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*必見!「日本の没落」 中野剛志 by エシモの備忘録 〜どの文化も必ず没落の運命を辿る〜

どの文化にも春夏秋冬のように栄枯盛衰の運命が定められている。それは現代の西洋文化も同じで、現代は没落期の冬の時代である。

◆この本について
ドイツの哲学者シュペングラーの「西洋の没落」1922年著を今の時代に照らし合わせて、日本の運命を紐解いていく新書
シュペングラーは100年前から西洋文化の没落を的確に予想しており、その予想が次々と的中し話題となっている。

◆この本から学びたいこと
・漠然とした不安が充満した時代にどんな生き方があるか知りたい
・大局的に見てこれから日本はどうなるのか知りたい
・歴史から未来を予想する術があるならその方法を知りたい

◆この本を読むにあたっての前提知識
現存在と覚醒存在
現存在:実際に目に見えるものを扱うこと
ex)自然、土地、牧畜、農家、料理、貴族、政治経済、子育て

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覚醒存在:目に見えないものを言葉を使って抽象的に捉えること
ex)宗教、哲学、思想、僧侶、お金、芸術、憲法

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・古代ギリシア、古代ローマ、三代文明などの没落の主な特徴
1)自然破壊
2)腐敗政治
3)超格差社会
4)少子化
5)奴隷不足(労働者不足)
6)内乱・国民の不満爆発
7)戦争

ファウスト
18世紀にゲーテが残した戯曲
主人公の学者ファウストが悪魔メフィストフェレスと賭けをする。その内容は「どんな願いも叶えてもらう代わりに、「時よ止まれ」と呟いたら、死後の世界で悪魔の奴隷となる」というものだった。ファウストは酒池肉林の生活を送っても満足できなかったが、皇帝から譲り受けた領地の開拓事業に邁進する行為そのものにこの上ない充実感を得て「時よ止まれ」と言ってしまう。結果を顧みず、行為そのものを至高とする資本主義の飽くなき開拓欲求を皮肉った作品。

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画像:空を飛ぶ悪魔メフィストフェレス

◆この本の要約
人間の歴史を俯瞰的に見ると、あらゆる文化が春夏秋冬の時代を経て没落して行く特徴を示している。その根本的な原因は生活に余裕が生まれた者たちが覚醒存在の思考に偏り、現存在を討ち滅ぼそうとする行為にあった。
地球、自然という現存在が無いと生きていけない我々は、覚醒存在であるお金を蓄積するにつれて、自然を支配し、いつしか現存在を征服した気になってしまうのである。

ここでいう文化の春夏秋冬は大まかに次の項目に分かれている。

・春:農耕牧畜社会、村社会
・夏:都市の誕生、封建制度、芸術勃興、軍の成長
・秋:芸術・文化の極み、国内繁栄、技術革新
・冬:文明開化、帝国主義、世界都市、移民、人口減少、個人主義

古代ギリシア、ローマ帝国、中国文明など、あらゆる地域で、秋の文化から冬の文明へのシフトを境に没落への道を辿っている。

現代の日本人は明治維新以後、西洋で勃興した文明をグローバルスタンダードととして取り入れながら暮らしているが、これも既に冬の時代を迎えている。移民政策で苦しむヨーロッパ、金融政策で苦しむ大衆、自然破壊、周りを見渡してみると確かに冬の時代の特徴が見られる。

しかし、シュペングラーは今から100年前にこれからを生きる者たちへこんな言葉を残している。

「われわれは、この時代に生まれたのであり、そしてわれわれに定められたこの終局への道を勇敢に歩まなければならない。希望がなくても、救いがなくても、絶望的な持ち場でがんばり通すのが義務なのだ」

没落の時代に生まれた運命を受け入れ、イズムに違和感を感じたとしても、薄暗く前へ進む道しか残されていないのである。

◆各章のまとめ
1.経済成長の終焉
ファウスト的魂「まだ見ぬ先の発展を夢見て邁進する行為こそ、一番美しい時間である」と自己暗示した人間が進むのは、帝国主義(終末の典型的な象徴)→文明社会→グローバリゼーション→超格差社会である。

