入院中に人生初の感謝状をもらって、恩送りに思いをめぐらせた話
世の中にはまだまだ知らないことがたくさんあって、全身麻酔で手術をするとき、呼吸機能が低下するってことを40歳手前にしてはじめて知った。
全身麻酔って、ただただ眠っているだけだと思っていたな。必要な体の動きも弱くなっちゃうんだね。口から気官チューブを挿入して、人工呼吸になるんだね。
先日、あれよあれよという間に全身麻酔での手術を受けることになり、こんな感じでたくさんの「人生初」を体験しました。気管チューブもそのひとつ。そのおかげではじめての感謝状まで手に入れたのだから、人生って面白い。
助けてもらいながら、人助けしちゃった
おそらく通常は麻酔科の医師が、病院施設の中で行う気管挿入。でも、ときには救急救命士が人命救助の一環でこの処置を行う場面があるんですって。
でね、救急救命士の気管挿管実習を私の手術でやらせてほしいと頼まれたんです。人形を使っての練習ももちろんしているけれど、実際に実習をして訓練を積むのも必要だから。
安全に実施できるよう決められているルールのことなど説明してくれて、命を救える人を増やせるなら!と引き受けました。どうせ、麻酔で眠っている間の出来事だしね、とわりと軽い気持ちで。
どきどきしながら迎えた手術当日。
「うわー、手術室の天井の照明って、本当にテレビでみるようなやつなんだ」とか思いつつ、複数の看護師さんたちがテキパキと準備を進めていくのに圧倒されちゃった。その隙間からしっかり挨拶してくれた救命士さんにぎこちない返事をして、手術がスタートしました。
全身麻酔なので手術中の記憶は全くなく、気がついたら病室のベッドの上。体の状態を見にくるやら薬の説明やら、思ったよりもしょっちゅう看護師さんがやってくるんだなーなんて思っているところへ、「失礼します!」と看護師さんではない人の声が聞こえてきて。
すぐにはわからなかったのだけど、それは、手術のときに気管チューブを挿管した救急士さんでした。「感謝状をお持ちしました。」って。
すっかりそのことを忘れていたし、そんなのもらえるなんて思ってもみなかったし、まだうまく体を動かせなかったからぼんやりしたまま受け取ったのだけど、あとからじんわり嬉しさがこみあげてきたのね。
私は手術で体を助けてもらうばかりだと思っていたけれど、人の役に立つこともできたんだなって。
感謝で回る世界
私が受けたのは目の手術。術後は目をつぶっている時間が長かったせいもあって、その後もふわふわと考えを巡らせていたら、「世界は感謝で回っているな」と思えたの。
私が受けた手術自体、過去にいるたくさんの人のおかげなんだ、と。
今回の手術は眼の筋肉を触るから「ものすごく痛い手術です。局部麻酔では足りないから、全身麻酔をします」と説明されていて。
眼科の先生たちも、麻酔科の先生も、看護師さんも、みんなおんなじこと言うからさ、「聞くだけで怖いからこれ以上言わないで!」って思ってた。
でもこれって、過去に痛い思いをして手術を受けた人たちがいたから、私は同じ思いをしなくてすむってこと。たくさんの患者さんや医療関係者の人たちが積み上げてくれたおかげなんだ。
ほんと、過去の人たちありがとう!
それを受け継いで、いま私に治療を施してくれる人たちもありがとう!
そんな私が感謝状を受け取ったということは、私も誰かの「ありがとう!」の対象になれたってこと。
誰かから受け取った恩を、他の誰かに渡していく。入院中の感謝状が、恩送りで回っていく世界を見せてくれました。
記事を読んでくださってありがとうございます。いただいたサポートは、書籍購入費用に充てます!良い読書は良い文章を創る。記事を書いて還元いたします。