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「排泄動作の要素」PT・OTが人としての尊厳を守るための動作分析

こんにちは。ReHub林です。

排泄動作についてあれこれ考えているとトイレに行きたくなってきましたが、我慢しながらこれを書いています。

「人としての尊厳」と言われる割に情報が少ない

様々な書籍の排泄動作に関する情報を調べたところ、多いのは膀胱直腸障害などの排泄コントロールの内容ですね。
その他では方法論。ズボンを片手で下ろす手順やその練習方法が記載されていました。
機能的な部分では、バランス能力が重要とか、下肢筋力との関係性についてなどが書かれています。

動作関連はビックリするほど少ない!

「人としての尊厳」
とまでみんなで言う割には情報が少ないのはなぜ?

ということで、今回のテーマは「排泄動作」です。
詳細を深く掘り下げすぎると収集がつかなくなるため、この記事では、排泄動作にはどんな要素があるのかをまとめました。
各要素と治療応用の考え方については、随時更新していきます。
(活動の要素を抽出する視点についての動画👉コチラ

排泄動作の要素

・上肢による便座の操作
・ステップ(ピボット)による方向転換
・上肢による下衣の操作
・上肢、体幹、下肢の協調性
・下衣の剛性、弾性、張力の検出
・下衣の摩擦刺激と皮膚の反応
・立位(座位)バランス
・(着座)
・ペーパーの固定と固定からの解放(ちぎる)
・清拭による摩擦刺激
・排泄による緊張からの解放
・(立ち上がり)


いかがでしょうか?
あなたが頭に浮かべた要素には、他にもまだあるかもしれませんが、概ね網羅できているかと思います。
このうち、「下衣の摩擦刺激と皮膚の反応」についてはYouTubeで先行して動画をアップしています👉コチラ

転倒リスクが高いのは、「方向転換」と「下衣の上げ下げ」のタイミングですね。
この二つに共通することは「立位」「空間の広がり」、共通しないことは「衣服の操作」。

排泄動作におけるバランス能力とは、詰まるところ「上肢・体幹・下肢の協調性」「摩擦刺激に対する身体反応」がトイレという空間内で発揮されるところにあります。
もちろん一般的なバランス能力が向上すれば、この点も改善します。
しかし、この排泄動作の中でバランスを保持するということと、バランスボードの上でパランスを保持するということは要素が異なります。

衣服の操作には、上肢の巧緻性とそれを保証する中枢部の安定性、下衣の摩擦刺激に対する臀部を中心とした探索活動や姿勢制御の反応といった要素があります。

👉あなたの患者が方向転換・下衣の上げ下げの両方で転倒リスクが高いとしたら、果たして同じ問題で二つとも危ないのでしょうか?
それとも、それぞれ違う要素に問題が生じているのでしょうか?
もし同じ要素なら下衣の上げ下げへの介入で方向転換も良くなるはずですね。

このように要素を細かく分けるだけでも患者の動作を評価する手がかりとなります。

まずは、患者が排泄動作の中のどんな要素で問題が生じているかを細かく分けて考えてみましょう。

次に、今回挙げた要素の中で、「ペーパーカット」と「排泄による緊張からの解放」について、今のところ各論で取り扱う予定はございませんので軽く触れておきます。

トイレットペーパーをちぎる

排泄動作の要素

ペーパーカットについては、特に麻痺のある患者に対するアプローチで配慮が必要な点です。片手でトイレットペーパーをカットする方法などは、書籍でも扱われているため省略致します。
ここでは、[紙]の操作についてです。
トイレットペーパーは水に溶けやすく、非常に柔らかいです。その性質から、わずかな張力で破断してしまいます。
感覚鈍麻がある人にとっては、フィードバックが得られにくい素材とも言えるでしょう。これが広告チラシならどうですか?まとめた新聞紙ではどうでしょうか?

また、引っ張って破断させるのと、捻りを加えてちぎるのとでは、紙から得られる抵抗感や破れた時の紙から伝わる感触など課題特性が異なります。

👉素材の目の粗さと硬さが違うということは得られるフィードバックも違うということですよね。上肢活動の治療に際し、素材選びというのは非常に重要なポイントです。
選んだ素材は、どう扱えば狙ったフィードバックが得られるでしょう?これも課題を設定する上で重要です。
素材の性質という視点で、あなたが治療で提示している情報を整理してみると面白いかもしれません。

「緊張からの解放」

動作の獲得に関して、“「意図・情動・動機」をコントロールして、神経系のループ回路を回してあげることが治療介入において重要である“と和歌山県立医大の木村先生が述べられています。

ReHubが活動場面での介入を推す理由はここにあります。セラピストらしいいわゆる運動処方というのは、この視点が抜けていることが多く、ちょっと修行っぽいですよね。

この3点を最も同期させやすいADLは、「食事」と「排泄」です。それぞれ生命活動として必ず欲求が生じます。
排泄に限って言えば、後回しにしにくく「今すぐ!」という状況が多いですよね。時間的に切迫した状態や、排泄した後の安心した状態、スッキリした状態など、緊張状態からの解放が常にあります。

セラピストには、治療のタイミングで「トイレに行きたい」と言われるのを嫌う人も多くいますが、ぜひ評価・治療の大チャンスと捉えて排泄に関わってみてください。
きっとリハビリ室では見られなかった新しい発見があるはずです。

「究極の選択」

排泄動作の要素2

私は、何年も前に、旅行でバスに乗っていた時、催したため我慢していました。しかし次の休憩地点まではかなりの時間がありました。
刻一刻と限界が近づき、ついには冷や汗と尿道括約筋の痙攣が起こり始めました。
もはや数分ももたない状況。

目の前には空のペットボトル。

身体が限界を迎えるその時を受け入れるのか、新たな道を切り開くのか。
いや、どちらも社会的に受け入れ難い。

物凄い葛藤が頭の中を反芻し、選択を突き付けられました。
結果としては、タッチの差で私の括約筋が勝利し、尊厳は守られました。

多くの患者が、あの受け入れ難い選択を毎日のように突き付けられているかと思うと、非常に辛いです。
さらに、患者の多くが諦め以外に選択肢が無いという事実もまた、胸が締め付けられます。

ReHubでは、「動作」の視点から排泄について述べますが、このnoteが皆様の人としての尊厳を守る関わりのお役に立てれば幸いです。


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