京都精華大学萌芽的研究助成(2020-2023)2020年度活動報告
(旧ブログに2023年2月12日に掲載された記事をアーカイブのために転載しています)
2020度は、新型コロナウイルスの影響をうけ、当初予定していた海外からのゲストを招いたワークショップや海外でのフィールド調査の実施はできなかったが、本研究の定期勉強会を立ち上げた。2020年10月にハイブリッド型での勉強会、そして2021年3月にはオンラインでの勉強会と、年度内に二回の勉強会(日仏逐次通訳)を開催し、国内外の研究分担者および研究協力者が参加した。
以上の勉強会に関しては、共同研究者および協力者に加え、本学の教職員、学生、また学外の興味をもった方々にも自由にオンラインで視聴してもらえるという形態をとり、それぞれ20~30名程度の参加者を得た。
研究会の内容としては、第一回勉強会では共同研究者の研究分野紹介および、セネガル、日本の宗教空間についての意見交換、研究枠組みや概念構築に関する意見交換が行われた。第二回勉強会では、共同研究者以外にもゲストを招き、『神秘主義と呪術』というテーマに関して、アフリカ・アジアそれぞれの知見や事例発表から意見交換を行い共通点や相違点などについても話し合った。それぞれの研究者は自らの個人研究を進めており、海外でのフィールド調査は実施できなかったが、報告やオンラインでのインタビューなどを進め、今後の出版を視野にいれて活動を進めている。 今年度は、研究会のウェブサイト(ブログ)を立ち上げ(https://resm2021.com/)、研究成果や記録映像、研究分担者のそれぞれの研究成果(出版・研究発表など)について随時公開をしている。
2020年度の研究計画
新型コロナ感染拡大などを経て、2020年度の後期に提出された研究計画(改正後)は以下のとおりである。
2020年度
勉強会…2回の勉強会の開催(2020年度の海外研究者の会議などへの参加は基本的にビデオ会議にて行う。国内の研究担当者については随時検討の上決定する)
本年度は研究担当者と研究チームを編成し、本学での勉強会を開催すると同時に、主に国内の研究担当者による京都市を中心とした国内フィールド調査(今後の研究展開へ向けた試験的な調査)を行う。その際に可能ならば空間や宗教、宗教建造物などに興味を持つ本学の学生も少人数参加できるようにする。
発表テーマについては研究担当者が各自選択し、第一回、もしくは第二回の研究会にて発表する。必要に応じて、研究担当者の推薦した研究協力者(博士課程の学生など)の参加や発表も奨励する。
研究のアウトプット … 2020年度の研究成果の発表方法として、研究会などは主に遠隔で行うほか、海外の研究担当者から送られた映像資料や音声資料、本研究に纏わる記録影像やインタビュー影像、実際の国内フィールド調査の様子の記録影像などを編集し、オンラインにて研究成果を共有する。
本助成申請は、上記のフィールド調査や勉強会の開催費、アウトプットとしての影像資料の編集等に当てられる。
外部資金への応募準備 … 本研究の研究担当者である清水貴夫が研究代表を務める「西アフリカ、イスラーム圏におけるライシテの歴史・民族誌的研究」と合同で科研費(基盤(B)ないし、国際共同研究加速基金)への応募を予定(本年2020年11月)しているほか、フランス、アフリカの研究機関(IMAF、サンルイ大学、アビジャン大学)との共同研究として、フランスの国立研究機構(ANR)の海外共同研究助成(4年間プログラムで一年更新可)の取得を目指す。
2020年度の研究活動
本年度は、それぞれの研究者が個別にフィールド調査など研究を進めると同時に、定期的に勉強会を開催した。
2020年10月24日 第一回勉強会(ハイブリッド開催)「現代社会空間と宗教性(アフリカ・アジアの事例から)」
第一回研究会の内容としては、共同研究者のセネガルのセネガル国立ガストン・ベルジェ大学講師であるフレデリック・ルボーと、慶應義塾大学の樫尾直樹がそれぞれ研究発表を行った。フレデリック・ルボーは、西アフリカにおける日本の『真光』の研究を行っており、国際化する宗教と現地の社会や風俗との共通性や日本の宗教が現地で信者を集めている理由、そして現代のエコロジー運動との関連などについて分析した。樫尾直樹は、本研究会で分析を進めるうえでの『宗教』および『宗教性』に関し概念整理を行い、スピリチュアリティや社会実践などを含んだ多様なレイヤーを含む宗教性について定義した。
