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ブリ若魚ヤズの中華風カルパッチョ 陶器熟成の滋味深いワインの果実味

ブリの若魚、ヤズ。
成長につれ、モジャコ→ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリと呼称が変化するが、九州北部では15~20cmの魚体のものをヤズと呼ぶそうだ。フィシュルの定期注文で届いたのが、そのヤズを使った中華風カルパッチョ。

生食用で冷凍庫から取り出し、流水で10分少々解凍して盛り付け。冷蔵庫にキュウリが残っていたので添えてみた。

魚の味付けにはゴマ油、ラー油が効いていてしっかり中華風。厚切りで筋繊維が程よく残っていて一切れごとの食べ応えあり。タレがしっかり染みていて元々の身の色が写真では分かりづらいが、成魚になる前とはいえブリ。白色に血合い入った部分が混ざる。部位による食感と風味の違いが楽しい。若魚ということもあり脂のノリはさっぱり。この軽快な脂に合わせ、中華風味のタレが出過ぎないようにしっかりと調味コントロールされているのが嬉しい。

合わせたのはイタリアの缶入りスパークリングワイン(フリザンテ)、イタリア アブルッツォ州の白ワイン(マルヴァジア品種)、長野県の白ワイン(ソーヴィニョン・ブラン品種)。特筆すべき相性はマルヴァジア品種のもの。

アンフォラ、すなわち陶器の大型の壺のようなもので熟成されたワインで、ブドウのもつ旨味、風味を余すことなく引き出している。フラワリーな華やかな香りがぱっと広がり、それがごま油やラー油の中華風味が絶妙に調和。そのままヤズに入り込み、風味を際立たせてくれる。

このワインはファビュラス・フォエミネが手掛けたもの。過去にこの造り手のワインは人形町魚久の京粕漬けのお魚に合わせていた。この造り手のワイン、身体に染み込むように広がり癒される。それでいて2,000円少々とお買い得。次はこの造り手の赤ワインも買ってみたい。ボトルの背が高く、セラーの中での存在感がすごいのだがw

さて、ヤズの中華風カルパッチョとそれぞれのワインの相性について詳しく。


ファビュラス・フォエミネ, マルヴァジア, イタリア, アブルッツォ州, 2021, 12.5%, 2,266 円
Fabulous Foemine, Malvasia, Abruzzo, Italy

アブルッツォ、マジェッラ国立公園内に拠点を置き、ビオディナミ農法でブドウ栽培を行うワイナリー。国立公園内の標高600m、石灰質土壌の畑にある樹齢20〜25年のブドウを手摘みで収穫。収穫後、大樽で発酵し、アンフォラと木樽で3〜5ヶ月熟成。
エチケットに描かれるのはプレアデス星団(すばる)で、その中のMaja(マイア)星を女神に仕立てた伝説を題材にしたもの。マルヴァジア85%とその他の品種15%。

香りにはアプリコットリキュール、キンモクセイ、アカシア、香木。まるで香水のような華やかで甘美な香り。微かに白コショウのスパイス。ラムネ飲料のような爽やかな甘い香りも。
味わいには瑞々しく溢れるブドウの滋味、上品な甘さとメリハリのある酸味。余韻の微かな渋みとほろ苦さが引き締める。飲みつつも鼻腔をムンムンと甘美な香りが抜けていく。

ヤズの中華風カルパッチョにワインを合わせる。ワインに含まれるアンズやフラワリーな香りが、ごま油、ラー油の効いた中華風タレの香りに絶妙に調和。そのままワインの滋味が磯のフレーバーのややはっきりしたヤズの風味にも踏み込んでいく。ヤズの奥から広がる少しワイルドな磯の香りをも優しく包み込む懐の広さ。
相性: ★★★★☆


ノヴァワイン, スパークリング・ホワイト・ワイン, ヴィーノ・フリザンテ, 219円(250ml)
Nova Wine, Sparkling White Wine, Vino Frizzate, Italy, 10.5%

イタリアを代表する生産者協同組合『テッレ・チェヴィコ社』。ローマ時代よりワイン造りが盛んなエミリア・ロマーニャ地域の複数の生産者協同組合を取りまとめて1963年に設立。BacardiやMartini、Campari等の大手メーカーのバルクワインサプライヤーでもある。

微かにグリーンがかった淡めの色調。開栓して約15分で外観上の泡の立ち上がりはほぼ消失。
香りには控えめにグレープフルーツ、ライム、どちらかというと柑橘果皮のビターなフレーバーをはっきり。ほしわらやヴェジエタルな香りも。フレッシュでシンプル。
味わい。プチプチと心地よい泡の刺激、凝縮感は軽快で柔らかい甘みあり、チャーミングさがふわり。酸味は穏やか、余韻にほろ苦さも軽快に残りドライでフードフレンドリー。

ヤズの中華風カルパッチョに。果実味のチャーミング甘みがヤズの磯の香りにぶつかってしまい、若干生臭みが立ちあがってしまう。相性: ★★☆☆☆


ベリービーズワイナリー, Zephyr, Sauvignon Blanc, 長野県塩尻市(ブドウは安曇野産), 2020, 12%, 2,420

日本のおへそ(belly)に位置する塩尻から、輝くビーズの輪のように、ぶどうやワインを介して人をつなげていきたい、との思いが込められたベリービーズワイナリー。2018年創業。エチケットがスタイリッシュでおしゃれ。品種ごとにイラストを使い分ける。実際のお味も素晴らしいクオリティのソーヴィニョン・ブラン。

香りにはカボス、スダチ、ライム。柑橘の果皮。穏やかで繊細、微かに白桃や梨。セルフィーユ系の明瞭なハーブ香。フレッシュでピュア、コンパクトに涼やかに品種個性を凝縮。
風味はみずみずしい口当たり、明瞭な酸味、前半からビターネスが広がり一貫してドライでフレッシュ。前菜の葉物系のサラダメニューにぴったりのスターターワイン。

ヤズの中華風カルパッチョに。味付けのごま油、ラー油の中華の香味に、ワインの品種個性の爽やかなハーブ香が調和。ワインとヤズとのシナジーにまでは発展しないか。相性: ★★★☆☆

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