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【姉枕】むわむわと、しのびよる。



 お母さんがいなくなると、家の中にまたあの匂いがし始めた。
 すすけた畳や、色あせた柱、雨漏りの染みが広がる天井、しめきった押し入れのわずかな隙間からも、磯に似たあの匂いが、むわむわとしのびよる。近親相姦という犬畜生にも劣る性臭が、幸せな生活の中に、少しずつこびりついていくような不安。
 お母さんの言い残した言葉が死神のように、僕の背後にまとわりついていた。
 十八時を過ぎても七月の空はまだにわかに明るい。蛍光灯はまだついておらず、小さな窓から差し込む日差しのなか、僕はしばらく畳の上に置いたホールケーキを黙って見つめていた。


第三章「粘膜………………十六歳」より


4月5日発売 定価 770円

楽天ブックス、DMMブックス、コミックシーモア、U-NEXT、紀伊国屋書店、Googleブックス、Kindleなど40以上のオンライン書店で発売。
現在、先行予約も受付中です。

匠芸社・シトラス文庫刊

表紙デザイン……彼女、
モデル……………ちづ姉さん
撮影………………夢路歩夢
編集………………若林育実
著者………………柚木怜

出版社  匠芸社
レーベル シトラス文庫


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ブックライブ

【作品紹介】

生まれた時から父はおらず、飲んだくれのふしだらな母は愛人の家に入り浸りで子どもの待つ家にはたまにしか帰ってこない。そんな家庭環境で育った春吉は幼少期に、五歳年上の姉・夏子が「してくれたこと」をずっと忘れられないでいた。

『明君のお母さんと僕』『お向かいさんは僕の先生』などノスタルジー溢れるポルノ小説でおなじみの、郷愁の官能作家・柚木怜が綴る──貧しい生活の中でも逞しく生きようとする、姉弟の禁断性愛ストーリー。


著者プロフィール

柚木怜(ゆずき・れい)

京都出身、東京在住。1976年生まれ。
23歳の頃よりフリーライターとして、週刊誌を中心に記事を執筆。30歳の時、週刊大衆にて、初の官能小説『白衣の濡れ天使』を連載開始(のちに文庫化されて『惑わせ天使』と改題)。
おもに、昭和末期を舞台にしたノスタルジックで、年上女性の母性溢れる官能小説を手がける。
また、YouTubeチャンネル「ちづ姉さんのアトリエ」にて、作品を朗読配信中。

著書

『惑わせ天使』(双葉社)
『おまつり』(一篇「恋人つなぎ」 双葉社)
『ぬくもり』(一篇「リフレイン」 双葉社)
『初体験』(一篇「制服のシンデレラ」葉山れい名義 双葉社)
『明君のお母さんと僕』(匠芸社 電子書籍)
『お向かいさんは僕の先生』(匠芸社 電子書籍)
『キウイ基地ーポルノ女優と過ごした夏』(匠芸社 電子書籍)
『邪淫の蛇 女教師・白木麗奈の失踪事件 堕天調教編』(匠芸社 電子書籍)
『邪淫の蛇 夢幻快楽編』(匠芸社 電子書籍)

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