また、今後の研究の展開の方向性として、アフリカ・アジアの異なる地域間の比較研究に含め、新たな概念整理として「宗教性」「スピリチュアル」などの異なる現状に関する段階的研究を行う方向性を確認すると同時に、今後の出版へ向けた動きなども打ち合わせをおこなった。
発表資料・発表動画 公開URL
■3月26日 第二回勉強会「神秘主義と呪術」
第二回研究会には、本学の堤邦彦先生をコメンテーターとして招き、研究分担者がそれぞれ「神秘主義と呪術」というテーマについて、自らの研究分野やフィールドからの情報や意見を出し合いディスカッションを行った。研究分担者に加え、ゲストとしてベナンの伝統宗教であるブードゥ教についての研究をしている映像作家、アルノー・ズフーをゲストとして招き、日本を含むアジアとアフリカにおける現代社会において、宗教や呪術がどのように人々の信仰や現代生活のなかに根付いているかについて比較を行った。
勉強会詳細
ウェブサイト(研究会ブログ)の設置と映像資料の公開
以上の二回の研究会の映像や情報共有やその他研究成果の発表のために、ウェブサイトをつくり、ブログを通して勉強会の記録映像および各種資料を随時公開している。また、研究分担者の発表してきた研究成果などについても、このブログを通して随時発表していく。
■科研費への応募
2020年度の科研費(基盤B)には、研究分担者である清水貴夫の「現代西アフリカにおけるライシテと宗教性の連続性の文化人類学的研究」と研究協力者(アドバイザー)のウスビ・サコを代表者とした「宗教性と現代社会空間」を合同ではなく別々の研究プログラムとして応募を行った。後者の「宗教性と現代社会空間」の採択はかなわなかったが、全社のライシテに関する研究プログラムが科研費Bを取得した。本研究チームでは学外資金の獲得へ向けて引き続き研究活動を進める予定である。
その他 研究会成果物
研究担当者の樫尾直樹が以下の書籍を出版した。
Carl Becker, KASHIO Naoki, Spirituality as a Way The Wisdom of Japan, Trans Pacific Press, 2021.
研究会ウェブサイトでの紹介記事
計画と実際の研究活動との相違点・その理由
実施できた点
一部オンラインを利用しつつ、二回の勉強会が実施でき、研究分担者同士の交流が可能となった。日仏逐次通訳により、本来海外から招待する予定だった研究者も、オンラインで参加でき、研究発表、報告会を通して研究交流ができた。
不採用ではあったが、科研費応募をすることができた。来年度引き続き学内資金獲得へ向けた研究計画の基盤ができたため次の応募につなげたい。
実施状況と課題
当初予定していたフィールド調査の実施は難しく、学生を引率し実際の授業へ反映できるような学生を巻き込んだ研究の場を作ることは新型コロナで難しかった。(オンラインの勉強会に関しては、本学学生も参加しており、事後アンケートで意見を出してもらっているため、こうした結果も公開していきたい)
改善点と今後の抱負
海外でのフィールド調査、また海外からのゲストを招いたワークショップなどの開催は実施できなかった。
2年目以降、フィールド調査が可能になった場合には、京都や関西圏を中心として、課外授業なども利用しつつ、本学の学生を参加させたフィールド調査の実施を行っていきたい。
特に本研究は、宗教性x現代空間という新たな研究設定を通し、文化人類学や宗教学、都市社会学など人文系の研究分野に加え、建築学、都市工学、ライフデザインなど本学の異なる学部の専門家の参加や交流を促進する。勉強会やワークショップには、研究担当者だけでなくそれぞれ異なる分野の教員や学生を招待し、積極的に議論に参加してもらうと同時に、研究成果に直接繋がる分析やアプローチ方法の面でも、学内の異なる分野の専門家との交流を通し、新たな研究メソッドの開発に努めたい。
共同研究機関であるサンルイ大学の「文明・宗教・芸術・コミュニケーション学部(CRAC)」の学生と本学の学生なども交えた合同のオンライン勉強会やワークショップができるか検討したい。
学外資金獲得へ向けて、5月の国際連携の応募を含め、引き続き検討する。
研究成果の公開状況
現在はまだ研究課程であり、まとまった成果の発表はないが、勉強会を学内に公開しているほか、映像記録や発表資料、研究分担者や代表者の出版情報などは、以下のブログで公開している。
新ブログをNoteで作成(2023年11月)
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