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2.グローバル・シティーの出現、地方衰退、少子化
文化の時代は社会内部の発展を目指すが、文明の時代は外部への膨張へと向かう。

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・権力者は世界の交通と通信を己の力で覆い尽くし、他者を支配下に置く。
グローバリズム:文化から文明へと没落していく過程
故郷の束縛から逃げ出して、自由に暮らしやすい場所へ飛びまわる文明人(スマホを持った大衆)の大量発生。彼らは圧倒的に暮らしやすいグローバルシティー(世界都市)に移り住む。

ex)中国人観光客に期待する日本企業はローマ市民観光客に期待する人口減少したアテナイ人と同じ。観光立国とは没落の光景である。

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・ローマ帝国のパンとサーカスのように、グローバルシティでは、市民のガス抜きとして似たようなことが起こるだろう。
ex)ベーシックインカムとYouTubeなど
・グローバル・シティ:金融やITなどの知識経済を表象する都市形態。自然と隔離される。仕事の難易度から極度の知的緊張が生まれ、そのストレスを性産業、スポーツ産業、賭博産業で発散させる。心理的不安は、宗教(座禅、グーグル口コミ検索)や神秘主義(祈祷、占い)で満たす。
ex)代表的なグローバルシティはニューヨーク、ロンドン、東京など

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文化:覚醒存在が現存在に根を下ろしながら発展した状態
・都市:文化が発展した場所
ex)京都、江戸、パリ

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人口減少の根本的な原因も覚醒存在が現存在を抑圧しているから。グローバルシティに暮らす人間は覚醒存在の肥大化により個人としては生きようとするが、型として、群としてはもはや生きようとは欲しない。自己実現という個人主義は親としての自己犠牲を受け入れられない。
都市型の末期の人間たちは子供を持つ意義や理由を考えてしまう。しかし、妊娠、出産とは元々自然現象であり現存在なので理由など存在しない。

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・女は現存在的性格で男は覚醒存在的性格
両者がバランスよく結合した型がベスト
・少子化とは、世界史上不可避な没落現象の1側面で、覚醒存在の過剰による、現存在の衰弱によって生じるもの。根本的にはグローバルシティー、金融知識経済の肥大化と同じ構造である。

3.ポスト・トゥルース政治の行方
・ポスト・トゥルース:感情や個人的心情が世論形成に影響する環境。権力を握ったメディアが大衆を感情論で先導する政治。一般大衆は教養も無く、本を読まないので、感情で判断する。選挙権が拡張されるに従って国民の自由は縮小される。
ex)トランプ、ヒラリー、大阪都構想

4.リベラリズムの破綻

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国家の自殺:移民の大量受け入れは国のアイデンティティーを失うのと同じ
国家:土地に定住し、文化を築いた歴史と生活様式を共有する民族、市民の共同体のこと
・市民の理念とは自由主義であり、それによって文明が成熟する。つまり没落するのだ。
・都市が世界都市となり、大衆が生じる。そして彼らは秩序と知識を憎み、リベラリズムは破綻する。
・憲法は西洋における歴史的経験の蓄積により形成された政治文化。決して中立的なものではない。

5.人間の性格と技術革新

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西洋的性格:際限なく成長を続け、新しいものを発明し続ける。
結果よりも、行為そのものに美徳を覚える。
・だが、この西洋人的性格が生み出したものが人間の性を脅かし、ハウスト的魂自身をも弱らせる。その衰退の現象として以下の4つの項目が挙げられる。
1)環境破壊
環境破壊をしつつ放浪を続ける文明人は、実は自分たちの生命力を枯渇させている。
2)機械の支配
限られたプラットフォームが、人々の生活様式を支配する。
3)技術の拡散
業務技術がオフショアによって海外に渡り、ロボットが生まれ、失業の嵐が来る。
4)際限なき欲望からの不幸
安らぎ、幸福、享楽を知らず、目標に向けた行為を続ける。自滅するまで、進み続ける。

