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剣と盾と装備の仕方と人にものを教えるということ

「出来る人」に「出来ない人」の気持ちはわからないという話を聞いた。その通りだと思うし、長年へっぽこながら店長をやってきて、人に教える時に心がけていることがある。それは、当たり前だけど、「相手は何もかもわからない異世界からきた冒険者」と思って教えるってこと。

ゲームボーイが流行り始めた時期、私は従姉妹にやらせてもらったテトリスに魅了され、クリスマスにゲームボーイを買ってもらった。当時テトリスはもう付属品扱いで、両親はもう1つソフトを買おうと思ったけれど、何がよいのかさっぱりわからない。そこで店員さんに聞くと「新発売ですよ」と「SaGa3」を勧められ、ゲーム初心者の私にRPGソフトがやってきたのである。

さて、説明書を読んでもわからない。当たり前である。なぜなら取扱説明書に書いてあることはRPGをやったことがある人に向けて書いてあるのだ。テトリスしかやったことのない私は、セーブの意味も何もかもわからないのだ。それでも自分なりにやってみて、年始に従兄弟のお兄さんにセーブのやり方なんかを教えてもらい冒険を続けていた。冒険も中盤に差し掛かり、だいぶやり方もわかってきたところで、はたと気がついた。この防具屋さんで売っているアクセサリー、麻痺にかからなくなるって書いてる?便利じゃない??そう、私は装備のやり方、装備という概念がなく、中盤まで初期装備だったのである。

実は、剣と盾だけは交換できてた。なぜなら、戦闘中に剣と盾を代える方法が説明書に載っていたから。説明書には装備とは何か、装備をする方法なんて載ってないのだ、当たり前すぎて、でも私にはそれがわからなかった。私は困り果てた。だって、麻痺にかからなくなるなんて、すごい便利。

私は意を決して、同じゲームを持っていると聞いたクラスの男の子に教えてもらうことにした。「あのさ、このアクセサリーってのを装備するにはどうしたらいいの?」と。正直、RPG経験者なら、何言ってるの?何がわからないの?レベルの質問である。しかし、彼は笑うことなく親切丁寧に、スタートボタンを押してメニュー画面を開くところから、「そうび」を選んでAボタン押して…と具体的にわかりやすく教えてくれたのだ。これ本当にありがたかった。ぶっちゃけ、メニュー画面を開けば、そこには「そうび」の文字がある。見りゃわかるに決まってる。でも、わかんないのだ。わからないってそういうもんだ。こうして、無事、私は麻痺にかからない快適な戦闘を手に入れたのである。

人にものを教える時に、この装備がわからなかった自分を忘れないようにしている。マニュアルを作る時も、相手が全くわからないのを前提に具体的にする。初心者には「これくらいわかるだろう」が全くわからないのだ。もちろん、いつもそうできる訳ではないし、え?装備なんか見ればわかるじゃん?って気持ちになることもある。でも、装備の仕方を教えてもらい、わかるようになった嬉しさを忘れたくないし、自分が教える相手にも笑顔になって欲しい。やり方を聞かれたら、そんなことが?とは思わずに、何度でも教えるし、丁寧に教えたい。

だってさ、麻痺にかからなくなるって本当便利だったのよ(笑)

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