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職場で起きる”やっかいな問題”は「誰も悪くない思考」で考えてみる

企業が社員に対して研修を行う理由は大きく2つあります。

1つ目はシンプルに「社員の成長のため」ですが、これは如何せん緊急性が低い話なので、研修を企画するほうも受講するほうも気長に考えることができます。

私がよく関わるのはどちらかと言えば2つ目のほうで、それは「人の問題が起きたので何とかしたい」という理由です。

例えば、社員が不適切なことをする、会社の方針が守られない、人が定着しない、仕事に対する意欲が低い、といった企業として看過できない問題が起きたとき、「社員に行動変容を促す」という目的で研修を行います。

こういう場合は緊急性が高い話なので、企画する側はどうしてもすぐに結果を求めてしまいますが、その際に陥りがちなのが「誰かが悪い思考」です。

つまり、職場で何か問題が起きる裏には「悪いことをする人」がいるので、そいつに「お前が悪い」ということを理解させ、本人に「悔い改め」させて「行動を改めて」もらうことが問題解決につながるという考え方です。

一見ごもっともに見えるかもしれませんが、私の経験上この考え方で成功したケースは皆無です。

というのも、この考え方で研修を企画するとこうなります。

  1. 対象者に対して「あなたの考え方や行動は間違っている」と突きつける

  2. 本来あるべき「正しい考え方や行動」を教える

  3. 本人に職場での行動を変えるよう促す

一方で、「あなたの考え方や行動は間違っている」と突きつけられて「はい、私が悪うございました」と素直に受け止めてくれる人は残念ながらほとんどいません。そういう”徳の高い人”はそもそも最初から問題を起こしません。

小さい子供ならいざ知らず、働いている人は皆自分の意志がある”大人”なので、ほとんどの人間は他人に責められると表向きは反省しているフリをしても心の中で「ふざけんなこのやろー!」と反発してしまい、むしろ問題から目を背けてしまうので余計解決から遠ざかってしまいます。

部下に暴言を吐く上司も、指示通りに動かない部下も、他人からは問題行動に見えるようなことでも本人にはそれをしてしまう理由があるため、単純に本人を責めても簡単には行動を変えられません。

そこで、発想を変えて「誰も悪くない思考」で考えてみます。

すなわち、職場で問題が起きる裏には「社員にそうさせてしまう構造」があり、個人をいくら責めてもその構造に目を向けないと行動が変わらないという考え方です。

具体的な例は現場で数字の改ざんなどの不正を行うケースです。

不正を行っているのは確かに特定の社員ですが、そうさせてしまっているのは厳しい数値管理と評価制度であり、正直に申告して給料を大幅に下げられるぐらいなら、バレるリスクを承知で改ざんしてしまいます。

この場合、不正をした社員が悪いわけでも、会社の制度が悪いわけでもありません。たまたまプレッシャーに弱い人がガチガチに管理された組織に入ってしまったがために起きた不幸な出来事と言えます。

この考え方で研修を企画するとこんなイメージになります。

  1. 起きている問題について客観的な事実を伝える

  2. 問題行動を取ってしまう事情を考えていただく(構造に目を向ける)

  3. 自分自身の行動を振り返っていただく

  4. 職場の問題を解決するうえで何が最善か考える

  5. 現場で新たな行動を実践するためのコツを伝える

平たく言えば、誰も責めない形で無理のない範囲内で行動変容を促すというアプローチです。

この考え方で研修を行えば少なくとも話は聞いてもらえます。
話を聞いてもらうことで職場で起きている問題に当事者として目を向けていただくことができるようになります。

そして「私は別に悪くないけど、今度からは少しやり方を変えてみようかな」と思っていただければ大成功です。

ということで、職場で”やっかいな問題”が起きるとつい「犯人捜し」をしたくなるかもしれませんが、犯人扱いされた人が大人しく従うはずもなく、むしろ逆効果になってしまいますので、安易な犯人捜しに走らない「誰も悪くない思考」のほうが結果的には問題の早期解決につながるのかもしれません。

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