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映画「シン・ウルトラマン」を見てきた(ネタバレあり)

面白すぎる――。⁡⁡
中学卒業後9年間は数えるくらいしか映画館で映画を見ることがなかった。⁡⁡
間違いなく一番面白い。⁡⁡
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禍威獣“ネロンガ”出現からウルトラマンが初めて地球に来て倒し飛び去るまで、一息で駆け抜けるかのような冒頭からの演出で、完全に惹き込まれた。⁡⁡
ネロンガがエネルギーとして、電力を吸収しに来た変電所は本物そのもので、パンタグラフ形の気中断路器が開放するシーンもリアルに違いなかった。⁡⁡
「さようなら全てのエヴァンゲリオン ~庵野秀明の1214日~」エピソード1(前編)で庵野さんは、電柱の美しさを話していたが、変電所や送電鉄塔にも同じように興味を持っているのだろうなと感じた。⁡⁡
また、ネロンガを倒し、ウルトラマンが飛び立つシーンでは、飛行するウルトラマンの周りにベイパーコーンが発生していた。⁡⁡
以前、自衛隊の航空祭を見に行った際にF-16のベイパーコーンを肉眼で見て、調べたことがあり、知っていただけに嬉しくなった。⁡⁡
左隣の友達に「やばっ、面白い」と思わず耳打ちするほど。⁡⁡
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ウルトラマンが主人公“神永新二”と融合してからも面白さの勢いは止まらない。⁡⁡
外星人第2号“ザラブ”を倒すところまでで、おそらく全体の半分くらいだと思うが、すでに映画1本分の満足感を得た気分だった。⁡⁡
それほど内容が濃い。⁡⁡
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今までウルトラマンのシリーズを見たことはほとんどなかった。⁡⁡
知識も、小学生の頃に初代プレイステーションのソフト「PDウルトラマンインベーダー」を兄と遊んだくらいのものしかない。⁡⁡
今回見ようと思ったきっかけは、Amazonプライムビデオで「庵野秀明+松本人志 対談」を見たからだった。⁡⁡
ただ、ミニチュアのセットを舞台にウルトラマンや怪獣を人が演じていたことは知っていた。⁡⁡
当時の映像を目にすると、建物は高いものでせいぜいウルトラマンの腰くらいまでしかない。⁡⁡
しかし、シン・ウルトラマンではウルトラマンの背をゆうに超え、乱立する高層ビルに挟まれ戦う。⁡⁡
視覚的に捉えられる時間的変化に衝撃を受けた。⁡⁡
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「庵野秀明+松本人志 対談」エピソード2(対談後編)で庵野さんは、ウルトラマンのしぐさが好きで、ウルトラマンの存在などそのものが好きという内容を話していた。作品への愛、または、遊び心なのか、劇中で笑ってしまうシーンが多々あった。⁡⁡
ザラブ扮する、にせウルトラマンとの取っ組み合いに人間味を感じたり、空を飛ぶザラブの真下を同じ速度で背面飛行するウルトラマンが、間近でスペシウム光線を放ったり、本人同士は真面目なはずだが、どこかコミカルに見えてしまう。⁡⁡
劇中の動画投稿サイトで神永新二が変身する様子を見つける場面では、初めは遠目に後ろ姿が写るだけで誰だかわからなかったが、次々にアップされる動画で、最後には顔までばっちりと写っている。⁡⁡
周りは森のはずなのに、なぜか撮られているし、アングルが無数に変わっているところに笑ってしまった。⁡⁡
他にも、外星人第0号“メフィラス”が日本政府との交渉の際に、大きい画面を空中に一つ出すのだが、一人ひとりの前にも小さい画面を出してくれて、その気づかいにシュールさを感じた。⁡⁡
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メフィラスが姿を現してからは、高度な技術をめぐる日本政府との交渉や神永新二との会話内容など、物語が少し難しく、オリジナルのウルトラマンを見てからまた映画館へ見に行きたくなった。⁡⁡
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ウルトラマンはメフィラスとも戦うこととなるのだが、一連の場面で心臓が縮み上がってしまった。⁡⁡
戦いはメフィラス優勢であったが、ウルトラマンの背後に光の星からの使者“ゾーフィ”を見つけたメフィラスは、企みを諦め姿を消す。⁡⁡
メフィラスが見た、遠くで立ちすくむゾーフィが、どこか不気味でゾッとした。⁡⁡
見えてはいけないものが見えてしまったような感覚がして、ホラー映画の次にくるであろう観客を驚かす展開を連想し、無意識に身構えてしまった。⁡⁡
その瞬間、右に1つ空席を挟んだ1m先を幼稚園児くらいの小さい男の子が階段状の通路を駆け降りた。⁡⁡
気配がなく、視界の端に飛び込んできた高速で動く影に、体がビクンと反応してしまった。⁡⁡
声は出なかったが、タイミングが良いのか悪いのか、身構えた直後で驚きを隠せなかった。⁡⁡
もちろん作品のなかにホラー的な展開は出てこない。⁡⁡
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作品はクライマックスへと向かい、天体制圧用最終兵器“ゼットン”が生成していく。⁡⁡
恐ろしいはずの存在だが、宇宙空間と太陽を背景に組み上がっていく映像は、美しささえ感じた。⁡⁡
現実のような映像に没頭し、ウルトラマンをはるかに凌ぐ大きさと隙間のある構造には、真の姿はこうなっているのかと府に落ちるようであった。⁡⁡

