働く

謝罪の作法

人並みに、いやそれ以上に謝るということをしてきました。誰でも仕事をしていたら、謝らないといけないシチュエーションがきっとあるでしょう。僕は人よりどんくさいので謝る機会が人よりたくさんあります。そういうことなら、謝ることについて、自分の経験を整理してみようとふと思い立ち、今思う僕なりの謝罪の作法について書いてみることにします。

クレームの原因は期待値調整ミス

一般的にはクレームが多いとされている住宅業界。僕もオーダーメイド型のリノベーションの営業をしておりますので、この部類に入ります。気をつけていても、どうしても頂いてしまうのがクレーム。高単価かつ無形商材(オーダーメイドなので完成形が見えない)を扱うため、お客様の不安も期待値も高い傾向にあります。その高い期待とこちらの提供するモノ・サービスにギャップが生じた時、クレームが発生します。一言でいうとクレームの原因の多くは「期待値調整」がうまくいかなかったからです。

今回は「クレームが起きてしまった後」に焦点を当てて、住宅業界でクレーム対応の中で体得した3つのポイントを整理します。クレームが起こらないような予防線のはり方については、また気が向いたときに書こうと思います。

1.クロアチアの消防士に学ぶ「初動」の大切さ

ベルが鳴ってわずか20秒たらずの間に服を着替え、消防車が出発。
ロシアW杯の準決勝クロアチア対イングランド戦真っ只中のことでした。

トラブルが起きた際、僕はこのクロアチアの消防士を思い出すようにしています。動画を見るとわかるように彼らは考えていません。反射的に動いています。そして、動きに全く無駄がありません。初動のスピードはその後の結果に大きな違いを生みます。早く動けば動くほど、早く収まります。準備の質よりもスピードの方が大切です。事態は刻一刻と変化しますので、ここで100点の準備(事情の把握など)をするのは無駄です。着いた頃には60点くらいになっているでしょう。最初の一歩に能力の差はありません。ただ、動くか動かないかの差です。

2.火の元の確認を間違えると大炎上

まずすべきは、出火元の確認です。なぜクレームが発生したのか。これは本当に難しい問題です。なぜなら、こういう状況においては「事実」と「主観」が入り混じり、「主観」によって「事実」が曲げられたりするからです。まずは事実を時系列でまとめ、要因を特定していきます。近視眼的になりすぎないように、まずは下の例のように大まかに把握していくことが大切。そこから深めていった方が、効率が良いです。「事実」なのか「主観」なのかの切り分けに神経を集中します。

■クレーム概要
発生日時:2/18
内容:リビング部分タイル仕上げのイメージ齟齬
対応:〇〇様→担当〇〇へ入電。要折返し。 
 ■要因
議事録記入漏れ・説明不足か。
 ■時系列まとめ
2/1 プラン打ち合わせ
2/3 タイル見積もり
2/5 電話で〇〇様とタイルの仕上げ決め(議事録無し)

これをベースに整理していきます。このとき、当事者に「なぜ、なぜ、なぜ」とトヨタのなぜなぜ分析よろしく理詰めしていくのはあまりいい状況を生みません。こういう状況においては、当人は詰められていると感じ易く、事実が歪曲される可能性があるからです。詰めるのではなく、興味をもつという感覚で、リラックスした状態を作るのが大事です。こういうときにさらりとユーモアを入れられる人は修羅場をくぐり抜けてきたんだなと思いますし、人間をよく知っているなと思います。正論しか並べず、逃げに入っている人と比べると人間的な魅力の差は歴然です。そういう空気をつくりつつ、聴いたことから事実と主観をふるいにかけ、事実を時系列に整理していきます。そうすることで段々と要因が見えてきます。謝るポイントを間違えると余計炎上するので注意が必要です。2018年は日大アメフト問題などスポーツ界での謝罪会見が相次ぎましたが、謝るポイントが見当違いだと大炎上するというのは肌感として皆持っているのではないでしょうか。だからこそ、正確な要因特定が大事です。得られる情報から冷静に「主観」を省いていき、「事実」を見極めます。

3.御用聞き厳禁

相手を怒らせてしまったとき、ときに無理な要求を受けることがあります。例えば全額値引きしろとか、お金を払わないとか。もしかしたら、それを飲まないといけない状況もあるかもしれませんが、大事なのは今相手が口にしていることは本当に求めてることではないということを心にとめておくことです。そのまま鵜呑みにしてその通り対応するのでは、事態は好転しないことがほとんどです。今、相手が本当に求めていることは何なのか。それは発言の「背景」を知るということです。その発言にいたったのはどんな出来事があって、どう感じたのだろうということに、興味を持って心から耳を傾けることが大切です。何か言いたくなるのをぐっとこらえて、聴くことに徹します。そこに矛盾だったり、理不尽さがあったとしても、まず最後まで聴くこと。そこまでやると、本当の意味で顧客に寄り添った対応策が見えてくるかもしれません。前の段階で「主観」を省いていますが、今度は、顧客の「主観」を大切にします。「事実」を先に押さえ、そのあとで「主観」です。これが逆になってしまうと、よくありません。簡単に相手の言いなりにならず、その背景を知ることで、本当に求めていることを理解し、謝罪と同時に信頼の回復も目指します。

まとめ

・初動のスピード命
・正確な要因特定:「事実」と「主観」
・御用聞き厳禁

すべて個人的な体験から書きましたので、すべての人に当てはまらないかもしれませんが、少しでも誰かの参考になると嬉しいです。


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