見出し画像

子育て支援が一番の経済政策だと思うが...

所得から手当へ再来?

 「所得控除から手当へ」2010年の民主党政権下で、中学生までの児童手当を創設した際に、中学生までの年少扶養控除を廃止した。

 そして今、2024年以降の少子化対策で児童手当を高校生まで延長する代わりとして、高校生までの年少扶養控除を、財源確保の観点から見直さざるを得ない風潮が強いらしい。

 端的に言えば、子どものために金をばら撒く口実で、子育て世帯の税制優遇なくして実質増税する。と言ったところである。

 富の再分配によって恩恵を受けるのは、いわゆる経済弱者とされている低所得者層で、往々にして高年収サラリーマンは貰える手当よりも、取られる税金の方が多くなる。

 所得格差を抑える意味合いでは、富の再分配はあっても良いと思うが、現状の日本社会では、国力が低下して所得格差と言えるレベルの格差が、生じない程度に全体的に貧しくなっていることから、一昔前の中流ですら高所得者扱いとなる。

 それも多くは個人ではなく、世帯収入で判断するものだから、年収700万円の専業主婦(夫)世帯よりも、年収400万円共働き世帯の方が、合算して800万円の扱いとなり、所得控除や手当などで不利に働く制度上の欠陥がある。

 好きで夫婦共働きを選んでいるのであれば、それでも致し方ないような気もするが、実態としては1人の収入での子育てが厳しかったり、子どもに少しでも良い環境で育てたい親心から、必要に迫られて共働きを選択している夫婦が大半だろう。

 それに子どもを育てるのに、共働き世帯の方が人的なリソースが圧倒的に不足する分、それを補うためにベビーシッターに始まり、延長保育、学童保育、外食、家事代行など、お金で時間や労力を買わざるを得ない傾向がある。

 そのため、公的な支援が抜け漏れやすい共働き世帯の方がお金が掛かり、公的な恩恵を享受しやすい専業主婦(夫)世帯の方が、マンパワーに余裕がある分、お金に余裕が生まれやすい矛盾が、現行制度でまかり通っている。

消費増税ではなく、社会保険料増で対応?

 労働力不足を補うために、政府が女性の社会進出を推し進めておきながら、税制や社会保障制度は未だに男は仕事、女は家庭が標準設定で設計されている。

 しかし、総務省の労働力調査で周知の事実となっているように、今や専業主婦(夫)世帯の割合は3割と少数派で、バブル崩壊後から共働き世帯が増加傾向にあるため、専業主婦(夫)世帯は減少傾向にある。

 その枠組みを変えることなく、失われた30年間放置し続け、ツケを将来の国民に先送りした結果が、昨今の税負担ばかりが重く、必要な人に必要な支援が行き渡らず、国民も少子化対策に期待しておらず、興味も示されない現状があるのではないだろうか。

 何にいくらの税金が使われているかも定かではなく、ブラックボックス化した財政で、全世代に平等に負担する消費税率を引き上げようものなら、多大なブーイングとなるため、現役世代のみ負担する社会保険料をしれっと引き上げる形で財源を確保しようとしているのが、姑息なように思える。

 実際に消費税が5%→8%→10%と引き上げられて、2014年と2019年にマスメディアや世間が騒いでいたが、その裏で社会保険料はしれっと引き上げられている。消費増税は国会の議決が必要だが、都合の良いことに、社会保険料の引き上げに国会の議決は必要ない。

 健康保険料率は2004年に8.2%だったものが、2012年に10%まで引き上げられ、厚生年金保険料率も2004年に13.93%だったものが、2017年にかけて段階的に18.3%まで引き上げられた。

 給与天引きで支払いが拒否できない、事実上の税金である社会保険料が干支が一周した辺りで6%以上も増加している。これらは月給+ボーナスの標準報酬月額を基準として、収入全体に一定割合を乗じる分、消費しなければ課せられない、消費税の5%増よりもタチが悪い。

 収入が変わらなければ、可処分所得は確実に減少するにも関わらず、マスメディアは大して騒ぎ立てることなく今に至る。

 そうして金融リテラシーを高めた勘の良い人から、闇雲に稼ぐと重税に押し潰される事実に気付き、個人事業やマイクロ法人、早期退職などでサラリーマンとして愚直に働かなくなる。そんな社会で果たして良いのだろうか。

養育にお金が掛かるからこそ経済が回る。

 20代半ばを過ぎたことで、親戚や同級生で親になる者がちらほら現れている。経済学部の友人はことあるごとに「資本主義経済を肌で感じる」と口にしているが、早い話がいくら稼いでも、お金が出ていくと言ったところだろう。

 高等教育にいくら掛けるかにも依るものの、子ども1人が大学を卒業するまでの、22年間の養育費を総計すると2,000万円〜3,000万円程度が相場とされている。

 少なめに見積もっても子ども1人につき、ざっくり年間100万円程度はお金を使う計算なのだから、子育てに対する不安を払拭して、子供が増えることで、1人あたり毎年100万円分の金銭消費需要が、20年前後の長期に渡り喚起される。

 コロナ禍での10万円給付や、物価高騰対策でのポイント還元や、プレミアム付き商品券の比ではない金額なのだから、経済が回って日銀が目指す需要喚起型のディマンドプルインフレも狙えるだろう。

 現に兵庫県明石市で子育て支援に舵を切ったことで、商店街は活性化し、財政も潤ったことで、世間の動きに逆行する高齢者のコミュニティバス利用の無料化に踏み切っている。

 人は文明社会で生きていく以上、否応にも金銭消費をするのだから、その頭数を増やす子育て政策が、一番の経済政策だと私は考える。

 そもそも子どもの絶対数が少ないのだから、行政が子ども手厚く支援する金額など、高齢者の医療費や年金に比べればたかだか知れている。

 それならば、みみっちく現役世代から原資をかき集めて、中抜きして再分配するよりも、投資的支出として、一時的に建設国債を発行する形で、負担を強いることなく財源を確保した方が、本気度が伝わるのではないだろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?