2023年前半の休眠預金活用事業に関する政府答弁まとめ等

2023年7月26日

  • 国民の財産たる休眠預金を原資とした休眠預金活用事業について、明らかに不公正だと思われる扱いがあったため、私が2022年12月より問題提起をしてきたことは皆さんご承知の通りです。

参考:休眠預金活用事業について

参考:休眠預金活用事業成立前に懸念されていたこと

※国会議事録は「利益相反」で検索して下さい

  • 暇空さんにもリツイート等で問題の周知に協力していただいた結果、複数の国会議員の方より、政府にその見解を問い質していただくことができました。

  • 特に浜田議員 及び 末永秘書を始めとした浜田事務所の方々が本件を問題視してくれたことは、一国民として大変ありがたく思います。

  • 結果として、お役所ではよくある『問題はなかった』が、『より良くなるよう改善した』という体裁ではあるものの、一定程度は制度を見直すことに繋がったように思います。

  • 真偽定かではありませんが匿名の複数の情報提供者によると、制度運営を委託されているJANPIAも「やり過ぎ」については認識するに至ったようです。

  • 既に確立した制度の根本を変えるのは中々難しいですが、今後は国民の財産が一部団体や関係者の利益誘導的に使われることが改められることを期待したいです。

  • 第211回国会も閉会しましたし、一応総括しようと思い記事にまとめさせていただきます。

  • 当該事業を所管するのは内閣府であり、質問主意書は当事者への質問になっている点をご認識の上で、以下を読んで下さい。

  • また、休眠預金活用事業の詳細まで把握しなくとも内容はわかるようにしているつもりですが、「指定活用団体」(JANPIA)より選ばれた「資金分配団体」が、当該資金を使って事業を行う「実行団体」を選考して資金分配を采配する仕組みになっていることだけはご認識願います。

1、第211回国会提出の質問主意書と政府答弁

① 若年被害女性等支援・困難女性支援に関する質問主意書

  • 主題は別件ですが、質問18に休眠預金活用事業のことが入っています。

  • 公益財団法人パブリックリソース財団(実際は特定非営利法人ホームレス支援全国ネットワークも含めた共同事業体)より、一般社団法人Colaboに行われたアパート建築に係る助成事業について、外形的な評価額よりも明らかに金額が過大ではないか?と質問していただいています。

  • 内容についてはこの記事で詳しく解説しています。結論だけ書きますと、時価50百万円〜60百万円程度の物件が100百万円で取得されており、不自然ではないかという内容です。

  • それに対する政府答弁はパブリックリソース財団が当該事象を調査中と聞いており、政府として現段階では言及できないという内容でした。

  • なお、「調査」とやらの結果は少なくとも現在は公開されていません。

  • 結果として、2023年度事業からは休眠預金を使った不動産の取得が制限されることに繋がったようです。後述します。

② 休眠預金等活用法に基づく休眠預金活用事業の利益相反に関する質問主意書

  • 論点は大きく分けると2点。

  • まず、上述のColaboへの助成事業について、資金を受領するColaboと資金を分配するホームレス支援全国ネットワークの役員を同一人物が兼職している点について言及しています。

  • これは見ようによると自分で自分に公金を分配するような行為であり、利益相反ではないか?との質問。

  • 内容についてはこの記事で詳しく解説しています。

  • ちなみに、私の行動がどの程度影響したかはわかりませんが、この質問主意書の提出に先立ち、上記記事を紹介してJANPIAに改善を求めていたところ、4月4日付で出された2023年度事業計画では、両団体での役員の兼職は禁止されました。

  • もちろん今後は似たことが起こらないことを祈りますが、過去の事象についてどのように扱うかというのが聞きたかったことです。

  • それに対する政府答弁は後述します。

  • 第二の論点は、JANPIAが資金分配団体を選ぶ審査を同一人物がずっと行っているが、これは国民の財産である休眠預金を適正に公平に分配するという目的に適うか?という質問。

  • 併せて、その審査を行っている人物は自身がグループ代表を務める会社を資金分配団体に自ら選んでいるが、これは利益相反に当たらないのか?という質問です。

  • 内容についてはこの記事で詳しく解説しています。

  • 明文化された規定に反する審査委員長の選定、当該審査委員長による「身内」とも思われる団体を資金分配団体に選定する行為、これらは非常に問題だと思います。

  • 質問主意書では「審査委員長自身が実質的に代表を務めていると思われる団体を自ら資金分配団体に選定していること」に焦点を絞り、これは利益相反の疑念を持たれても仕方がないことだから、審査体制を見直すべきではないか?と質問しています。

  • これに対する政府答弁は実行団体の選定、資金分配団体の選定、共に「適正な方法で各審査を行わないといけないという規程があるので、きちんとしているに違いない。よってこれだけで利益相反とはいえない」という内容でした。

  • 私の記事を見ていただければわかりますが、資金分配団体と実行団体の関係については役員の重複ばかりではなく、「第三者」で構成されるべき審査委員にも当該兼職役員と関係の深い人物が入っている等、利益相反が強く疑われる内容です。

  • またJANPIAによる資金分配団体の審査の件も、「資金分配団体となり得る団体の役員等は審査委員に選ばない」という明文化されたルールが破られていること、当該人物が自身が役員等を務めていた団体を資金分配団体に選定することが数十回(私が記事を書いてからも続いています)にわたっていて、常習性があることから、利益相反ではないとするのは中々難しいように思えます。

  • 真偽定かではありませんが、情報提供者によると私の書いた記事を内閣府の方々はお読みになったそうなので、問題を認識しながら「聞かれたことだけ答えておけばいい」と回答した可能性もありそうです。

