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貨幣経済の先入観を取り除く。


資本主義の欠点と、社会主義の長所。

 OECDが6月に公開した、世界の国別年収ランキング2022で、日本は21位となっている。主要38ヵ国中21位で、韓国に抜かれている現状から、日本の没落が嘆かれる。

 しかし、GDPで世界第1位を誇る米国が4位、第2位の中国に関しては、そもそも経済指標そのものがアングラで、主要38ヵ国から除外されているものの、推定で平均100万円台ではないかとの見方が強い。

 第4位のインドに関しても、中国と似たり寄ったりな傾向にあることから、日本はGDP世界第3位の期待感が先行したり、過去のバブル経済の栄光に引きずられすぎているが故に、経済大国の主要38ヵ国下位半数、G7でブービーであることに、文化人ほど不満を持つのではないだろうか。

 しかし、いくら著名なコメンテーターが不満を言ったところで、国民の危機感に直結しているとは限らない。パンピーの感覚では生活は苦しいが、革命を起こそうというよりは、政治を含めて現状維持を選ぶ傾向にあり、ネオ江戸時代と揶揄されるのは頷ける。

 イギリスのチャーチル元首相の名言で、「資本主義の欠点は、幸運を不平等に分配してしまうことだ。社会主義の長所は、不幸を平等に分配することだ。」と皮肉を効かせた言葉がある。

 現代日本の政治的なイデオロギーを、どう捉えるかは価値観の違いから人それぞれあって良いが、出る杭を打つ横並び意識で、中流の足を引っ張り、可処分所得の中央値が30年でジリジリと下がり、等しく貧しくなって不幸な姿は、個人的に社会主義の長所を見ている気分である。

経済的な豊かさと、幸福度は比例しない。

 日本人の幸福度が世界と比べて低いのも、そうしたムラ社会的なよそ者を排除する風土が未だに根強かったり、運動部にありがちな、自分たちが苦労したのだから、下の世代も苦労すべき的な苦労信仰が、社会全体に蔓延っていることが諸悪の根源に思えてならない。

 経済的に落ちぶれたと言われているものの、200近い国の中で見れば、紛れもなく豊かな筈で、FACTFULNESSには、70億人(出版当時)の世界人口で、1日あたりの収入が32ドル(ドル円が150円と仮定しても4,800円、年収175万円)を超える人は、世界中で10億人。

 つまり日本に生まれて、いわゆる生活を送れている時点で、世界人口の上位14.2%の暮らしぶりに位置する。それにも関わらず、1日あたりの収入が2ドルに満たず、電気はおろか、水道の生活インフラすらない、途上国で暮らす人々よりも、総じて将来を悲観的に捉え、日々暗い顔で過ごしている。

 国民性だと思う方は、戦前(明治〜大正時代)のモノクロフィルムを、現在の技術で着色して、カラー化した映像を見た上で、日本がどんよりとした国民性なのか判断していただきたい。

 当時の日本社会はアジアの小さい島国でしかなく、世界経済の中心は産業革命の地、イギリスで、アメリカは国別時価総額で2番目だった。余談だが、いつの時代も米国一強とは限らず、投資において米国株式だけを抑えておけば万全とは言い切れない。

 人口も、1人当たりGDPでも世界経済にインパクトがあったような国ではないが、それでもフィルム映像を見る限り、現代よりも活気に満ちているように思え、経済的な豊かさと幸福度は必ずしも比例するものではない。

貨幣経済から少し距離を置く生き方。

 裏を返せば、経済大国から徐々に遠ざかっている現代でも、捉え方次第では幸運な生き方を選べるポテンシャルが、さまざまな領域で存在するが、我々現代人がそれにまだ気付けていないだけの可能性すらある。

 そのひとつが足るを知り、貨幣経済の先入観をひとつずつ丁寧に取り除いていく作業を、時間を掛けて行っていくことではないだろうか。

 私はテレビを保有していないが、物価高や年金カットなどで、生活不安を煽るワイドショーが多く放送されていることは想像に難くない。不安を煽った方が購買欲が刺激され、CMスポンサーは広告効果で商品の売り上げ増が見込めるからである。

 テレビ局からすれば、番組制作費用を出してくれる、スポンサーの意向は絶対であり、スポンサーの商品に泥を塗るような番組が作られることはまずない。そうして大衆がCMの商品を買うことで、企業はテレビ局に広告を打ち、大衆はN○Kを除いて無料でテレビが観れる訳である。

 視聴は無料でもスポンサー経由で、間接的に民放にお金を払っている訳で、N○KにCMが無いのは、運営費用を視聴者に直接負担させている訳で、事業の収益構造を考える習慣を持てば、世の中のお金の流れを大雑把に捉えることは決して難しくない。

 そしてお金の流れを知ることで、我々はいかに企業のマーケティングにより感情を揺さぶられて、本来必要としていないモノを、あたかも必要かのように思い込まされているのかを、ある程度自覚できるようになる。

 その自覚こそ、貨幣経済の先入観を取り除く作業に他ならない。人ひとりが最低限生きていく上で、必要なモノなど思っている以上に少なく、買うモノが減れば出費も減り、自然と黒字家計に体質改善される。

 私は高卒正社員で手取り13万円の頃、先取り貯蓄で5万円差し引き、残りの8万円で生計を立てられるよう、衣食住に直結しない出費や、費用対満足度が低い家賃や保険などの固定費用を削減。

 酒代と飲み代など、効用がほぼ同じ出費を統合して、ブラックボックス化を防いだり、書籍・雑誌代を図書館の新刊予約で代替するなど、試行錯誤した結果、当初切り詰めてギリギリ収まっていた8万円で、今は2ヶ月暮らせる。

 50万円あれば、1年分の家賃、水道高熱通信費、食費が賄える。時給1,000円のバイトなら、月に42時間で賄える水準だ。週ではなく、月42時間。

 この所得水準で暮らせるなら、基礎控除+給与所得控除で所得税も住民税も非課税で、国民年金も全額免除。健康保険料も7割負担と、自治体にもよるが年間3万円前後で済むだろう。無理してまで正規雇用にしがみつく必要はない。

 この余裕こそ、貨幣経済から少し距離を置いた生き方の真髄ではないだろうか。


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