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”脱がしー脱がされる”排泄動作 PT/OTのための動作分析

こんにちは。ReHub林です。

早速ですが、一日に何回下衣を上げ下ろししますか?
朝晩の着替えと排泄とで1日10回前後というところでしょうか。

以前、「排泄動作の要素」PT・OTが人としての尊厳を守るための動作分析で排泄動作の要素を紹介しました。まだご覧になっていない場合はこのタイトルからご覧ください。

その中で、転倒リスクが高いタイミングとして、便座に向かう方向転換と下衣の上げ下げを取り上げました。

今回は、この「下衣の上げ下げ」を深く掘り下げて解説します。

下衣上げ下げで最も重要なポイント

最も重要なポイントは下衣の摩擦刺激と皮膚の反応です。
さらに言うならば、上肢操作による下衣を脱がす反応と、下衣の摩擦刺激に対して脱がされに向かう臀部の反応、両者の協力関係によって下衣を上げ下ろしすることが重要です。

ヒトはこの反応の中で、立位を制御しています。
脱がしー脱がされる協力関係が円滑に行われていない人は、大抵の場合転倒リスクが高い人です。この点については、次回「排泄動作から立位バランスの評価・治療を考える」でお伝えします。

脱がしー脱がされる協力関係(上肢編)

まず、上肢の脱がす反応から解説します。

上肢で下衣を下ろす際、両上肢で下衣を引っ張り、生地の張りを作ります。そのため、上肢による下衣の張力・弾性の検出が必要です。
なぜ生地の張りが必要かというと、生地から接触感覚を受け取るためです。安定した張り・硬さがあればこそ、生地からの接触感覚を感じることができます。

逆に張りがなく生地の形状が不安定な場合、正に「のれんに腕押し」という状態です。生地が臀部に触れた感触を、生地を把持する上肢に伝えることができないのです。

一般的に、上肢操作により下衣を下ろす際、臀部を擦りながら下衣を通過させます。上肢は、張りを作った下衣からの接触感覚を探索しながら臀部を下衣でなぞるように擦り下ろすのです。

もう一つ、上肢操作において重要なことは、臀部皮膚の緊張です。
下衣を通過させるということは、臀部の皮膚が緊張を高める反応が生じます。
皮膚の緊張が緩いと、下衣の摩擦に対して皮膚も一緒に動いてしまいます。
臀部の皮膚が下衣と一緒に動くということは、下衣を操作している上肢には、臀部上を擦れている下衣の接触感覚が曖昧になってしまいます。

このように、たかだかトイレでズボンを下ろす際の上肢操作だけでも奥深いものがあります。

脱がしー脱がされる協力関係(臀部編)

次に臀部の脱がされる反応について解説します。

上肢で下衣を下ろす際、上肢で作った下衣の張りと下衣によってもたらされる接触刺激に対して、臀部が向かっていく反応が生じます。
これが、臀部の脱がされる反応です。

上で述べたように、下衣を通過させる際、臀部の皮膚が緊張を高めます。
皮膚の緊張が高まることで、下衣の通過によって生じる接触刺激を明確に知覚することができます。そうして得られる接触刺激を臀部が探索しながら向かっていくため、「脱がされる」のです。

脱がしー脱がされる協力関係(いざ合体!!)

ここまで読んでいただくと、すでにお気づきかもしれませんが、上肢も臀部もお互いに能動的探索をしているということです。

上肢は下衣を通じて臀部を通過する接触感覚を、臀部は下衣が通過する接触感覚を、お互いに探索し合う協力関係ですね。

この結果が排泄動作における、上肢・体幹・下肢の協調的な屈伸運動となって現れます。

細かいようですが、協調性が先にあって、下衣を下ろす際の身体全体の屈伸運動が可能なのではありません。脱がしー脱がされる協力関係という身体内部の情報を相互に検出し合った結果として、協調的に全身が屈伸するのです。

まとめ

排泄動作を観察する機会があれば、ぜひ「脱がしー脱がされる協力関係」が成立した身体反応かどうかを確認してみてください。

最後に、反応が乏しいと感じたときのヒントをお伝えします。
👉反応が乏しい時は、下衣による接触刺激がどれほどの強度ならばそれらの反応が生じるのか?接触刺激の強さを介助の中で変えてみて、強い刺激ならば反応が少しでも生じるのかどうかを評価すると良いでしょう。

その時の患者の反応に治療の糸口が隠れているかもしれません。

実際の反応と介入のポイントについては先行して動画をアップしています。

ReHub#9サムネ

👉「排泄介助・ズボンの上げ下ろしで動きを変えるポイント「摩擦」

いかがでしたか?
ただトイレでズボンを下ろすだけの話。
ただズボンを下ろす時の臀部の話。
奥が深いですね~。
このnoteが皆様の人としての尊厳を守る関わりのお役に立てれば幸いです。

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