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バイスタンダー効果(傍観者効果)をセールスやマーケティングに転用する方法

バイスタンダー効果(bystander effect)とは、日本語では傍観者効果という。

集団心理のひとつで、
周囲に多くの人がいるときに、
本来なら個人が率先して行動を興すべきときに、
行動を起こさなくなる現象の事を言います。

例えば、
緊急事態や助けを必要とする状況において、

誰かが助けるだろう、、
誰も反応しないから大丈夫なのだろう、、
過剰に反応してしまったら恥をかいてしまう

などのように、周囲に人が多ければ多いほど、個人が責任を感じず、行動を起こさなくなる現象です。

この効果は、1964年にニューヨークで起きたキティ・ジェノヴェーゼ殺人事件をきっかけに研究が始まりました。社会心理学者のジョン・ダーリーとビブ・レイタネが1968年に実験を行い、検証されたものです。

傍観者の心理状態に影響を与える要因

  1. 個人の性格特性:
    共感性や責任感の強さなど、個人の性格が傍観者の行動に影響を与えます。

  2. 状況の緊急性:
    危険が明白な場合、傍観者効果が弱まる傾向があります。

  3. 集団の規模:
    一般的に、傍観者の数が増えるほど個人の介入確率は低下します。
    (行動を起こす確率が低くなる)

  4. 環境の熟知度:
    状況や環境に慣れていない場合、介入しにくくなります。

  5. 社会的規範:
    周囲の人々の行動や社会的期待が、個人の行動に影響を与えます。

傍観者の傍観しているときの心理状態

傍観者の心理状態は複雑で、いくつかの要因が絡み合っています。以下に、傍観者の主な心理状態とその背景を詳しく説明します。

1.責任の分散

傍観者は、他の人も同じ状況を目撃していると認識すると、個人としての責任感が薄れる傾向があります。これは「責任の分散」と呼ばれ、次のような心理が働きます:

  • 「誰かが助けるだろう」という思考

  • 自分一人の責任ではないという安心感

  • 行動を起こさなくても罪悪感が軽減される

2. 多元的無知

周囲の人々の反応を観察し、他の人が行動を起こさないのを見ると、状況が本当に深刻ではないのではないかと誤解してしまうことがあります。これにより:

  • 状況の重大さを過小評価する

  • 「誰も反応していないのだから、大丈夫なのだろう」と考える

  • 介入の必要性を感じにくくなる

3. 評価懸念

他人の目を気にして、不適切な行動をとることを恐れる心理が働きます。具体的には:

  • 間違った判断をして恥をかくことへの不安

  • 過剰反応と思われることへの懸念

  • 社会的評価を落とすことへの恐れ

4. 個人的苦痛

緊急事態を目撃することで、個人的な苦痛や不快感を感じる場合があります。これにより:

  • 状況から逃避したいという欲求が生まれる

  • 自己防衛的な反応が強くなる

  • 他者への共感よりも自己の不快感に焦点が当たる

5. 状況の曖昧さ

状況が明確でない場合、傍観者は介入すべきかどうかの判断に迷います。これにより:

  • 行動を起こすタイミングを逃す

  • 状況を正確に解釈できず、躊躇する

  • 他の人の反応を待つ傾向が強まる

マーケティング上で傍観者効果が掛かっている状況

マーケティング上において傍観者効果が起きてしまうシーンは次のようなモノがあり、詳しく解説します。

1. ソーシャルメディアでのキャンペーン

シーンの説明:
ソーシャルメディア上でのキャンペーンやチャレンジが広がる中、投稿やシェアを促すキャンペーンが行われることがあります。しかし、多くのユーザーがその投稿を見ているだけで、実際に行動を起こさないことがよくあります。

対策:

  • 社会的証明の強化: 初期段階でインフルエンサーや著名人にキャンペーンに参加してもらい、その行動を広く共有します。これにより、他のユーザーも「多くの人が参加している」と感じ、行動を起こしやすくなります。

  • 具体的な行動指示: キャンペーンの参加方法を具体的に示し、「#キャンペーンハッシュタグを使って投稿する」などの明確な指示を提供します。これにより、行動の曖昧さを払拭し、参加を促進します。

2. オンラインレビューの投稿

シーンの説明:
顧客が商品やサービスを購入した後、企業はレビューやフィードバックを求めることが一般的です。しかし、多くの顧客がレビューを投稿しないまま終わることがあります。

対策:

  • インセンティブの提供: レビューを投稿した顧客に対して割引クーポンやポイントを提供するなどのインセンティブを用意します。これにより、レビュー投稿の動機が強化されます。

  • 成功事例の共有: 他の顧客がレビューを投稿している事例やそのレビューが役立った事例を共有することで、レビュー投稿の重要性を強調します。

3. チャリティーやクラウドファンディングの支援

シーンの説明:
チャリティーイベントやクラウドファンディングキャンペーンで、寄付や支援を呼びかけることがあります。しかし、多くの人がその呼びかけを見ても、実際に寄付をする人は限られています。

