「投資とは」を考えさせてくれる会社 ー 農林中金バリューインベストメンツ
もしも、こんな社長がいたら、、、
某社の社長は新規投資を行うことにした。
驚くことに投資先が続々と集まってくる。
その数はみるみる増えていく。
結果、その数、何と!2,159!
部下が社長に質問する。
「スゴい数です。一体、この中からどこに投資するんですか?」
社長は答える。
「全部だ。2,159の候補先、全てに投資する。」
社長の判断は絶対だ。その判断が覆ることはない。
部下はもう一つ質問する。
「では、その2,159のそれぞれに、どれだけ投資するのですか?」
社長は答える。
「"総選挙"の結果をみろ。
候補先は全て”総選挙”で順位が付いているはずだ。
その順位通りに投資額を割り当てるんだ。
その順位通りだぞ。そこを間違えるなよ。
絶対に自分の判断で順位を入れ替えたりするなよ!
夥しい数の候補先があるからといって、
お前の”推し”の順位を上げたりするんじゃないぞ!」
社長の判断は絶対だ。
しかし、”総選挙”って何ですのん?
部下はキョトンとするばかりだった、、、、
お気づきになっている方もいらっしゃると思います。
TOPIXに連動するポートフォリオを保有すること、それって、この社長がやっていることなんですよね。2020年1月23日時点、東証一部には2,159社が上場しています。
社長のいう”総選挙”が取引所=「株式市場」ですね。
私の関心の一つは、この社長の行動をどう理解するのか、ということ。
端的に表現すると、
果たして、これって「投資」なの?
ということです。冒頭に「新規投資を行うことにした。」とあります。将来のリターンを得るために、今の資金を投じる。ですから、この段階までは間違いなく「投資」でしょう。問題は、そこからです。
候補となる先は全て投資する、夫々をどれだけ買うかは世間の評判に任せる。
この方法なら、コストをあまり掛けることなく、効率良く(過度に大きなリスクを取ることなく)、平均的なリターンを受け取ることができる可能性が高いでしょう。「ほったらかし、楽ちん」ってなるわけです。大事なことは、このリスクある資産にお金を貼り付けているか、を気にかけること、見守ることになるものと思います。なんと言いましょうか、この効率重視的な発想、「効率良くリターンが出るのがいいんじゃない」というスタンスは「投資」って呼べないんじゃない、っていう疑問を強く持つようになったのです。2014年には、こんなことを書いていました。
「平均的なリターン」というのにも、疑問を持つようになりました。市場全体を買うからこそ平均的なリターンが得られるのですが、それって意味あるの?という疑問です。というのも、ちゃんとした会社の株式で構成されたポートフォリオを保有していれば、長期目線ではプラスのリターンがあるはずです。そうして得られたリターンをなぜ「平均」と比べなきゃいけないのか、と。確かに、インデックスファンドを保有すれば、労少なくして「平均的なリターン」を得ることはできます。「平均的なリターン」に勝つとか負けるとか、それって大事なことか、って。プロの投資家は顧客等に自分の成績を示さなきゃいけないから、モノサシを必要とするのは当然です。でも、「平均的なリターン」を追いかける、それを得るために、投資先を選ばない(詳しく知ろうともしない)、どれだけ持つかも人任せ(どこをどれだけ持っているか興味も大して持たない、(コストばかり気にする)って非常に奇異なことではないか、と感じ始めるようになりました。
これは「投資」なの?って。
ブログがきっかけでした
2017年末、こんな感想文をブログに書きました。年明けに、この記事をご覧になった農林中金バリューインベストメンツの岡島さんからご連絡を頂きました。これをきっかけにお付き合いが始まりました。一つの成果がこちらのイベント。Shimoyamaさんがとても詳しくご紹介してくださっています。
農林中金バリューインベストメンツさんとのお付き合いを通じて、あらためて理解できた、深く納得できたことがあります。
1. 「価値」を生み出し続けることができる会社を選び出し、その関係者=オーナーという意識を持つことの重要性