ゼットンを倒す方法は、ウルトラマンも不明な平行世界へ飛ばされかねないというもの。⁡⁡
それを知ってもなお、神永新二改めウルトラマンは自らを犠牲にして、その作戦に向かう。⁡⁡
このあたりから、ウルトラマンは本当の孤独な存在なのだと感じ、感傷に浸り始めた。⁡⁡
「生きようとすることは死を受け入れようとすること」のような人間の考えに魅せられ、人間を理解しようとするウルトラマン。⁡⁡
そして、人類を守るため、一人で強大な敵に立ち向かう。⁡⁡
シン・ウルトラマンは庵野さん自身なのではないのか――。⁡⁡
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ウルトラマンが、不明な平行世界に引き込む力に抗い飛び続けるシーンでは、そこに生きる意思を感じ、最もパワーが出ると思われる正しい姿勢で飛ぶ姿と、モノクロの背景、変わらない表情に色々なことを考えさせられた。⁡⁡
誰もいない宇宙の彼方に取り残される恐怖から、孤独に脱出しようとする。⁡⁡
もの悲しい。⁡⁡
力になれることはないし、かけられる言葉もない。⁡⁡
映画館全体も静まり返り、画面に釘付け、ウルトラマンの頑張りの行方を見守るしかなかった。⁡⁡
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エンドロールに流れる米津玄師の「M八七」は、余韻に優しく沿い、徐々に現実へと心をとかしてくれるようだった。⁡⁡
それでも見た内容はしっかりと鮮明に残っていて、とてもいい曲だった。⁡⁡
「さようなら全てのエヴァンゲリオン ~庵野秀明の1214日~」エピソード2(後編)で大学時代の友人、神村靖宏さんのインタビューの中で、庵野さんに対して、アニメでご飯を食べていく以外ないと初めから思っていたが、実は日本一だった、という内容の話があった。⁡⁡
アニメの監督も有名な方は多いのだろうけどなと聞いていたが、シン・ウルトラマンを見て、その考えは払拭された。⁡⁡
この映画は庵野さんいなくして創れない――。⁡⁡
日本一ということに納得した。⁡⁡
そして、「庵野秀明+松本人志 対談」エピソード1(対談前編)の冒頭で松本人志さんが庵野さんの印象を話す中で、ハイペースで作品を見たいと思っちゃう、という言葉があり、同じ思いを抱いた。⁡⁡
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社会で働き始めて4年が経ち、世の中を少しずつ理解してきた年齢で、庵野さんの作品を映画館に行って見られることは幸運に感じる。⁡⁡
――はたまた、奇跡なのかもしれない。⁡⁡

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