6.金融支配

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貴族と農民の時代は、土地が不動の財産だった→金融政治が始まり、あらゆるものを交換可能な動産へと移行する→行き過ぎた貨幣による知性の破壊から、経済は金融化による技術進歩の鈍化をもたらす→しかし、貨幣の独裁の後に、「古い高貴な伝統に生きるすべてのものに対する深い憧憬」「血の力」「社会主義」「皇帝主義」が覚醒し、独裁的貨幣経済の指導力と皇帝連の純然たる政治的秩序との間に最後の決戦が行われる。

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シュペングラーはこの決戦は皇帝連が勝利すると書いているが、皇帝主義以降の時代の詳細は明らかにされていない。2000〜2200年にかけて皇帝主義へ移行する。

7.貨幣と財政

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貨幣とは、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債である」byイングランド銀行
・負債=信用→信用貨幣論(ファウスト的貨幣論)、信用には時間という重要な要素が介在する。時の概念があるから貨幣がある。時が止まればファウストは死ぬ。つまり、時間の概念がなくなれば、貨幣の価値はなくなる。「いつまでに返す」という約束ができなくなるから。
・銀行は融資する時、通帳に数字を記載するだけ。つまり、銀行は融資によって無から有を生み出すことができる。
貨幣の条件:租税の支払い手段であるならばそれで十分貨幣としての利用価値が保証される→租税の支払い手段として使用されれば、納税以外の目的にも使用されるため。
財政の正常なケースは政府が赤字財政を運営して民間に納税以外の手段として貨幣を使用させるのが正攻法(一時的なインフレ政策)
・信用貨幣論の先に、独裁的貨幣経済(金融支配)が待っている。ex)€
欧州連合は€の価値を維持するため、中央銀行による国債引き受けが禁じられた。つまり、欧州連合は財政赤字の拡大によって、不況を克服することができない。
支配者側は債権の価値を高めたい。だから貨幣価値が実質的に下がるインフレではなく、デフレを求める。デフレ圧力発生手段として、金融引き締め、緊縮財政、貿易自由化、移民政策などが実施される。

8.予言の方法

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・ゲーテの形態学:生物や物事に対して直感で捉えた本質を形態で比較し理解する学問。ex)なぜ牛はツノを持っているのか?ではなく、どういう過程を経て牛はツノを持つようになったのか?と深掘りしていく。
形態学を人間の精神に適応したのが「観相学」→外面環境から内面を判断する
・シュペングラーの歴史の観相学的手法とは、「何かがどんなふうに成るか見て、喜びあるいは悲しみ、成ることをもう一度体験する
物事の本質は直感とHowで捉える。

9.日本の運命

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明治維新後、盲目的に西洋文化を取り入れた日本は、欧州が長年の経験で培った自己批判の術を持たないため、西洋よりも早いスピードで西洋化し、西洋と共に没落の冬に到達した。今の中国も西洋化の文明と言える。つまり、必ず没落する。
「20世紀以降に体系的、論理的の哲学を学ぶことはもはや廃鉱をハンマーで叩くようなもの。これからを生きる人々は、本書に動かされて、叙情詩よりも工業に、絵画よりも海事に、認識批評よりも政治に身を通せるならば、自分の願いは満たされたと言っていい。そして、それで十分なのである」

◆所感
どうあがいても、西洋文明は日本や他の西洋化した国々を巻き込み没落して行く運命なのかぁ。悲しいけど、どの文明も始まりがあれば終わりがあるから、現代が冬の時代ということを覚悟しなきゃいけないんだね。世界は堕ちるところまで堕ち、そのあとに皇帝主義へと移行するってことは、日本で言うと今の既得権益層が腐敗して、新しい天皇主導の政治が始まるのかも…?

今のデフレや日銀の金融緩和も独裁的貨幣経済の表象かもね。選挙権が広がるほど、庶民は権力者に感情的に操られて益々苦しい生活へと堕ちていくんだろうな。ぼーっと生きている庶民が悪いのか、巧みな情報操作で国を操る権力者が悪いのか、どちらとも言えないけど。

なんか、ハラリ教授が「21レッスン」で述べていたことにも似たようなことが書いてあったなぁ。

この本にはこの時代の攻略的な情報を求めてたけど、一人の力じゃどうしようもないし、期待しないで一日一日を自分なりに大切に生きるのが一番かも。そうやって生きてもどうせ没落する運命なんだし。

