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市川散歩

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私が住む市川を舞台にした作品を集めてみました。
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記事一覧

ボッコくん

ボッコくん

オレは
カクテルバーを経営している、オーナー
バーテンダーだ。
カクテルを作るのは得意だが、
お客と話すのが苦手。だから、オーダーは
全て食券だ。客は自販機で食券を買い、カウンターのオレに差し出す。それをみながら、オレはカクテルを作る。
普通の店なら、バーテンダーが酒の用意をしながら、お客に一言二言話しかけるのだが、人見知りのオレは、そんな気の利いたことはできない。こんな無愛想で人見知りのオレがや

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リラックス

夜の喫茶店、いつもより少し大きな音で、CDをかけてもらう。カウンターでそれを聴きながら、温かいコーヒーを啜っていると、
 
ねえ、CDの音大きくない?書き物に集中できないんだけど。

と、背後から大きな声が。振り向くと、1人の老女がこちらを睨みつけている。彼女は小さなコーヒーテーブルに座り、新聞も読めない程照明を落とした店内で、テーブルに置かれた小さなデスクスタンドの光の下、手紙を書いていたらしい

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無題 タイトル付けるの苦手なんで、良かったらタイトル考えてください。

無題 タイトル付けるの苦手なんで、良かったらタイトル考えてください。

 大きなお寺の境内。さらにその奥、小さな古いお寺がひっそり建っている。薄暗い本堂の祭壇の前には、お燈明が灯されいて、その周辺だけをじんわりと照らしている。バイトの帰り道、私はいつもこのお寺に立ち寄っていた。

本日、バイトの時給が上がりました。ありがとうございます。
それから、ハジメさんが志望校に合格しますように。

仏様にお祈りをして、燈明の炎を見つめていると、少しだけパッと明るくなった。

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Smoke

 仕事に煮詰まって外に出た。ふらふらと古い屋敷の並ぶ路地を歩き、自宅近くのお寺までやってきた。境内にあるベンチには、たくさんの桜の花びらが落ちていた。その桜の花びらをササッと払い、ベンチに腰掛け、ポケットからタバコを出して火をつけようとしたら、ライターが見当たらない。

良かったら、お使いになりますか?

声の方に振り向くと、いつの間に来たのか、隣に女性が座っていた。
桜色のワンピースを着た女性は

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スナイパー

スナイパー

買い物の帰り道、あまりにも暑いので
寄り道することにした。今日もここ、
「カイジェラート」に決定!
店の前に置かれたベンチに腰をかけ、お気に入りフレーバーのブルーベリーミルクを食べていると、

失礼

と、黒いスーツを着込んだ男性が隣に座った。暑苦しいじいさんだなとおもいながらジェラートを食べていると、いきなり彼が

次のターゲットは、A銀行の頭取スズキ氏だ。

と、私の耳元で囁いた
何のことか分

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