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文系院生、就職活動をする

修士課程。そこは学部4年の生活を終えた者が卒論よりレベルの高い研究活動を2年間行い、修士論文を執筆する弱肉強食の世界です(博士課程は更に弱肉強食です。というか、弱肉強食ではない、さらに大変な世界だと思います)。そして、修士論文を執筆することが修士課程に所属する院生の使命です。したがって、修士課程に所属する院生は時間がありません。これは文系も理系も変わりないです。文系院生は理系ほど忙しくないという噂を聞くこともありますが、それはおそらく昔話です。修士課程に所属する文系の院生であっても、猫の手を借りても足りないくらい忙しいです。千手観音の手でも足りません(むしろ優秀な脳みそがほしい)。

そのような中で、文系院生は就職活動をしなければなりません。そのなかで研究と就職活動をどのように私は進めてきたのか。卒業論文も就活も頑張りたい大学生、就活を控えている大学生、研究と就職活動の両立を迫られている院生たちに向けて、少しでも参考になればと思います。

【実行したこと】

 私は就職活動を早く終わらせたいと意気込んでいました。しかし、妥協はあまりしたくない。そこで実行したことが以下の内容です。

①:専念する時期を決める

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 これはよく言うと思いますが、「忙しい」と口で言うだけでは就職活動も研究も進みません。なぜなら、こっちは本当に忙しいのですから。何か手を打たなければならない。

 私の場合、研究に専念する時期と就職活動に専念する時期を明確に分けました。私の場合6月が解禁だったので、その年の2月から本格的に就職活動をはじめました。2月まではとにかく研究を進めます。歴史学の場合は史料をとにかく収集することにあたります。そして、2月以降は就職活動にシフトし、研究活動としては先行研究の本を読めるときにちょこちょこ読んでいました。そして、土日は収集してきた史料を読んで研究していました。大雑把に言えば、月から金までは就職活動で、土日に研究でしょうか。

 ちなみに、私の場合5月のゴールデンウィーク過ぎには就職活動がやや落ち着いていたので、5月くらいから研究に再び本腰を入れ始めました。

②:友人や社会人から積極的に話を聞く

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 まずは、既に働いている人に疑問をぶつけたり、どのような仕事をしているのか片っ端から聞きました。なぜなら、自分でいくら考えても必ず頭打ちするからです。つまり、どこかのタイミングで第三者の視点を組み込み、理論武装する必要があるのです。私の場合、業種や年齢は気にしないで、相談できる人に声をかけていきました。強いて言うなら、院生だったので、私の周りは皆社会人だったので、彼らに相談しました。これは院生の強みだったと思います。

 就職活動の正攻法は業界研究をして、個別の会社を調べることだと思います。確かに大切ですが、自分の適正や仕事の方向性は誰かからの指摘を受けることで大きく前進します。また、自分の漠然とした考えを言語化しようとするので、「面接でこれを喋ったらいいんじゃないか」「私が思っていたのはこういうことだったのか」という新しい発見につながります。

③:友人にESの添削を頼む

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 自分で書いたものは、どこか雑に読んでしまうのか、ミスに気づかないことが多いです。活動のピークである4月までは、会社に合わせて変えなければならない部分を友人(社会人)に添削してもらいました。これはテキストベースではなく、電話(私はLINEの電話を使いました)でアドバイスをもらいました。そのほうが早いですし、ラクです。とても助かりました。そういえば、お礼をまだしていないような...

 学部生の方は仲のいい人と相互に協力して乗り切るといいと思います。終生の友になるかもしれないという期待を込めて、積極的にやり取りすることをオススメします。

 それ以外には書いた文章を音読する、キャリアセンターや就職のエージェントに頼むことが挙げられます。②でも述べましたが、個人では必ず頭打ちになります。誰かから指摘をしてもらったほうが、悩む時間が減ります。その悩む時間を別のことに使うためにも、周囲の人を頼っていきましょう(お礼は忘れずに)。

④:国会図書館で情報を集める

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 私は歴史学の研究をしていたので、国立国会図書館にはよく行っていました。そこで実際に「国会図書館は就活にも使えるじゃん」と感じました。

 国会図書館はありとあらゆる本が揃っています。業界研究の本はもちろん、面接対策本、市場規模(国会図書館内にある科学技術・経済情報室で調べることが可能)まで調べることができます。ネットで情報収集するより、一覧性があるので見やすいですし、他の気になる業種をメモすることもできます。大学や公共の図書館とは異なり、貸出はできませんが、印刷ができます(有料。詳細はコチラ)。