  • 後述しますが、質問主意書の提出前に利益相反をやや厳しく見ていくという方針はJANPIAから出ているものの、今までの行いを振り返るとどこまで真剣に取り組むか、また明文化されたルールを遵守するかは不透明です。

  • 質問主意書が提出され、政府答弁までなされたという事実が、JANPIAに対する今後の牽制として機能することを期待します。

③ 私有財産を扱う休眠預金活用事業に対する国民の理解に関する質問主意書

  • こちらは私の記事が関連しない質問主意書になります。

  • 当該事業について、(おそらく上記の不透明な事業運営を前提とした上で)国民の理解を得られるように努力する義務を果たしているのか?と質問しています。

  • 政府答弁は「ちゃんとしているし、これからもしていく」という内容でした。

  • 具体的には金融機関のウェブサイトや休眠預金活用事業のウェブサイトや、シンポジウムの開催等で対応しているとのことですが、国民側が情報にアクセスするのを待つ受動的な周知方法が中心であり、国民に向けた能動的な情報発信が不足しているようには見えます。

  • 形としては国民の私有財産を流用する事業なのですから、広報に改善の余地があることを示した質問主意書であると言えます。

④ 休眠預金等活用法の仕組みの見直しに関する質問主意書

  • こちらについては内容は色々とありますが、まとめると「支援対象に偏りが発生する構造になっていること、利権化する恐れがあること」以上2点を問題提起になっています。

  • 質問主意書に対する回答は当然ながら「指摘された内容はいずれも正当性があることなので、特に問題はない」という内容でした。

  • 特に一番最後の質問「利権化」に関しては現状かなり怪しい部分がありますが、当該質問及び政府答弁がなされたという事実がJANPIAに対する牽制になることが期待されます。

2、今後について

① 制度の改正について

  • 私の問題提起については直接やり取りしたこともあり、JANPIA自身も認識しています。
    (『問題』として認識しているわけではなく、『今後の対応の検討を要する事項もある』というお役所的な表現でしたが)

  • それがどの程度影響したのかは定かではありませんが、結果的に私が指摘した問題点を一定程度防ぐことができるよう、ルールを変えていただけたようです。

JANPIAの2023年度事業計画資料より
  • ただし十分な是正がなされたわけではありません。

  • 「不動産の取り扱い」は許容範囲ではあります。

  • 「実行団体選定の公正性」について、資金分配団体と実行団体の役員兼職は禁止されましたが、過去の兼職関係を『退任後6ヶ月』と明文化したことは、逆に利益相反のお墨付きを与えることに繋がらないかを危惧しています。

  • 資金分配団体の選定から事業の公募まで6カ月かかっている事例もありますから、資金分配団体に選定された後で兼職していた実行団体を退任し、自らの主催する資金分配に公募させるようなことに繋がらないか、不安です。

  • また、資金分配団体が用意する審査会議メンバーが審査を受ける実行団体の関係者である事例が多数あるのにも関わらず、是正措置やペナルティの言及がなく、実質的に両団体が結託して恣意的な選定を行う余地が多分に残されている点も心配です。

  • 「ガバナンス・コンプライアンス規程」については適当だとは思いますが、既に資金を受領した上で当該規程等の情報公開を怠っている団体への対応は別途講じてもらいたいものです。

  • そしてなによりも、個人的には一番問題だと思っている、JANPIA側の人物が関係する団体を資金分配団体として数多く採択していることについて、対応はしていただけていないようです。

  • 上述したように「資金分配団体となり得る団体の役員等は審査委員に選ばない」という明文化されたルールは堂々と破られています。

  • これがまかり通っている以上、もっと露骨な利益誘導が水面下で行われていても不思議ではありません。

  • 別に特定の誰かが懐にお金を入れているとは思いませんが、資金分配団体は実行団体に対してお金を配る立場ですから、業界での立場が強くなることは間違いないでしょう。

  • 国民の財産を使って自身の関係する資金分配団体、ひいては自己の権力を拡大するようなことは許されるべきではないと思います。

  • この点はもっと多くの国会議員の方に問題視していただきたいと感じています。

② そもそもの制度の問題点について

  • 以下の記事に制度の問題点や是正すべき点をまとめています。

  • 問題にも色々あり、不正をなくしたりルールを変えれば解消される問題もありますが、解消が難しい、制度の構造上の問題もあります。

  • 上の方の記事で紹介していますが、あるフードバンク支援団体は記事公開時点で2回の資金分配を執り行っていますが、助成対象に採択された団体は自団体に加盟している団体がほとんどです。

  • 外形的にはこれはルールに則っており、特に資金分配団体が責められるべき事情はありませんが、適正な審査が行われた結果かどうかは誰にもわかりません。

  • この事例がどうかは別にして、「資金分配団体が特定団体に向けた利益誘導のために休眠預金を使っても、それが判明し難い」というのが制度の構造上の一番の問題であると私は捉えています。

  • 団体が団体に金を配るなどという珍妙な制度ではなく、助成金の公募と審査はJANPIAが行い、その伴走支援だけノウハウのある団体に外注すれば済むような気がするのですが……。

  • この点は次回の法改正の時には議論して欲しいと思います。

③ 国民による今後の同事業の監視の必要性

  • JANPIAによる情報公開は2021年度事業の途中で止まったままです。(記事公開日現在)

  • その他、資金分配団体の選定経緯が書かれた審査会議議事録も同様に公開が進んでいません。

  • 今後情報公開が進めば、不当な資金分配が発見される可能性もあります。

  • 国民の私有財産を流用するという制度の性質上、国民が適正に監視することは不可欠でしょう。

  • この記事をお読みになられた皆さんが何かを見つけた場合は是非お知らせください。

  • 問題の有無を確認し、必要であれば問題提起につなげていけるようにします。

  • その折には国会議員さんも協力をいただくかもしれないので、よろしくお願いします。

以上


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