NPO等の取り組みが疑われてしまう理由と「ひまそらあかね」の政策への期待

2024年6月29日

実はNPO等が中心となって行っている子ども食堂やらフードバンクやらの食糧支援が広まったのは最近の話で、「市場」は急拡大しています。

一例として挙げると、子ども食堂の数の推移。

むすびえの報告より

さらにフードバンクの数。

消費者庁の会議の資料より。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/meeting_materials/assets/consumer_education_cms201_20240508_15.pdf#page=8

契機となったのはコロナ禍によるNPO等への寄付の増加と、「帳簿価格での食品寄付は全額損金扱い」との税務上の見解が示されたことだと思います。
NPO等が食品の再配布等で寄付の「受け取り先」を確保した流れで、廃棄コストが高くなりがちで、かつ高額なのでNPOの取り組みの成果をカサ増しする効果のある化粧品等もおそらく売価相当の領収書を切ってメーカーからの寄付を受け付け、困窮している方々に向けて配布がなされるようになった様子です。
メリットを享受できるのはメーカーやNPOなのか?困窮している方々なのか?という違和感を以下にまとめました。

また併せて、最近隆盛しつつある「体験格差」是正についての試みも本当に困窮している方々のためになるの?という疑問を以下にまとめました。
体験の提供団体にわたる金銭は適正なのか(単なるNPO等への利益の配分にならないか)等、高額な化粧品等の配布と同じような微妙な問題があろうかと思います。

以上を前提に、「ひまそらあかね」が「体験格差」是正について東京都がある程度主体的に取り組む旨を発信していることから、その政治スタンスを応援したいと考えて記事を書きました。

1、NPO等の取り組みが疑われてしまう理由

  • NPO等の活動領域は近年、どんどん拡大してきています。その流れで出てきたのが「体験格差」是正の取り組みです。

  • 上記記事を踏まえても、それが本当に困窮している方々のためになる活動なのであれば、反対する理由はありません。

  • しかしながら、NPO等の試みについて疑いのまなざしを向ける方々が多いのは、やはり彼らの、特に業界でも名を馳せるトップランナーの方々の「お行儀」の悪さが最大の理由であろうと思います。

① 業界トップランナーの一つ「フローレンス」の事例

  • 例を挙げましょう。

  • 個人的にはフローレンスさんは特に保育事業への貢献という意味では非常に意義のある団体であると認識しているのですが、「お行儀」の悪いところが多分に見受けられます。

① 禁止されている「政治活動」に該当しかねない、駒崎氏による特定候補者の応援への団体としての後押し。
② 「基準違反隠し」を疑われかねない「積立金」の独自解釈による経理。
③ 自ら適用を宣言する「NPO法人会計基準」に基づく情報公開の不履行。
④ 立法趣旨に照らすと明らかに不適切と思われる組織体制構築 等

  • 大枠では以上のような「ちょっとどうかと思う」振る舞いが見受けられます。

  • また加えて、些細なことながらその体質を象徴するような事例もいくつかあります。(以下④の記事の下部に詳細があります。)

① 補助金の「中間支援団体」としての立場を利用して、禁止されている自らの組織の勢力伸長を図る行為。
② 休眠預金活用事業の資金受領に係る義務である規程類の公開を行うにあたり、URLをベタ打ちしなければ当該ページに辿り着けない工作を行う(=公開義務を半ば潜脱)行為。

  • フローレンスさんは政府とのパイプも太く、業界のトップと評して差し支えのない企業です。

  • しかし適切ではない行為が散見される企業が業界のトップに立っているのであれば、業界全体が信頼を得るのは難しいかもしれません。

②業界トップランナーの一つ「しんぐる・まざぁず・ふぉーらむ」の事例

  • 例をもう一つ。

  • こちらも「お行儀」が良くない団体です。

  • 昨年、横領事件が発覚しており、それ自体も問題ではあります。

  • 集めた寄付金が横領されたのは大きな問題ですが、それ以上に「他に未発覚の事象が眠っていないのか」という観点の追加調査は非常に重要です。

  • 事件の全容が解明されなければ、再発防止も何もありません。

  • 疑わしいと感じている点を以下にまとめています。

  • しかし、残念ながらこの団体は2023年5月に事件が発覚してから、1年余りが過ぎているのにも関わらず、自ら必要を認めた帳簿の点検作業及び修正申告作業を終えていない様子です。

上記の団体の情報発信より
そもそも横領という発端を考えると、監査法人や会計士・税理士等に外注せずに自社の会計担当者が自ら点検作業を行うこと自体もどうかと思いますが。
  • 少なくとも所管庁である東京都への提出が終われば果たされるはずの、インターネット上での公開は未完了です。

  • これが業界のトップランナーの一つなのです。

  • 懸念はお行儀半分、能力半分というところですが、業界全体が「大丈夫?」と思われても仕方がないと個人的には感じます。

③ 休眠預金活用事業の事例

  • とはいえ、私は例として挙げた2団体が特に悪質だとはまったく思っていません。

  • もちろん、きちんとした団体もあるのでしょうが、大なり小なり似たような問題点があるNPO等は非常に多いと認識しています。

  • その認識は、休眠預金活用事業で数々の事例を見聞きしたことに起因しています。

  • この事業は国民の資産である休眠預金を原資とした特異な事業であり、関わる団体には高いモラルが求められています。

  • しかし実際には同事業は身内同士での資金配分と見なされても仕方がない事例が多数見受けられる状況であり、また明文化されたルールが守られていない等、様々な問題があります。

