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排泄動作 vs バランス練習~ PT・OTのための評価・治療のヒント

こんにちは。ReHub林です。

リハビリ場面にはたくさんの???に溢れています。
あなたもどこかで感じたことがある疑問かもしれません。

「バランス練習」の不思議

臨床現場において、理学療法士も作業療法士も実践されている方は多いはずです。

最も多く行われているのは、おそらくリーチ課題でしょう。その他にもバランスボールなどの道具を使用してキャッチボールしたり、支持面を不安定にしたりといった課題も多くみられます。
提示する課題の距離や角度によって股関節や足関節など狙った関節の運動を引き出すというのがメジャーですね。

ここで私が感じる不思議は
「なぜ、臨床でよく見かけるバランス練習の大部分は、”外的環境との関わり“に対するアプローチに偏っているの?」
です。

「セラバンドで下衣の上げ下ろし練習」の不思議

ズボンの上げ下ろしにおいて、重要な要素は「脱がしー脱がされる協力関係」であると以前の記事で述べました。
一方セラバンドでの上げ下ろしは、摩擦刺激を減らし、抵抗を逃がして行う動作になります。ゴムは滑りにくいですからね。
その場合、同じ上げ下ろしの課題でも、セラバンドでは脱がしー脱がされる協力関係が得られにくく、主にはセラバンドの操作という外的環境との関わりが主体となります。
是非、セラバンドであるべき理由を知りたいです。

バランス練習を大きく2種類に大別してみます。
①自己身体の内的情報との関わりによるバランス練習
②外的環境との関わりによるバランス練習

①の例として「排泄動作」を紹介します。
できれば、事前に「”脱がしー脱がされる”排泄動作」を読んでいただけるとグッと理解しやすいかと思います。

今回のテーマは「排泄動作とリーチ課題のバランス練習における違い」です。

排泄動作とバランス

排泄動作の中で大切な要素として以前に「脱がしー脱がされる協力関係」が大切だと述べました。

なぜ大切か?

それは、ズボンの接触刺激を通じて自己身体の内部情報とのやりとりの中で姿勢をコントロールすることを学習するからです。

我々ヒトは本来、「自己組織化」の中で確かな自己身体を確立し、環境の中で自由に動けるようになります。

自己身体の内部情報とのやりとりが上手くいかないということは、それだけ周辺環境に上手く適応しにくいということです。
上手く動くことができない患者の多くは、障害を負った新たな自己身体に適応することができないまま外部環境と関わることを強いられ、動作障害の悪循環に陥ります。

そのため、外部環境との関わりももちろん重要ですが、まずは自己身体の内部情報に対する姿勢制御を評価・治療すべきなのです。

「そんなことを言われても、何をすればいいか分からない」
という場合は、一例として「脱がしー脱がされる協力関係」を評価してみてください。

これから、「脱がしー脱がされる協力関係」の中で、どのように姿勢コントロールしているかを足圧分布から検証してみましょう。

ズボンの上げ下ろしと足圧分布

足圧変化1

※ファスナータイプのズボンは、全開にして上げ下ろししました。

スクワットと比べて、特にゴム紐タイプのズボンを下ろす時の方が足部の接地面積が前方に広がっています。

ズボンによる後方からの接触刺激を探索するためには、軸圧を捉えやすく安定性が得られる屈曲位になり、その刺激と拮抗する運動が必要になります。
後方から前下方に向かう力に拮抗するということは、前足部での踏ん張りが必要になりますね。

能動的探索の中で支持面との関係性を再学習することで、重力下でのバランス反応が変化するのです。

この能動的探索を強調するようにズボンの上げ下げに近い課題をタオルで実施してみたところ、片脚立位で変化が生じました。

足圧分布

※実施後だけ圧中心を間違えて記録してしまいました。線が被っていて申し訳ないです。

かなり変わりましたね。実施後の方が足部全体でコントロールしていることが分かります。また、支持基底面として機能していなかった足趾まで足圧分布が広がっていますね。

このように、いわゆるバランス練習らしいバランス練習でなくとも、それ以上の効果を期待できることがあります。

定番のリーチ課題と何が違うのか

輪投げを使った前方リーチ動作によって足底背屈の反応を促通するという手段を臨床ではかなりの頻度で見かけます。

それも一つの方法ですね。
では、排泄動作との違いは何でしょう?

よくあるリーチ課題の本質は、外部空間との関係性による姿勢定位と上肢のプレーシングです。

そのため、姿勢調節の手がかりは周辺の壁面など構造物と自己身体の位置関係とリーチするターゲットとの位置関係が主となります。

一方ズボンの上げ下げはどうでしょう?
もちろん、外部空間における肌理の変化などから姿勢定位のための情報を得ています。
決定的に違うポイントは、下衣の接触刺激によって生じた自己身体の内部情報とのやりとりの中で姿勢制御をしているということです。

まとめ

いかがでしたか?

バランスを評価・治療する時は、提示する課題が
①「自己身体の内部情報を手がかりとする課題」
②「外部環境を手がかりとする課題」

に分けてみましょう。
①で何をするか迷ったら、排泄動作や更衣動作などが分かりやすいかと思います。

最後に
バランス練習をする際、何回・何秒実施しますか?
臨床場面では「魔法の10カウント」をよく見かけます。

私の答えは「目的の身体反応が生じるまで」です。
ある程度繰り返して、全く反応に変化が無い場合は、やり方が間違っているか、問題の本質にアプローチできていないかの2択です。

関連動画👉「排泄介助・ズボンの上げ下ろしで動きを変えるポイント

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事が、悩めるセラピストのバランス練習のために活用されれば幸いです。
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今後ともReHub林をよろしくお願いいたします。

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