覚醒存在と現存在のバランスが人間社会の文化を築き上げていくという話がとても面白かった。
今はスマホもあるし、部屋に篭ってても本を読んでネットで買い物して、ある程度満足する生活を送れるから、覚醒存在8:現存在2くらいの人が多いのかも?
地に足ついた地方の人々を大都市の人々はバカにしているのかもしれないけど、実は人間としての生命力は圧倒的に地方農家や漁師さんたちのほうが強いわけで、自分の見えない幸せを求めて世界の都市を転々とする大衆は、一人寂しく放浪の人生を歩むのかもね。人生の目的地など探してもどこにも無いと言うのに。自然、土地は現存在だから、それ自体に理由なんてないんだ。

最後の文がとても響いた。

「20世紀以降に体系的、論理的の哲学を学ぶことはもはや廃鉱をハンマーで叩くようなもの。これからを生きる人々は、本書に動かされて、叙情詩よりも工業に、絵画よりも海事に、認識批評よりも政治に身を通せるならば、自分の願いは満たされたと言っていい。そして、それで十分なのである」

ジュペングラーは今の時代は冬の時代だから、夏や秋の時代の哲学を学んだところで役に立たないと言っている。

悲しいけれど、ぼくの好きなアートだって時代を抽象的な言葉で捉えて、ビジュアルに落とし込む覚醒存在の肥大化の表象になっている。つまり、「アートとは何か?」という決して見つからない答えに向かって創作し続ける行為自体が美徳として捉えられているんだろうな。ジュペングラーにしてみればファウスト的魂の一例に過ぎないということかも。しかも、今となっては金融商品として権力者に利用される存在だもんね。デュシャンも絵画は死んだと嘆いていたのは、アートの行く末を悟っていたからなのかもなぁ。
作詞家、アーティスト、批評家は内側を発展させる文化の時代の職。つまり、夏と秋の職。しかし今は冬の時代。工業、海事、政治、つまり時代の流れに合った職業を選び、その場で没落の運命を受け入れて頑張れとジュペングラーは言っている。今の時代にシュペングラーがいれば、工業、海事、政治の代わりにIT、エンタメ、インフルエンサーを選べと言うだろうな。

自分の場合は東京育ちだから、東京が移民にあふれて肩身がせまい思いをするのは悲しいけれど、かつて仏陀が敵国の移民を泣く泣く受け入れたように、現実を受け入れるしかないのかもな。

覚醒存在のグローバル・シティ東京でこれから求められるのは、ITなどの知識経済でストレスを抱えた人や失業で暇になった人たちを癒す、性産業、スポーツ産業、賭博産業、エンタメ産業、飲食産業などの業界で働きつつ、現代人が神のように信頼するインフルエンサーを目指すのが一つの道だと思う。
今はほぼニートなので、そろそろ貯金もなくなるし、早く転職しよっと笑笑

人の命は現存在。でも、「人生」と書くと覚醒存在になる。覚醒存在は成るもの。成るべくして成るわけだから、人生どうするかは自分次第。現存在的な老子は何もするなと言ったけど、覚醒存在的な孔子は成り上がれと言う。さて、どっちを選ぶ?

人生の充実とはなにかと問いだし、自己実現の道を選べば、結婚し子どもを育てる道をコストと考えるようになるんだろうね。一方で、欲求に素直で、地元愛のある人は子どもを産み育てて、地方の衰退に苦しみながらも自己犠牲の愛を家族に捧ぐんだろうな。子どもを育てるなら現存在的性質の強い地方の方が良いのかも?情報発信するインフルエンサーをやりながら地方で子育てするのがバランス良い生き方な気もする。故郷の東京を捨てるのは悲しいけど、もうここはグローバルシティな訳だし……

人間死ぬときはどこにいても死ぬ。死ぬまでに後悔しないように…って考え方自体が、覚醒存在的な個人主義の大衆の考え方のようにも思えてきた。

一先ず自立した生活送るために、さっき挙げた業界に転職して、インフルエンサー目指してコツコツやってやろうと思った次第です。

長文でごめんなさい🙇‍♂️


◆最後に偉人からの一言

運命は欲する者を導いて行き、欲しない者を引きずってゆく。セネカ


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