  • この事業はNPO等の「お行儀」の悪さを示す壮大な社会実験になっていると認識しています。

  • 以下ご参考。

2、「ひまそらあかね」の政策に期待すること

  • 以上を踏まえると、NPO等の取り組みを信頼しきれないという方々は少数ではないと思います。

  • 私が別記事に書いたような懸念が払拭できない状況では、行政が困窮している方々に向けた取り組みの主たる役割を担うしかありません。(というかそれが本来のあるべき姿ですが)

  • それを象徴するのが「ひまそらあかね」の政策です。

① デジタルクーポン政策について

  • 「ひまそらあかね」はその公約の中で「デジタルクーポン」の発行に言及しています

  • デジタルクーポンはコロナ禍における自治体の「バラマキ」政策でよく使われていたので、あまり良くない印象を持っている方も多いとは思いますが、それとは一線を画した利用を検討している様子です。

  • 詳細はこちらの動画。

  • 有志による書き起こし。

  • 以前から「ひまそらあかね」はNPO等による「体験格差」是正への取り組みの問題点を指摘しており、それとも関連している様子。

  • 有志による書き起こしから該当部分を引用します。

東京都をデジタルクーポンで楽しませたいと思ってます。
どういうことかというと、まあ一般的には、百合子とかはそうですけど、非課税世帯に5000円とかをばらまいてますよね。
でも、この5000円はどこに消えるか分かりません。
なんだったらソーシャルゲームで海外に行くかもしれませんし、その非課税世帯というのも、単に年金を受給するようになっただけの富裕層だったりします。
僕は、税金の還元が正常に行われているとは思えないし、現金の給付には事務作業費などが多大にかかり、またその先もない、ただのばら撒き政策だと考えています。
それに対し、例えばその東京都のクーポンで、都民はこの月は誰でも映画1回無料であるとか。
例えば小学生にしましょうよ、小学生の体験格差が問題であるなら、小学生の体験格差の解消に絞って話をしますよ。
小学生限定で映画無料チケットで配れば、デジタルでね、親は行かせてくれますよね。無料で1日遊んでくるって言うんだから、友達同士で誘い合ってどれ見るって選べますよね。これこそが格差のない体験だと思うんですよ。
例えば子供連れの家庭に、家族1人につき1000円のファミレスクーポンを出したら、5000円を与えても親の酒代やタバコ代やギャンブル代に消える家であっても、子供のご飯もただになると言ったら、ファミレス連れてってくれますよね。そこで会話が生まれるかもしれないじゃないですか。

  • デジタルクーポンの活用事例として、貧しいからと「施される」一部世帯に限った体験ではなく、気兼ねなく受け入れられる、子どもであれば誰もが得られる平等な体験を提供することに使うということを検討しているようです。

  • 単なるバラマキではなく、クーポンの利用方法にある程度指向性をもたせることで、経済的見地からは消費性向を高めることに寄与し、福祉的見地からは体験の提供等に寄与するという点は優れているとは思います。

  • 裕福な世帯にはクーポン利用のついでに色々な消費をしてもらい、困窮した世帯もクーポン利用で楽しめるようになればいいですね。

② NPO等の取り組みを踏まえた効果

  • デジタルクーポンの発行については、その原資を必ず東京都が拠出しなければならないということではありません。

  • 自治体への寄付でも企業は節税メリットを得られます。

  • つまり、NPO等への寄付と同じように、自治体への寄付という形で企業側に協力してもらってもいいわけです。

  • もちろん個人からの寄付を募っても構いませんし、ふるさと納税で原資を集めても構いません。

  • そしてデジタルクーポンを使って自治体が「体験格差」是正に資する取組を行うことには色々なメリットがあります。

  • デジタルクーポンの優れたところは、いったん仕組みを作ってしまえば中間コストがほとんど必要ないところです。

  • NPO等が企業等から寄付されたチケット等を再配分する場合、それぞれがバラバラにプラットフォームを作り、それぞれの運営のために寄付金や公金等から膨大な人件費等を支援する必要があることと比べると、差は歴然です。

  • また同程度の困窮世帯が受けられる支援の多寡が、特定の団体と繋がっているか否かで差が出るような不公平もありません。

  • 困窮している方々が置いてけぼりにされ、関係する企業やNPOの利益を追及するために取り組みが利用されるという懸念についても、寄付と認める額を実際のクーポン利用額に連動させれば、概ね解決するのではないかと思います。

  • また東京都が原資を支出する場合でもあっても、そのクーポンの利用率等を指標にした対応が可能です。

③ 憲法第89条を念頭に置いたこの政策の意義

  • 参考までに憲法第89条とその解釈を添えておきます。

日本国憲法第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない

  • 憲法第89条後段は「公金がこれら(慈善、教育、博愛等)の事業を援助するという美名の下に濫費されること、(中略)等」の弊害を防止する趣旨であると考えられています。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/old/minutes/commission/2004/03/item12.pdf#page=4

  • もちろん行政による大枠の支援だけでは取りこぼしもあろうとは思います。

  • しかし現状はNPO等に「投げっぱなし」(=「公の支配」に属しているか微妙)になっている慈善等の事業について、改めて行政がその主体となり、カバーしきれない部分の支援をNPO等が負うという、本来あるべき姿に戻すことが、「ひまそらあかね」の都政では期待できそうです。

  • もちろん「体験格差」是正の取り組みは一例に過ぎませんが、その他の問題への取り組みスタンスにも通じることだと理解しています。

3、まとめ

  • 「ひまそらあかね」の主張は別に特異なものでも、過激なものでもなく、「行政がすべきことは行政がする」「NPO等にはきっちりルールを守って活動して欲しい」という、非常にわかりやすいものだと私は理解しています。

  • もちろん実際に制度を上手く設計・運用できて、成果を得られるかどうかは未知数ではありますが、取り組みとしては非常に有意義だと思うので、応援したいと思います。

以上

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