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ベルンシュタイン 動作構築の4段階 PT・OTのための動作分析

こんにちは。ReHub林です。

姿勢・動作を観察する前に、どんなことを意識しますか?
挙げ始めるとキリがないのではないでしょうか。

動作分析関連の書籍には、各動作の観察ポイントが多く記載されているため、それらを想起することもあるでしょう。

しかし、そんな観察ポイントより以前に考えるべきことがあります。
今回はベルンシュタイン氏の提唱する内容に則って、「動作を観察する”前”に何を考えるべきか?」を解説します。

ベルンシュタイン”動作構築の4段階”

ベルンシュタインは、運動の「巧みさ」を、全身的な活動と捉え、その心理、発達面も踏まえて解説した「デクステリティ 巧みさとその発達」を1940年に書いたとされています。

その中で、運動スキルの獲得を以下の4段階に階層化しています。

①筋緊張レベル
②筋ー関節リンク(シナジー)=基本動作レベル
③空間(環境に対して行われる運動)=動作レベル
④行為レベル(臨機応変な巧みな行為)

ベースとなるのは筋緊張レベルです。階層構造ということは、ベースとなるレベルが上のレベルを保証するということです。
そして、基本動作レベルの能力が動作レベルの能力を保証し、動作レベルの能力が行為レベルの能力を保証するということです。

この階層化について、冨田昌夫先生は「臨床動作分析」の中で、基本動作と生活動作を同列に考えるべきではないとも述べています。

これら4階層それぞれについても少しだけ解説しておきます

筋緊張

筋緊張のレベルを見るということは、静止姿勢を見るということです。重力下で姿勢を保つために、筋緊張を一定に保っています。
一般に、静止姿勢を観察する時、アライメントから緊張の高さや拘縮などを予測して動作への影響を考えるということが多いでしょう。

しかし、重力に適応して姿勢を保つということは、主動作筋と拮抗筋の緊張バランスを流動的に調節しているということです。
静止姿勢を見る上でも、”動き”としてどう捉えるかが重要となります。

そのため、筋緊張を見るポイントは、静止姿勢を見ることに加えて、動きを加えた時に、これらの緊張のバランスを保つために動きに適応して変化できるかどうかが重要です。

基本動作

このレベルでは、筋と関節の協調が基本動作を円滑なものとする段階です。
ここでは、重力の方向性を知覚することを基本として視覚や触覚などの情報も統合した上で、自身の動きを知覚します。
自身の動きとその動きに対して環境から返ってくるフィードバックの関係性から、基本動作を習得していきます。

ヒトの発達過程からも分かる通り、ここまでに紹介した筋緊張、基本動作(筋ー関節リンク)がヒトの動作の基礎となります。

動作

動作レベルでは、ADLを想像してもらえると分かりやすいでしょう。目的動作の対象が存在します。基本動作では支持面と自己身体との関係性の中で動きます。ADLでは、それに加えた対象物との関係性の中で動きます。
服を着る時は服、排泄する時はトイレ、食事するときは食物、といった風に必ずターゲットとなる対象がありますね。

そして、これらの対象は常に変化します。一定の目的動作としての固定的な概念がありつつも対象の性質が変化する点が面白いですね。

服は、袖の長さ、素材の弾性・剛性、身頃の大きさ、ボタンやファスナーなどの構造的違い、など様々な性質が服ごとに変化しますが、我々ヒトは都度変化に適応して目的動作を達成しています。

そう考えると物凄く複雑なことをできていますよね。すごいです。

行為

行為は、動物的レベルを超えて、人間的・社会的動作です。買い物という行為を成立させるには、購買欲の自覚、購入金額の予測、自己資金の把握、ショップまでの道のり・所要時間の把握、買い物に適した衣服の選択と着用、ショップまでの移動などなど・・・。

買い物を実行するまでにも実に多くの段階を踏んでいることが分かります。そしてそれらは、社会的活動の中で培われた知識等を元に行われており、非常に人間らしいところでもありますね。

課題の段階と課題が含む要素

ここまでで解説した通り、我々がリハビリの中で患者に提示する課題には4つの段階があり、さらにその課題それぞれに含まれる要素が異なります。

動作観察・動作分析をする”前”に重要なことは、我々セラピストが提示する課題はどの段階の課題であり、さらにその課題にはどんな要素が含まれているのかということを自覚することです。

最後に

昨今、「機能障害のみに囚われず、もっと活動を見ましょう、もっとヒトをヒトとしてみましょう。」と言われることが増えました。

至極重要なことですが、活動をもっと見るべきという人の多くは、活動ばかり見て、機能障害をなおざりにしてしまうとの指摘も多々あります。

逆に、機能をもっと見るべきという人の多くは、活動面の評価をなおざりにしてしまうと指摘されます。残念ながら活動させればいいという人もいますね。

重要なのは両者のバランスです。

ではどうやってバランスを取るのか?

その答えがこの記事にあると考えています。
患者の抱える問題が、どの階層に位置するのかをまず考え、提示する課題が何なのかを明確にしてから課題を提示します。

このように考えると、理学療法士であっても行為レベルまでの理解が必要ですし、作業療法士であっても筋緊張レベルまでの理解が必要です。

主体となる階層としては、理学療法士の方がベースの階層に近いとは思いますが、患者が抱える問題はセラピストによって変わることなんてありませんよね。

得意な階層がちょっと違うくらいの認識でもいいのではないでしょうか。

動作構築の4段階、いかがでしたでしょうか?

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引用文献
冨田昌夫ら(編):臨床動作分析 PT・OTの実践に役立つ理論と技術、三輪書店、2018、pp38-40

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