2. 「投資」とは資本配分であること
一つ目の点については、農林中金バリューインベストメンツさんがnoteで繰り返し、繰り返し、発信されていること、そのものです。
昨年は奥野さんにnoteのイベントでご登壇して頂きました。
オーナーである意識、自覚を持った株式投資、 #オーナーシップ投資 です。
株式投資のリターンはどこから来るのか、投資先が利益を上げ、それが市場に評価されるからこそやってくるものです。その利益はどこから来るのか、それは社会の課題に対して解決策を提供し、その対価として得た売上が源泉です。ただ、オーナーが受け取るのは、様々な関係者(仕入れ先等の取引先、会社で働く社員のみなさん、資金を提供する債権者)に支払った後に残るものです。また、その利益が株主の期待に応えたものであるか、という点も大事です。すごく乱暴な表現かもしれませんが、投資のリターンは「社会」から頂いているものなんだと思います。その意味で、ESG投資が儲かるかどうか、という議論は極めて不毛だと思われてなりません。株式投資のリターンの源泉を考えれば、こうした要素を考慮しないなんてあり得ないのですから。
二つ目の点、「投資」とは資本配分であること、について:
私は、経営者の機能を①キャピタルアロケーション(=どの事業に資源を配分するのか)と②ビジネスマネジメント(=選択した事業を適切に運営する)に分けることができると考えている。どちらも重要であることはいうまでもないことだが、現在のように変化のスピードが速い経営環境において、長期的な企業の姿を決定づけるのは、キャピタルアロケーションではないだろうか。ウォーレン・バフェット氏の言葉を借りるなら「どれだけ効率的に舟を漕げるかという点よりも、どの舟に乗り込むかという点が根本的に重要だ」ということである。
「京都企業が世界を変える 企業価値と株式投資(2015年)」
奥野さんのこの文章が強く印象に残っています。
「投資とは」:何に資本を投じるか、なんだ!
逆に言えば、何に投資しないか、選ばないか、ということだと思うのです。そう考えた時に、やはり、最初の「全部、買っちゃう、持っちゃう」という社長のやっていることは、「投資」ではないのかな、って考えるんです。
このように「投資とは」ということを考えさせてくれる会社が農林中金バリューインベストメンツさんなのです。
「投資とは」を自分の頭で考えられる若者を増やす「投資」
農林中金バリューインベストメンツさんのもう一つの特徴が、高校生や大学生にも「投資とは」を考える機会の提供に、非常に積極的なことです。私が出会った本は京都大学での講義を基にしたものです。
ここ最近は高校生にも。
私自身が高校生の頃に、奥野さんのこのお話が聴けていたら、、、(人生変わってたかも?)って思います。一方で、高校生当時の私が、奥野さんのお話をスポンジのように吸収できていたか?と冷静に考えると、ヤバいかもと思ったりもします。でも、そんなことはさして重要なことではないのです。なぜなら、こうした機会があるとない、ゼロとイチでは大違いだからです。奥野さんのお話を聴いて直ぐに「そうか!」と分かる高校生は少数派ではないでしょうか(今の学生さんが優秀で、意識が高いとしても)。でも、奥野さんのお話が脳の中のどこかのフォルダに格納されていればそれを読み出すことが出てくるはずです。それは大学進学後かもしれないし、就職活動の時かもしれない。でも、その際に、そんなフォルダが脳内に存在しない人との違いが出てくるのではないか、と。
奥野さん、農林中金バリューインベストメンツの皆さんの時間という資本をどこに「投資」するか、という意味で、若者たちを選んでいるのは非常に印象的ですね。
こうした機会を得て「投資とは」を自分の頭で考えることの出来る若者が増えることが日本の「投資」を変えていくのだと思います。
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「 わたしが応援する会社」シリーズです。
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