 また、履歴書の書き方や面接に関する本も所蔵されています。もちろん過去の就職活動の本も請求・閲覧できます。研究文献の取り寄せもできますし、マンガも取り寄せることができます。

 ちなみに、本館の6階には食堂があります。もはや籠城できますね。

【就活を円滑に進めるために意識したこと】

 これまでは私が万人にオススメできる就活でやっておいてよかったという大きな話をしました。ここでは、個人に大きく依存するけど、オススメだよという小さな話をしたいと思います。

①:説明会のメモと自己分析のメモは同一のノートにする

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 就職活動を行うと説明会の内容で重要なところをメモしなければならないですし、自己分析もしなければなりません。いちいち用途に分けて整理していると混乱しそうだったので、私は一つにまとめました。私は近所のFamilyMartに売っていたノートを使っていました。書式は日付、タイトル(会社名、自己分析、OB訪問など)を記入しました。就活に関する思ったことはどんどん追記していきました。

②:自己アピールするときに意識したこと

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 自己アピールは履歴書や面接の場で必要になります。私が意識していたことは3つあります。

 1つ目は簡潔に短く話すことです。句読点をつけて話すようにしましょう。そもそも1分を適切に短く話す能力は研究でも必要です。

 2つ目は最初に話す内容が何個あるのか提示することです。例えば、「私の強みは○個あります」という言葉です。ちなみに、これも論文を執筆する上で必要な能力です。

 3つ目ははじめにに結論を述べることです。そして、その結論は短くスパッと終わらせることが大事です。結論を述べてから、根拠を述べていきましょう。これも論文を執筆する上で必要な構文です。

 あとは長々と話すぎないことでしょうか。目安は90秒前後です。よく厳密に話そうとしてストップウォッチで計って練習する人がいますが、私はやりませんでした。私の場合、1分で具体例1つくらい話せるなという感覚だったので、「1分で自己紹介してください」と言われたら強みを1つ挙げて、例を1つ挙げていました。特に指定がない場合は強みを2つ、例を2つ挙げています。

③:グループワークで意識していたこと

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 会社説明会後にいきなりグループワークという名の一次選考が課せられている場合があります。そのとき意識していたことは2つあります。

 1つ目は相手の意見を聞くときは、話している人の目を見てうなずくことです。グループワークで見ている能力はざっくりいえば、傾聴能力です。相手の話を親身になって聞いている雰囲気を出すことが大事です。ちなみに傾聴に関する話は教職の話でも登場しますので、ビジネス書を参考にするよりも、教育学の本を参照にすると何か新しい発見があるかもしれません。

 2つ目は、発言しない人がいたらチャンスということです。グループワークでは司会進行、タイムキーパー、書記といった役割分担が必ず行われます。そして、就活生は積極性をアピールするために、とにかく喋ります。すべてのが積極的に議論し、高度な議論が行われていたら、それは本人の能力次第で合否が決まります。しかし、グループの中には全く発言しない人もいれば、最初だけ話に参加して、途中から追いついてない人がほぼ必ずといっていいほど登場します。そのような人がいないか目を配りましょう。そして「発言量少なくないか?」と感じたとき、「〇〇さん、何か意見ありますか?」「○○さん、ここまでの話で理解できないところはないですか?」というフォローを入れてあげましょう。

④:面接では相手にメリットを提示するように心がける

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 就職活動では自分の強みを表している話をする習慣があります。私は研究の話をあまり全面に出さず、アルバイトの経験を話しました。これは研究の話をしたら、「じゃあ博士に行けばよくない?」という反応が多かったからです。アルバイト8に対して研究は2くらいです。まぁそのような企業は行かなくてもよいのですが、当時はそのような思考に至らなかったので、アルバイトの経験を話しました。

 参考までに述べておくと、私は以下のようにアピールしました。具体的には、アルバイトで生徒に対する目標の立て方と目標達成の方法を細分化した上で、生徒のやる気を引き出す施策を数多く実行したことを述べました。また、生徒だけではなく、後輩となる先生にも同様のことをしていました(塾長からはコンサルっぽいことを他の先生にしてくれと言われていました)。ここでは、論理的に物事を考えることができる点と人の動かし方を経験していることをアピールしました。また研究では、1つのことを継続している、必要な情報は自分の目で原典を確認するまで信じないことを述べました。ここでは、好奇心の強さや一つのことをやり遂げること、そして、常に情報収集をする意欲があることをアピールしていました。

