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隆行 『 透き通った空を見上げている 』

ユーカラ企画「Poetry  for You・あなたの詩」第10弾 
ご依頼者:ハッシーさま


“ もしも全て満たされていたなら
今のぼくはいなかったかもしれない “


思えばぼくの家族は
皆自分のことばかりで騒がしかった

わたしはこう思う  わたしはそうじゃない
わたしはこうしたい わたしはそうしない
わたしの気持ちを受け止めろ!

みんな
いつも

わたし
わたし
自分
自分
自分!!

誰ひとり

あなたはどう?

そうぼくに聞いてくれる人なんかいなかった

だからぼくは何も言えなかった
何も言わなかった

だから何も思い出せない
あの幼い頃のぼくのこと

何を感じていたのか
本当はどうしたかったのかも

でもね

言えない
言えない
が続くと

まるで無かったことのようになっちまうんだ

ぼくの気持ちや
ぼくの考えなんか

みんなの中に
そして
ぼくの中にさえ
まるで何にも無かったように

そしてそれが悲しいのかもわからないままに


でも
大人になるってことは
知っていくこと
一つ一つ見つけていくことだった

人が生まれる時に持ってくる
伝えたい
という本能を
使わなければどうなるのか
僕は初めて人を好きになることで知ったんだ

あの時
僕は大事な想いを 誰かに託した
自分で言わずに

そしてそれが連れて来た答えは


何も 返ってこなかった

何も。

まるで何も無かったかのように。

ぼくのその人に対する尊い想いは
届いたのか
届かなかったのかもわからないまま

何も生まなかった
最初から無かったみたいに

まるでぼくが
存在しないみたいに。

あの時と一緒
家族と居る時と

でも、一つ違っていたのは
それが

とても痛かった

ということだ

家族と居る時には気づくことすらなかった感情、痛みを
ぼくは
初めて人を好きになることで味わった

言わなければいけない
言わなきゃダメだ!
自分の口で
自分の気持ちを

でなければ何も起こらない
何も残らない

そして何も分からない
知りたかった相手の気持ちだって

言わなきゃいけない
言わなきゃダメだ
自分の口で
自分の気持ちを

それが自分を大切にする
ということなんだ!

答えが知りたい
相手がどう思っているのかを
たとえそれが「ノー 。」であったとしても

そう思った。

ぼくはその時
自分が強くて
勇気のある選択をしたことを知らなかった

人は
失敗したり傷ついた時
二つの道が選べる

二度と失敗したり傷つかないために
挑戦しない道と

どうすれば失敗しないか傷つかないか
考えて 挑戦する道だ

それからのぼくは
大事だと思う人に対して
積極的にぶつかっていった
自分に正直に
気持ちを伝えるということで

今だから言える

あれは
あの痛みや経験は
チャンスだったんだ
自分を大切に生きることを知るための

そしてその行動は
ちゃんと答えを連れて来た

相手も
自分の気持ちを伝え返してくれる 
という形で

素晴らしかった

相手と心を交わし合うということは。

自分とは
違う世界が相手の心の中に広がっていて
言葉を交わすことで
その世界を味わい合えた

その喜びをもっともっと味わいたい

ぼくのそんな思いは
キャンパスを飛び出して見知らぬ国へも旅立たせた

心だけを携えて出かけた旅は
心と心でぶつかり合ったり駆け引きされたり
失敗と失望を味合わせたが
それを切り抜けた向こう側にある喜びと自信も届けてくれた
その宝を懐に
ぼくは人の心を癒し、受け止め、交わし合う手助けをすることを生業に社会に出ていった

