取りすぎの県でもある。県民の塩分摂取量は国の基準を上回っており、医療界や行政は減塩を呼びかけている。高血圧とそれにより起こりうる脳卒中の予防のためだ。

 ラーメン自体に罪はないが、人間のエゴで競うように食べて不健康・短命の日本一になってしまっては、ラーメンに申し訳が立たない。ラーメンが悪者にされ肩身が狭くなってしまうし、何よりラーメンを味わえる人生が縮んでしまう。近年は太麺人気が高まっているようだが、ラーメン人生は細く長いほうが幸せではないだろうか。

 ラーメンにも、「持続可能性」が大切なのだ。目先の食欲や利益ばかりを満たすのではなく、サステナブルにラーメンと付き合う社会を目指そうではないか。そのためにと考えれば、ラーメンを食べる頻度の目安を普及したり、健康志向のメニューを開発したり、愛麺家なら普段の食生活や運動でコンディションを整えるよう呼びかけたりなど、とりうる具体策が見えてくる。

 そのような取り組みを続けていけば、食べる人も満足、作る人も商売安泰、そして社会にも豊かなラーメン文化が育つという「三方よし」となるはずだ。「公益の祖」と称えられる酒田の偉人・本間光丘も喜んでくれることだろう。

 山形が誇るのは冷たいラーメンだ。トップ陥落のニュースで熱くなった頭をいったん氷で「冷製」、いや「冷静」にし、堂々たるラーメン王国として「持続可能なラーメン目標」を世界に提唱する使命があるのではないだろうか。

【紙面】


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