 あとは会社のどのような部分(社風、ビジネスモデル、雰囲気など)に貢献できるかを事前にある程度想定して話すだけです。ちなみに、私はよく「論理的に物事を考えている」と評価されていたので、論理を活かすことができる部分で活躍できる旨をアピールしていました。

⑤:「成長」という言葉を安易に使わない

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 これは私の場合だけかもしれません。私は「成長」という言葉を使わないようにしていました。なぜなら、何も考えずに「成長」という言葉を使っている人が意外に多くいたからです(私が受けた会社だけかもしれませんが)。私は「成長」というのは何らかの評価軸または価値基準が定められた中で、上昇したときに使う言葉だと考えています。「会社に入れば、積極的に〇〇をするようになる。だから○○というスキルが身について成長するんだ」というのはよく聞きます。そこで働く人の努力は素晴らしいものですし、私には真似できません。

 しかし、成長で用いる評価軸や価値基準は人によって変化するはずです。それを「○○というスキルが身につくから成長する」というのは独善的ですし、「スキルが身につくから、成長する」という構造は単純すぎると思います。

 改めて言及しますが、私は「成長」することに対して否定しているわけではありません。成長の基軸は人によって様々なはずです。「○○と○○などのレベルが向上したとき、私は成長したと思います」となるのが妥当だと私は思うのです。

 それでは、ゆらぎのない成長の軸を見つけるためにはどうしたらいいのか。それは自分の中で十分ですから確固たる目標や人物像、理念などを見つけることです。ここは主観で乗り切るしかありません。言い切ることが大事なのです(ここは研究と大きく違うところなので、私は非常に苦しみました)。

 例えば、私の場合、「何からの形で自分の力が周りによい影響を与えられたら世の中がよくなるんじゃないか」という理念のもと、自分の営業のスキルを身につけること、そして会社に勤める人に何らかの協力を積極的にしたいという旨を述べています。したがって、私の成長の基軸は2つありました。1つ目は売上です。2つ目は社内外を含めて、頼られる数です。

 前者は数字で換算することができ、後者は「社会人の研究日誌さんに依頼してよかった、相談してよかった」という積み重ねの数で成長を表現することができます。

 個人的には数字に落とし込めるとなおよいです。単純に数が増えれば、成長と言いやすいので。以上が「成長」という言葉を安易に使わないということです。私の偏見の可能性もありますので、そう思わなかった人はこのアドバイスを無視していただいて構いません。

おわりに

 私が改めて触れておきたいことは3つあります。1つ目は相談相手を作ることです。自分1人で抱え込こんでも解決しないものは、星の数ほどあります。そのようなときに、頼ることができる友人や先輩を見つけて、思いっきり頼りましょう。その点では新卒紹介のエージェントに頼ることも1つの手でしょう。

 2つ目は研究計画を予め立てておくことです。ありふれたことですが、これができないと就職にも研究にも支障をきたします。週ごとの目標、月ごとの目標を立て、遵守することで十分ですから、必ず計画を立ててください。そもそも計画を立てることができない人は研究できません。計画は予定通りにいかないことが常です。しかし、計画を立てた上で何かあった場合、周りは救いの手をさしのべやすいです。計画を立てましょう。

 3つ目は就職活動が忙しくても、自分の研究に直接関わる先行研究は読もうということです。これは就職活動が終わり、研究に本腰を入れるときに力を発揮します。夏休み前に就職活動が終わった場合を想定します。夏休みは卒業論文・修士論文の執筆をする時期にあたります。理想を言えば、この時期に半分くらいは書き上げていないと、いい論文を書き上げることは一般的に難しいと考えられます(これは研究分野や個人の才能によりますが)。

 先行研究の整理はしっかり固まっていないと、芯の通った論文になりません。しかし、先行研究の整理が固まり、批判の矛先が決まっていると、本論が書きやすく、よい論文に一歩前進します。

 就職活動は心が折れます。特に最初の方は思うようにいかず、不安になります。私もなりました。そのときは1つ目に挙げたことを必ず思い出してください。相談する相手があなたにはいます。1人で悩みを抱え込むことは、精神衛生上よくないですし、モヤモヤしたまま就職活動や研究に取り組んでも、よいパフォーマンスは出せません。

 辛くなったら逃げ出してもいいんです。でも、1人で判断しないでください。一番信頼できる人に必ず相談してください。理想はもうひとり相談相手を見つけてください。「三人寄れば文殊の知恵」です。


 

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