見出し画像

何度も「やってみせ、言って聞かせて」も、できない人はいる

人を育てるときの心得として、山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」という名言があります。

実際に現場でのOJTでも以下のステップで進めていきますので、山本五十六の言葉はまさしく指導の大原則と言っても過言ではありません。

1.指導する側がきちんと手本を示す(やってみせ)
2.やり方を丁寧に説明する(言って聞かせて)
3.本人に実践させる(させてみて)
4.できているところと、できていないところを伝える(ほめてやらねば)

しかし、「OJT」をテーマにした研修を行うと、指導する立場の人から以下のような悩みをよく聞かされます。

現場で新人に業務を指導するときに、いくら丁寧に説明しても、目の前で何度も実演してみせても、全然できるようにならない。

同じことを何回説明しても正しいやり方を一向に覚えてくれないので、もうどうしてよいかわからない。

すなわち、「やってみせ、言って聞かせて」の段階で躓いてしまい、「させてみて」も全然できないので、褒めようがないという状態です。

こうなってしまうと指導する側はもはやお手上げで、「仕事の覚えが悪いから仕方ない」と諦めてしまいます。

ここで「普段は具体的にどういう言い方で、どのように指導していますか?」確認してみると、当人は「やってみせ、言って聞かせて」いるつもりでも、実は2つの思い込みがあることがわかりました。

「これぐらい見ればわかる」という思い込み

何らかの動作を教えるとき、どのように教えているのか実演していただくと、多くの人は「私がやるのをよく見てて」と言ってその動作を行ってくれます。

例えば野菜の炒め方を教えるときに、「こういうふうに野菜を炒めてね」と言いながら手を動かすイメージです。

手の動かし方は至ってシンプルな動きなので、教えるほうはつい「これぐらいの動作なら説明不要で、見ればわかるはず」と思ってしまいます。

しかし、初心者にとってはいくら簡単な動作でも見ただけで習得するのは至難のわざであり、手を動かすときの力加減、スピードなど全くイメージがつかないため、一見シンプルな動きでも真似することはできません。

教える方は「見ればわかる」と思って何度も実演しますが、教わる方は一向にうまく再現できないため、教える方は「何でこんな簡単な動作もできないの」とイライラし始めます。

こうなってしまうともはや先には進みません。

世の中には見ただけで真似できる人はいますが、それはあくまで少数派であり、多くの人は見ただけではわかりません。

相手が一向に覚えてくれないなら、「これぐらい見ればわかる」とは思わずに、実はわかっていないと思って言葉による詳細な説明を入れながら「やってみせる」必要があるかもしれません。

「これは言わなくてもわかる」という思い込み

もう一つの思い込みは「このぐらいは常識なので、いちいち言わなくてもわかっているはずだ」という思い込みです。

例えば、新人に「やむを得ない理由で遅刻するときは連絡するように」と指導したとします。

教える方は「電車の遅延などで1分でも遅れるとわかった場合は、電話で連絡すること」は常識と思っているのでいちいち言葉にはしていませんが、相手は同じ常識を持ち合わせているとは限りません。

それこそ、やむを得ない理由とはどのようなケースか、何分遅れたら遅刻になるのか、連絡するときはどのような方法で連絡するのか、まで説明しないと、相手は期待通りの行動が取れません。

もしいくら指導しても相手が正しい行動を取ってくれない場合、いちいち言わなくてもよいことをわざわざ言葉にして「言って聞かせる」必要があるかもしれません。

「やってみせ、言って聞かせて」は本来根気がいること

人を指導するとき「やってみせ、言って聞かせて」は最も重要な部分ですが、単に「やってみせた、言って聞かせた」だけでは相手はよくわからない可能性があります。

人によって理解力も理解の仕方も違いますので、自分のペースで「やってみせ、言って聞かせて」ではなく、相手がわかるようになるため何度も軌道修正を行い、相手に合わせた「やってみせ、言って聞かせて」を実践するとよいかもしれません。

人の指導は本来簡単なことではなく、根気がいることだと思って取り組んだほうがよい結果につながると思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?