なのにそうやって掴み取ってきた宝を
唯の石ころに変えてしまうのが社会という日常だった

人を傷つけ駄目にしてしまう奴は
きつい言葉や態度でやってくるとは限らない

時には
自分がとても欲しいものを与えてくれる賞賛だったり優しい笑顔だったりする

ぼくは知らぬ間に
ぼくの夢ややりたいことが
他人のそれに塗り替えられていることに気付けずに時を重ねてしまった

息苦しくて
何かがおかしい
と気づいた時には底無し沼に嵌っていた

どんなに大事な人にも
いや
大事な人だからこそ言えない思いや言葉がある

言葉を生業にしたぼくなのに
生業にしたぼくだからこそ恥ずかしくて
大事な家族に言えなかった

とても苦しいんだ
力になってくれ

そんな時
ぼくを救ったのは
立派な人や偉い人ではなくて
どうしようもなく駄目な
底無し沼の住人たちだった

其処にいるのは
底にいるのは

特別な奴ではなくて
何処にでもいる
幸せになりたいと生きていたはずの
ぼくやあなたのような
普通の人だった
ほんの昨日まで

皆もがき苦しんでいた
きっと
自分で自分を潰してしまった
と感じていたから

初めて自分の中にある苦しみや嘆きを
ぼくは泣いて泣いて吐き出した
出していいんだと皆が感じさせてくれていた

恥ずかしい思いや痛みを人前に晒して情けない自分と向き合うのは
とてつもない勇気が要ることだった
でもそれは第一歩。

休息を取ったら
いつまでも其処に留まってはいけない
後はその勇気を行動に変えていくのだ

それが難しかった
とても時間と勇気と強い意志が必要だった

それを支えてくれたのは
愛した人と
共に築いた家族だった

悲しい思いや辛い想いをさせるために作った家族じゃない

ぼくの大事な宝を
もうこれ以上悲しませてはいけない

自分の手で唯の石ころにしてしまうわけにはいかなかった

諦めと失望に囚われそうになりながら
やっと這い上がった時
ぼくは知った
あの絶望という名の底無し沼は
何処かにあるのではなくて
自分の中にあるのだということを

そして僕らはきっと
這い上がることが出来る

それを知ることが出来たのは
“堕ちたからだ!”

いつでも転落の始まりは見失うこと
自分の気持ちを
自分の考えを

本当はどうしたいのか
世間が
誰かが
じゃなくて
自分が。

言わなきゃダメだ
言わなきゃいけない

あなたにも
世間にも
世界にも
そして
自分にも!

そうすることが教えてくれる
どう行動することが自分を大切にすることなのかを。

足りない
出来ない
言えない
恥ずかしい
そして情けない

そんな自分を味わい 知った僕だからこそ
人の気持ちに寄り添い

這い上がるまでを見届けてあげられる

堕ちる前に手を差し伸べてあげられる

そして
大事な人に手を差し伸べられるあなたになる手助けが出来る

この世界に椅子を用意してくれる魔法の言葉

“ あなたはどう? “

そう問いかけることで

生まれる前から
あなたの中にちゃんとある答えを
導き出してあげることが出来る。

僕なら
言えないあなたも
悔しいあなたも
情けないあなたも
思わず誰にでも頷いてしまう優しいあなたも
みんな受け止めてあげられる

あなたがあなたに帰るまで
自然に身体の底から勇気と力が湧いてくるまで
黙って側にいてあげられる

何故なら
それが生きていく旅路だと知っているから


天国と地獄にかけられた橋の上で僕は今
透き通った空を見上げている

全ては地続き
陰と陽
神の造りし賜うもの
要らない者なんか無い素晴らしい世界で。


#あなたの詩
#ご依頼者の人生を詩に

🦄ご依頼者様のご感想はこちら

🦄ご依頼者を主人公に、その人生を詩に描く
『Poetry for you・あなたの詩』をお読み頂き、ありがとうございます。

 現在この企画は終了させて頂いておりますが、10名のモニター様にご協力頂き書き上げた10篇の詩は、どれもその方のお人柄と歩まれた人生に呼応するように、個性的で、その詩の放つメッセージも全く違う、(手前味噌ではございますが)味わい深い、読み応えのある良い詩になったと自負しております。

モニターの皆様には、この企画にご賛同頂きました事、大切な体験をお聞かせ頂いた事に、改めて深く感謝いたします。
今後も、皆様の歩まれる道が、喜びと幸せに満ちた素晴らしいものとなりますよう、お祈りいたしております。💐

💠出来上がりました10篇の詩を下記に一覧にしてございます。
他の詩もお楽しみ頂ければ幸いです。


🍋『あなたの詩』第9弾


🍋『あなたの詩』第8弾


🍋『あなたの詩』第7弾


🍋『あなたの詩』第6弾

🍋『あなたの詩』第5弾

🍋『あなたの詩』第4弾


🍋『あなたの詩』第3弾

🍋『あなたの詩』第2弾

🍋『あなたの詩』第1弾


🍊このブログの他、ユーカラが行っておりましたライブや詩の創作ワークショップなどの活動は、只今お休み中です。🙇‍♀️ 活動再開の際には、改めて告知させて頂きますので、今後ともユーカラを、よろしくお願い致します。🙇‍♀️

🍀最後までお読み頂きまして、ありがとうございます。
これらの作品が、少しでもあなたの心に届きましたら幸いです。
そして読んでくださったあなたが、その素晴らしい人生を、お心のままに歩んでいかれますよう、心よりお祈り致しております。

ユーカラ2024年 7月10日 ユーカラ

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