【短編】七日後の完全犯罪 九話
八月十一日午前九時、『田中酒造』へと訪れた憂志郎は店員の女性と世間話をした。女性は田中康三の母親である。現在、田中酒造の店主と康三は配達に出ていて不在だ。
「これも祭りが近いからですか? 人が多いのって」
お盆時期の帰省は予想していたが、賑わう都会の下町ほどの多さは正直に驚いた。今日は午前九時でもとりわけ多く見られる。
「この時期はみんな帰ってきてるからねぇ。挨拶回りや友達と会いに行ったりしてるのかも」
沖島郷三郎が町へ訪れてから強面の連中をよく見かける。すでに三名は顔