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天国に旅立ったスターたち⑧~料理人・陳建一さん~

構成作家という仕事をして20年近くになります。これまで多くの著名な方々とご一緒する機会に恵まれてきました。中には、残念ながらその後、天国へと旅立たれた方もいらっしゃいます。
 
スターというのは、実際に会ってみると独特の印象をこちらに与えるものです。何かがキラリと違います。そこで、今回も僕に素敵な印象を残した“天国のスター”の思い出を綴ります。 

【構成作家T】
主にラジオやテレビの台本を書いている40代の構成作家。
趣味はスポーツ観戦。とくに野球が好き。カープファン。 
この連載は、2022年5月以来の第2弾となります。

有名になっても店を大事にしていた中華の鉄人・陳建一さん

陳さんとお会いしたのは仕事ではなくプライベートの場でした。離れて暮らす僕の家族が東京で集まったとき、よく食事に出かけるのが中華料理屋さん。中でも、圧倒的に多く訪れているのが、渋谷にある陳さんのお店なんです。 

初めてお邪魔したのは、おそらく20年以上前のことだったと思います。お店は客席から厨房の様子を見ることができ、そこには厳しい表情の陳さんの姿が。それは、まさに人気バラエティ『料理の鉄人』のバトル中に見せていた表情そのもの。 

しかし、テーブルに挨拶に来てくれたときに見せる表情は、厨房にいるときとは打って変わり、『料理の鉄人』で勝利した後に見せていた、あの柔和な笑顔そのものでした。

「味はいかがですか?」
「おいしいです」
「辛さは大丈夫ですか?」
「ちょうどいいですよ」

 そんな何気ない会話が、今となっては懐かしく思い出されます。

 陳さんと言えば『料理の鉄人』で知名度を上げましたが、じつは何度か番組を離れることを考えていたと言います。というのも、料理バトルで勝利をおさめるごとにオーナーシェフを務める四川飯店が連日予約でいっぱいとなり、店をしっかり守っていきたいという思いが日ごと募っていったんだそうです。実際に一度だけ降板を申し入れているとか。
しかし説得され、出演を続けるのですが――店で挨拶をしてくださる陳さんの様子から、本当に「お店を大事にしている」という姿勢が溢れていました。 

ある時期から愛弟子たちにお店を任せるようになったのか、厨房でお姿を拝見する機会は減っていきましたが、今でも訪れるたびに陳さんの笑顔を思い出しています。それくらい魅力ある笑顔でした。 

陳建一さんは、2023年3月11日、67歳で旅立たれました。
おいしい料理と素敵な笑顔、ありがとうございました。
あなたが築かれた味は、息子さんや愛弟子の皆さんたちに、しっかりと受け継がれています。
今も、うちの家族はご馳走になってます!  


というわけで、全4回でお届けした天国のスターたちとの思い出、いかがでしたか?
偶然にもめぐり合うことができたスターたち。もしかすると、そこには不思議な“縁”があるのかも……と思う時があります。そんな縁を大切に、これからもこの仕事に携わっていきたいと改めて感じました。
また機会がありましたら、お会いしましょう! 

(おわり)

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