対策:

  • 寄付状況の可視化: 寄付の進捗状況をリアルタイムで表示し、「現在の寄付額」や「目標達成までの残り額」を明示します。これにより、他の人が既に寄付していることが視覚的に確認でき、行動を促進します。

  • 緊急感の演出: 「期間限定で寄付金が倍になる」などの特別なオファーを提供し、寄付の緊急性を強調します。

4. 販売促進イベントやセール

シーンの説明:
店舗やオンラインショップでのセールやプロモーションイベントが開催されることがあります。しかし、初期段階での参加者が少ないと、他の消費者も参加を躊躇することがあります。

対策:

  • 初期参加者の確保: セール開始前に特定の顧客に先行アクセスを提供し、初期参加者を確保します。これにより、セール開始時点での参加者数が増え、他の消費者も参加しやすくなります。

  • 限定感の強調: 「先着100名様限定」や「期間限定セール」といった限定感を強調することで、消費者に早期行動を促します。

5. 商品の口コミや紹介

シーンの説明:
新しい商品やサービスがリリースされた際、口コミや紹介を通じて広めることが期待されます。しかし、多くの消費者がその商品を紹介しないまま終わることがあります。

対策:

  • 口コミキャンペーンの実施: 口コミを投稿した顧客に対して抽選でプレゼントを提供するなどのキャンペーンを実施します。これにより、口コミ投稿の動機が強化されます。

  • 成功事例の共有: 他の顧客が口コミを投稿して成功した事例や、その口コミが多くの人に影響を与えた事例を共有します。

これらの対策を講じることで、傍観者効果を軽減し、消費者の積極的な行動を促進することができます。

セールス上での傍観者効果が掛かっている状況

セールスにおける傍観者効果を軽減し、積極的な行動を促すための対策を以下に示します。

1. 商談中の意思決定プロセス

シーンの説明:
複数の意思決定者が参加する商談や提案プレゼンテーションにおいて、各参加者が他の人の反応を見てから自分の意見を述べようとする状況が発生することがあります。

対策:

  • 個別の意見を求める: 各参加者に対して順番に意見を求めることで、責任の分散を防ぎます。例えば、「Aさん、この提案についてどう思われますか?」と具体的に名前を挙げて質問します。

  • 事前に質問を送る: 商談前に質問リストを送付し、各参加者に事前に考えてもらうことで、商談中に積極的な意見交換を促します。

  • ファシリテーターの役割: 商談の進行役を設け、意見を引き出す役割を担うことで、全員が参加しやすい環境を作ります。

2. 展示会やトレードショーでの商品デモンストレーション

シーンの説明:
展示会やトレードショーで新製品のデモンストレーションを行う際、ブースに人が集まっていない状態が続くことがあります。

対策:

  • 初期の集客: 展示会開始直後にインフルエンサーや既存顧客を招待し、初期の集客を確保します。これにより、他の来場者も興味を持ちやすくなります。

  • 目立つ演出: デモンストレーションを行う際に音楽やビジュアルエフェクトを活用し、遠くからでも目立つようにします。これにより、通りがかりの人々の注意を引きやすくなります。

  • インタラクティブな要素: 来場者が実際に製品を試せるインタラクティブな要素を取り入れることで、参加意欲を高めます。

3. 新規サービスの導入期

シーンの説明:
新しいサービスや革新的な製品を市場に導入する際、初期の顧客獲得が難しい状況に直面することがあります。

対策:

  • パイロットプログラムの実施: 初期段階で一部の顧客に限定的にサービスを提供し、成功事例を作ります。これにより、他の顧客も安心して導入しやすくなります。

  • ケーススタディの公開: 初期導入企業の成功事例を詳細に紹介し、具体的な成果を示します。これにより、他の企業も導入を検討しやすくなります。

  • リスクフリーのオファー: 無料トライアルや返金保証を提供し、初期導入のリスクを軽減します。これにより、顧客が安心して導入を試みることができます。

4. セールス電話やメールの応答

シーンの説明:
セールス担当者が潜在顧客に電話やメールでアプローチする際、返答や反応が得られにくい状況が発生することがあります。

対策:

  • 明確な担当者指定: メールや電話でアプローチする際に、具体的な担当者名を明記し、その人に直接返信を求めます。例えば、「〇〇様、こちらの件についてご意見をお聞かせください」といった形です。

  • フォローアップの強化: 一度メールを送った後、一定期間内にフォローアップメールや電話を行い、返信を促します。これにより、対応が後回しにされるのを防ぎます。

  • インセンティブの提供: 返答や反応を促すために、小さなインセンティブ(例えば、次回購入時の割引クーポンなど)を提供します。

5. グループセールスプレゼンテーション

シーンの説明:
複数の潜在顧客グループに対してセールスプレゼンテーションを行う際、質問や意見が出にくい状況が発生することがあります。

対策:

