金銭状況はリハビリテーション戦略にも影響する
みなさん、お金は大事ですよね。
今回はリハビリテーションにおけるお金について書いてみたいと思います。
※理学療法士自身のお金の話ではないので、稼ぎ方とかが知りたい方には参考にならないかもしれません。リベ大の両さんの書籍(下記)なんかで学ぶことをオススメします。
日本という国は保険制度が非常に充実しており、年齢や収入によって自己負担額は異なってきますが、おおむね1〜3割負担で必要な医療・介護を受けることができます。
この記事を読んでくださっているのは理学療法士やその他のリハ職・医療職が多いかと思うのですが、患者さん・利用者さんの退院支援や環境設定を行う際、その方の金銭事情は把握した上で提案することができていますか?
今回はその辺りを中心に考えてみたいと思います。
この記事を読むと、
●クライアントの金銭状況を把握することの大切さがわかる
●クライアントの個人因子に配慮した退院支援・生活環境設定が考えられる
●医療・介護保険制度を知っておくことの必要性がわかる
金銭状況を把握できていますか?
患者さん・利用者さんの金銭状況、把握していますか?
訪問リハや訪問看護で働いていると割と把握しやすいのですが、病院では把握しづらいと思います。
入院されている方はみんな同じような服を着て、同じような生活を送るからです。
しかし、病院を出ると、みなさん違う生活をされているはずです。
総資産5億の方もいれば、生活保護の方もいます。
生活保護ではないけれど、年金のみの収入でなんとか生活を維持しているというような方もいると思います。
このように、収入や生活水準に違いがあるのに、退院支援やサービス・福祉用具の提案が一律に行われているとしたら、それは問題だと思いませんか?
もちろん、本人に直接「収入はどれくらいありますか?」なんて聞けないので、生活状況を本人やご家族から聴取する中で推測したり、ソーシャルワーカーと協力しながら情報収集するといったことが必要になると思います。
金銭事情によって退院支援は変わる
今回お伝えしたいのは、お金持ちには手厚く対応すべきとか、そういうことでは決してありません。
その人の生活水準に合った環境設定やサービスの導入をしなければ、その後の生活を続けることができなくなる、ということを言いたいのです。
例えば、とんでもないお金持ち、毎月100万円くらいの不労所得があるような方の場合、いくらサービスを導入しても良いはずです。(もちろんご本人の意向もありますが)
そのような方であれば、身体機能改善の見込みがあるのなら、保険内外問わずに様々なサービスを導入して、より良い生活環境を追求すべきだと思います。
福祉用具の選択も自由自在ですし、点数によって避けられがちな『家中にベスポジバーを張り巡らす』みたいな戦略も可能になります。
一方、普通の生活を維持するので精一杯というような金銭状況の方ではどうでしょうか。
もしも、自宅退院後の生活のために訪問リハや訪問看護が必要だとしても、金銭的余裕がなければ、それを長く続けることは難しいかもしれません。
介護保険を利用出来るとは言っても、最低1割の自己負担は発生するのです。(生活保護の方は自己負担がないのでまた違ってきますが)
そうなれば、どうしても必要な退院直後だけサービスを導入し、生活が安定したら終了する、というような戦略を立てることも必要になってくると思います。
福祉用具も必要最小限のものを厳選して導入することが求められるでしょう。
そう考えていくと、理学療法士の持つ身体機能面の知識や情報のみから生活環境の整備を行うことには問題があることに気付かれると思います。
無責任な提案をしていないか?
理学療法士として、身体機能面や疾患特性を考慮した生活環境整備の提案を行うことは、もちろん大切です。
しかし、その環境設定が果たして維持できるのか?どれくらいの期間、そのサービスや福祉用具を利用し続ける必要があるのか?といった点を考慮した提案を行わなければ、それは好き勝手に無責任な提案をしていることになってしまいます。
逆に、金銭的余裕のある方に対して必要最小限のサービスや福祉用具しか提案しなければ、「もっと色々教えてくれたら良かったのに」ということになってしまうと思います。
「オーダーメイドのリハビリテーションを」みたいなことも言われるようになってきていますが、これは疾患や個人特性を考慮してトレーニングの内容を変えていくというだけでなく、どの程度の金銭的負担があるのかといった部分も含めて個別に考えていかなければならないと思います。
制度を知っておくことが大切
そもそも、医療保険や介護保険という制度について知っていなければ、患者さん・利用者さんの金銭状況に合わせた提案をすることはできません。
ベスポジバー1本レンタルするのに、いくらかかるかご存知ですか?
訪問看護や訪問リハが1回訪問するのに、1割負担でいくらかかるかご存知ですか?
各サービスに必要な点数は全国一律で決まっていますが、地域によって点数の単価が異なるということをご存知ですか?
私自身も1〜2年目の頃、介護保険の知識が全然ない状態で色々な提案をして、注意を受けた経験があります。
ネットで少し検索するだけで様々な情報が得られますし、福祉用具のレンタルに関してはカタログの巻末とかにも制度について書かれていたりします。
ぜひ一度、調べてみることをオススメします。
まとめ
金銭状況によって、退院支援などの戦略が変わってくる、変えるべきだということを書いてきました。
お金持ちは優遇されるべきだとか、そういうことでは決してありません。
医療も介護も、全国民が平等に受けられるのが国民皆保険の良いところです。
しかし、自己負担が発生する以上、生活水準を維持できるだけの負担に抑えながら生活を成り立たせるようにデザインしていかなければなりません。
病院に勤務する方は、退院支援の際に提案する内容が、その方の金銭状況・生活水準に合ったものなのか、その負担額をどれくらいの期間払い続けることができるのか、少し考慮してみていただきたいと思います。
読んでくださってありがとうございます。 いただいたサポートは今後の勉強、書籍の購入に充てさせていただくとともに、私のやる気に変換させていただきます。