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遊び心と地元愛"藤森照信 高過庵 低過庵"

いつかは体験したいと思っていた、藤森建築。
藤森氏の出身地である長野県茅野市に作った3つの茶室、「高過庵」「低過庵」「空飛ぶ泥舟」。
近代建築史を始めとした建築史家で知られる藤森氏が45歳から建築家としてデビューし、その後58歳の2004年に高過庵が完成。
私は大学時代に建築史の研究室だったため、藤森さんと言えば史家、というイメージご強かったが、彼が生み出す建築は史家ならではの奥深さがある。
そして誰しもが子供時代から夢見た、「木の上に立つ隠れ家」のような建築は見る人をワクワクさせる。


今回は特別に中まで入ることができた。
地元の人たちからも愛され、地元の人たちによって手入れをされている、地元に根付いた建築を紹介したい。


1.辿り着く楽しさ「高過庵」

高過庵
高過庵
高過庵

守屋山の麓に2本の木によって支えられて空中に建つ「高過庵」。梯子も踊り場にさりげなく架けられていてかなり心許無い。
構造体となる2本はクリの木でこの場所に自生していたものではなく移植したもの。移植するならもう少し安定感があるものを選べば良いのに、とも思うが、2本でしかも細く何とも不安定な感じが周辺の景色によく馴染んでいる。
地元の自然素材で表層を覆うことにこだわる藤森氏は、壁面を荒々しく土の刷毛塗りに屋根は銅板で仕上げている。
建築物としてはシンプルな茶室で必要な機能が形質化している。しかしながら、それが地上6mに浮遊しているのは不思議だ。

2.オープンエア茶室「低過庵」

低過庵
入口
茶室
可動する屋根

高過庵の足元に埋め込まれたように建つのが対をなす低過庵だ。
屋根の一部から屈んで茶室に入る。竪穴式の茶室になっていて、漆喰と木壁がボーダー状になる内部壁の雰囲気はモダンで清々しい。そして屋根につながる紐をグッと引っ張ると、屋根上部がスライドし、茶室が一瞬にして屋外空間となる。
茶室は茶の湯の文化が日本的感性で確立し、建築様式として発展していったもので、アプローチから細部に至るまで所作に応じた設えが存在するが、この茶室は元来の様式を踏襲した上で遊び心があり、こんな空間でお茶を点ててみたいと思う魅力的な空間に仕上がっている。

3.ジブリの世界「空飛ぶ泥舟」

空飛ぶ泥舟
支柱
内部

今回の3部作で最も中に入るのにスリルを味わったのが宙に浮く、正にジブリに出てくる宇宙船のようなフォルムをした「空飛ぶ泥舟」だ。
両サイドにある2本ずつの支柱から延びたワイヤーによってのみ支えられている。
表層へ高過庵同様に銅板屋根と土の刷毛塗りだ。
内部は尖頭アーチ型のフレームに対してしっかりと天井が組まれている。マシュマロがくり抜かれたような炉もあり、正真正銘の茶室だ。
梯子で登るのも怖かったが、登った先の入り口が狭く、体を滑り込ませるように内部に入らなければいけない。

環境に良い、とかサステナブルとか騒がれる大分前から藤森氏は以前から叶えたかったものを親しい地元のメンバーと地元の素材を使って作っていった。それはごく自然な事象のようにそこに佇んでいた。

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