  • 質問タイムの設定: プレゼンテーションの途中や終了後に明確に質問タイムを設け、質問を促します。例えば、「ここで一旦質問を受け付けます」といった形です。

  • 匿名の質問ボックス: 参加者が匿名で質問を提出できるようにすることで、質問しやすい環境を作ります。これにより、他人の目を気にせず質問ができます。

  • アイスブレイクの実施: プレゼンテーションの冒頭で簡単なアイスブレイクを行い、参加者同士の緊張をほぐします。これにより、質問や意見が出やすい雰囲気を作ります。

これらの対策を講じることで、セールスシーンにおける傍観者効果を軽減し、顧客の積極的な行動を促進することができます。

傍観者効果をマーケティングやセールスに活かす方法のまとめ

傍観者効果をマーケティングやセールスに活用するためには、消費者の心理状態を理解し、それを逆手に取る戦略を立てることが重要です。以下に具体的な方法を詳しく説明します。

1. 社会的証明を利用する

社会的証明(social proof)は、他人の行動を基に自分の行動を決定する心理現象です。傍観者効果の一因である「他の人が行動しないから自分も行動しない」という心理を逆手に取るために、以下の方法が有効です:

  • 顧客のレビューや評価の表示: 商品ページや広告に他の顧客のレビューや評価を掲載することで、新規顧客に「多くの人がこの商品を購入している」という印象を与えます。これにより、他の人が既に行動を起こしていることが明示され、消費者も行動を起こしやすくなります。

  • ユーザー生成コンテンツの活用: 顧客が商品を使用している写真や動画をSNSやウェブサイトで共有することで、他の消費者に「自分もこの商品を使ってみたい」と思わせる効果があります。これにより、傍観者効果を打ち消し、行動を促進します。

2. 限定感を演出する

多元的無知とは、他の人が行動を起こさないために、自分も行動を控える心理現象です。これを利用して限定感を演出することで、消費者の購買意欲を高めることができます:

  • 数量限定や期間限定のオファー: 「残りわずか」や「期間限定セール」といったメッセージを強調することで、消費者に「今行動しなければならない」という緊急感を与えます。これにより、他の人が行動を起こさないことに対する不安を打ち消し、行動を促進します。

  • 限定メンバーシップや特典: 特定の顧客にのみ提供される限定メンバーシップや特典を用意することで、他の顧客にも「自分もその特典を得たい」という欲求を引き起こします。これにより、行動を起こす動機が強化されます。

3. 責任感を喚起する

傍観者効果のもう一つの要因である「責任分散」を防ぐために、消費者に対して個別の責任感を喚起する方法も有効です:

  • パーソナライズドメッセージ: メールマーケティングや広告において、顧客の名前や過去の購入履歴に基づいたパーソナライズドメッセージを送ることで、個別の関心を引きます。これにより、個々の消費者に対する特別な呼びかけが行われ、責任感が喚起されます。

  • 直接的な呼びかけ: 「あなたにだけ特別なオファーがあります」といった直接的な呼びかけを行うことで、消費者に「自分が行動しなければならない」という意識を持たせます。これにより、責任感が強化され、行動が促進されます。

4. 行動を具体的に指示する

消費者が何をすべきか明確に指示することで、傍観者効果による行動の抑制を防ぐことができます。傍観者効果の一因である「状況の曖昧さ」を払拭するための方法です:

  • 明確なCTA(Call to Action): 「今すぐ購入」や「こちらをクリック」といった明確な行動指示を含めることで、消費者が次に取るべきステップを理解しやすくします。これにより、行動の曖昧さが解消され、消費者が行動を起こしやすくなります。

  • ステップバイステップのガイド: 購入プロセスやサービスの利用方法をステップバイステップで示すことで、消費者が迷わず行動を起こせるようにします。これにより、行動の具体性が高まり、傍観者効果を軽減します。

5. 評価懸念を軽減する

消費者が行動を起こす際の評価懸念を軽減するための施策も重要です。評価懸念とは、間違った判断をして恥をかくことや、過剰反応と思われることへの不安を指します:

  • リスクフリーのオファー: 無料トライアルや返金保証を提供することで、消費者が「失敗しても大丈夫」という安心感を持てるようにします。これにより、評価懸念が軽減され、行動が促進されます。

  • 成功事例の共有: 他の顧客が成功した事例や体験談を共有することで、消費者に「自分も成功できる」という自信を持たせます。これにより、評価懸念が和らぎ、行動を起こしやすくなります。

これらの方法を組み合わせることで、傍観者効果を逆手に取り、マーケティングやセールスの効果を最大化することができます。


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